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第12話 決戦の時①

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過去の録画を見ると、勇者になってからもやっていることは変わらなかった。
最高級ブランド・エルメスの鎧を身にまとい、常に美女を侍らせている。
中間地点での花嫁を選ぶイベントでは、苦楽を共にした幼馴染の酒屋の一人娘か、カジノ王の令嬢のどちらかを選択するのだが、もちろんヤツは令嬢をえらんだ。
パーティは4人までだが、妻だけは例外で5人目の仲間として旅に同行させることができる。なのにヤツは新妻を新居に留守番させ、女性冒険者をつぎつぎナンパし、毎晩のようにお楽しみだった。
こいつだけは、死んでも許さん!!
いや、一度死んだ今でも許さん!!

俺が魔王代行になった話は翌日、魔王城の皆に伝えられた。
もちろんバグ云々は伏せられているけど。
俺は全モンスターの前で魔王代理就任の挨拶をした。

「魔王様に最高の花道を用意するために何が何でも勇者を返り討ちにする!!俺に力を貸してくれ!!!!」

うおおおおお!と気を吐くモンスターたち。

勇者が魔王城に現れるまであと1日。
モンスター一同、挙国一致で勇者をぶっ潰すための布陣を敷いた。
ヤツをギッタンギッタンにしてくれる!!!


いよいよ決戦の時が来た。
勇者専用モニターを注視する。

ヤツは魔王城のゲート付近で、流しの道具屋から冒険アイテムを買っていた。
資金は潤沢なようで、最高級ヘネシー風味ポーションを購入している。
HPとMPが全回復するだけでなく、攻撃力、防御力が二倍になるという優れものアイテムだ。
1本700万ゴールドするんだぞ、あれ。

勇者パーティのメンバーの戦力分析を行う。
魔法戦士はLv.91、パラディン、賢者はともにLv.92だ。
ハイレベルな冒険者たちだが、魔王城に来る直前に個別に金で雇われた輩だから結束も何もないだろう。
予定通り、メンバーをばらばらにし、ひとりずつ叩き潰す作戦でいく。


勇者たちは魔王城の9階にたどり着いた。
ここから城内を11階まですすみ、そこから外階段を昇り、魔王のいる最上階の漆黒の大広間を目指す。

パーティ一行は重い真鍮の扉を開けて、城内へ足を踏み入れた。
そのとたん、二頭のサイクロプスが巨大な棍棒を振り下ろす。

「うわっ!」

すんでのところでかわす冒険者たち。
サイクロプスたちの攻撃はやまない。
渾身の力で振り回される棍棒の風圧でかまいたち現象が起こり、皮膚が切れる。

「なんで門番が攻撃してくるんだ!」

そりゃ、Sランクモンスターをただ立たせておくってもったいないじゃん?
存分に暴れてもらいますよ。
当たればHP半分は軽く削られるサイクロプスの攻撃を避けつつ反撃するのは難しいらしい。
冒険者たちは防戦一方だったが、物理的攻撃の届かぬ距離をとりながら、パラディンと魔法戦士の呪文タッグで、サイクロプスを倒した。

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