白羽の刃 ー警視庁特別捜査班第七係怪奇捜査ファイルー

きのと

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第6話

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翌朝の捜査会議で第七係メンバーへ報告を行う。

「昨晩ビルの張り込みをしまして、何人か出入りする人物を撮影できました」

健人はそのうちの一枚をプロジェクターに映した。

「これ桜井じゃないか?」

和久井が言う。

「はい、顔認証システムでも照会しました。間違いありません。村木が出入りしていた5階の事務所は、桜井の右腕の宇崎弘名義で借りられていました」

桜井正孝は元経済ヤクザだ。かなりの切れ者で、今は大規模な特殊詐欺グループを仕切っているらしい。
数年前に暴力団・玄武会を破門されている。しかし、“破門したフリ”をしているだけでつながっているケースは少なくない。万が一逮捕されたときに組とは関係ない、知らぬ存ぜぬと逃げるためだ。

「そして今朝4:25に小林奏多の恋人のスマホへメールが届きました」

健人はプリントアウトしたものを見せた。

“たすけて かなた ゆうき ひろと”

「IPアドレスから件のビルのパソコンから発信されたことがわかりました。隙を見て小林奏多が送ったものと思われます。3人が監禁されていることは間違いありません」

それなら、と大吾が提案する。

「課長、このヤマを捜査二課との合同捜査にできませんか?」
「二課と?」
「はい、二課が追っている詐欺グループのトップが桜井なことは明白です。ただ関与を示す証拠が不十分だそうです。そこで、大学生の未成年者略取罪、未成年者誘拐罪で別件逮捕し、事務所から詐欺の証拠品を押収できないかと」
「そうだな、話を持っていくか。久原と度会もいいな?」

薫子と健人はうなずく。


すぐに捜査二課の蜂須賀課長と園山主任がやってきた。
以前から桜井をマークしていたが、末端のグループはいくつか潰せたもののトカゲの尾切り状態で中心メンバーにたどり着くことができないでいた。
桜井が出入りしているならメインのアジトである可能性が高い。

家宅捜索の陣頭指揮は瀬尾、二課の捜査員が詐欺グループメンバーを取り押さえ、健人と薫子で大学生を保護する段取りになった。佐伯と和久井は後方支援に回る。
10:00AM、メンバーが”出勤”したことを確認し、捜査員たちは非常階段から5階へとあがった。
そこで突入の合図を待つ。
ふーっと健人は息を吐いた。大がかりな合同捜査は初めてだ。やっぱり緊張しているのかもしれない。
園山の合図で扉を蹴破り、捜査員が一斉に踏み込んだ。

「警察だ!!」

事務所は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
二課の捜査員たちが詐欺グループメンバーの身柄を次々と拘束していく。
怒号と罵声が飛び交うなか、薫子と健人は大学生の救助に向かった。
西側奥に小部屋があるのは事前に確認している。おそらくそこに閉じ込められているだろう。
小部屋の扉にかけられた南京錠を壊し、中へ入る。
大学生たちが床に横たわっていた。3人とも意識はあったが、かなり暴行されたようで顔や腕に多数のあざがあり出血もしていた。

「健人、救急車呼んで」
「はい」


大学生たちは村木からコカインを購入していたが、だんだんと支払いが追い付かなくなっていた。
金を払えないなら特殊詐欺の手伝いをやるよう脅されアジトに連れ込まれた。断ったため監禁され村木から激しい暴行を受けた。
3人は病院に運ばれた。とくに伊藤祐樹はろっ骨と大腿骨を折る大けがをしている。
彼らの違法薬物使用容疑については退院を待って捜査一課に引き継がれることになった。特殊詐欺グループへの尋問は捜査二課が行うことになっている。


健人と薫子はお役御免となり、3日ぶりに帰宅できることになった。
明日は久しぶりの非番だ。とにかく体を休めよう。たまには映画を観るのもいいかもしれない。
エレベーターを待っていた時に健人が呼び止められた。

「度会くん、ひとりなの?相方は?」

科捜研の榛名だ。通称「白衣の変人」。

「薫子さんはとっくに帰りましたよ。婚活パーティがあるそうで。何か用でしたか?」
「いや、君に話があるんだ」

健人の目の前で鑑定報告書をひらひらさせる。

「先日の矢羽根についていた皮膚片から取り出したDNAを警視庁のデータベースと照合したんだ。前歴者に該当はなし」

まあそうだろうなと思う。

「それでね、警察官のDNAとも照会したんだ」
「はあ」
「そしたらなんと!16の遺伝子座の一部が君と共通していたんだ」

手を高く上げ空を仰ぐポーズをする。

「ロマンを感じるだろう?」
「あの、すみませんが高卒の俺にもわかるように説明してくれますか」
「つまり矢の射手は君の遠いご先祖様かもしれないってこと」

先祖って?親戚じゃなく?
しかもロマンって。
やっぱりこの人は変人なんだ。
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