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第5話
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9月下旬
私立青嵐大学に通う19歳の男子大学生3人が失踪した。
最初はどこか旅行にでもいっているのではないかと思われたが、夏休みが終わっても大学に来ないためサークル仲間が家族に連絡し、心配した家族から捜索願が出された。
スマホの電源は切られてつながらず、毎日かかさず更新していたSNSもストップしている。
事件に巻き込まれた可能性も考えられるため、健人と薫子が捜査に当たることになった。
伊藤祐樹、野田大翔、小林奏多の3人は北区の3LDKのマンションをルームシェアしていた。家族から預かった鍵で中に入る。
「うわっ、大学生がこんないい部屋に住んでいるの!生意気」
薫子が舌打ちをする。
「お坊ちゃん学校で有名な私大ですからね。親がいくらでも出してくれるんでしょう。うらやましい話です」
「ったく。じゃ、私は個室を調べるよ」
「俺はリビングから始めます」
20畳ほどのリビングダイニングにはグレーのカーペットが敷かれ、同系色の3人掛けソファがあった。テレビにゲーム機が数種類、ミニコンポ。
床には飲みかけのペットボトルや漫画雑誌が乱雑に置かれていたが、ガラスのローテーブルはすっきりと片付けられていた。
健人はしゃがみ込み、ペンライトを照らす。ローテーブルの天板と外枠のすきまにわずかに白い粉が挟まっていた。ゴミ箱を覗くと5センチの長さにカットされたストローが捨てられている。
立ち上がり、テレビ台の引き出しをひとつずつ調べていく。
(リビングじゃないのか)
キッチンへと移動する。これ以上ないくらいに殺風景だった。
調理器具は片手鍋ひとつと薬缶しかない。これではインスタント麺くらいしか調理できないだろう。もっともコンロの五徳に焦げひとつないところをみるとそれすら作っていないのかもしれない。
冷蔵庫を開ける。醤油やマヨネーズなどのいくつかの調味料と、炭酸飲料、アルコール飲料、デリカテッセンのサンドイッチが入っていた。
食器棚にはグラスが5つ、あとは缶詰、カップラーメン、クラッカー、紅茶の缶、スナック菓子が雑多に詰め込まれていた。
「これか」
紅茶の缶を手に取る。マグカップもないようなキッチンに紅茶の茶葉はさすがに違和感がある。
缶の蓋を開けると中から白い粉の入ったジッパー袋がでてきた。
「先輩、見てください」
隣室の薫子に声をかける。
「何かあった?」
「おそらくコカインです。ガラステーブルに粉末が残っていました。そこにコカインを広げてストローで吸引していたんでしょう」
「ということは、白羽の犠牲者じゃなくて薬物絡みのトラブルの線が濃厚だね」
薫子はため息をついた。
大学生の部屋から持ち帰ったジッパー袋には複数の指紋があり、そのうちの一つが警視庁前歴者データベースでヒットした。
村木武夫(38歳)
薬物使用および薬物売買で逮捕歴のある男だ。2年前に出所している。
村木の現住所を調べ、車でアパートを張り込む。
「ねえねえ、健人くんはさ、佐伯さんと仲いいよね?」
「プライベートな話はしないので、彼女がいるかはわかりません」
「まだ何も言ってないんだけど」
「違う話でしたか?」
「もー、少しは相棒の幸せに協力しようかなーって思わない?」
「出てきました」
村木がアパートの外階段を降りてきた。助手席の薫子が写真を撮る。
村木はヘルメットをかぶると、駐輪場にとめてあったバイクにまたがりエンジンをかけた。
「追うよ」
「はい」
村木の乗ったバイクは国道を南下していく。幸い渋滞しておらず、車間距離をとりながら尾行できた。
「先輩、あれ大学生のバイクに似ていませんか?」
「うん?」
「部屋のパソコンに保存されていた写真にあのバイクが写っていました」
薫子がナンバーを照会する。
「登録が野田大翔になってる」
「そうですか」
「コカインの代金代わりに取り上げられたのかも。多いのよね、遊び半分で手を出して払いきれないほどの借金して、あげく犯罪の片棒を担がされたり」
薫子は第七係に来る前は少年課にいた。そうやって道を誤る青少年らを見てきたのだろう。
30分ほど走ったところで村木は古びたビルの駐車場にバイクを停めた。ヘルメットを外すと、エントランス方向へ歩いていく。
「行ってきます」
「お願い」
車を降り、健人は少し離れて村木の後を追った。
エレベーターに乗るところを確認する。村木一人だ。
扉が閉まりエレベーターが上昇する。階数を示すランプは5階で止まった。
私立青嵐大学に通う19歳の男子大学生3人が失踪した。
最初はどこか旅行にでもいっているのではないかと思われたが、夏休みが終わっても大学に来ないためサークル仲間が家族に連絡し、心配した家族から捜索願が出された。
スマホの電源は切られてつながらず、毎日かかさず更新していたSNSもストップしている。
事件に巻き込まれた可能性も考えられるため、健人と薫子が捜査に当たることになった。
伊藤祐樹、野田大翔、小林奏多の3人は北区の3LDKのマンションをルームシェアしていた。家族から預かった鍵で中に入る。
「うわっ、大学生がこんないい部屋に住んでいるの!生意気」
薫子が舌打ちをする。
「お坊ちゃん学校で有名な私大ですからね。親がいくらでも出してくれるんでしょう。うらやましい話です」
「ったく。じゃ、私は個室を調べるよ」
「俺はリビングから始めます」
20畳ほどのリビングダイニングにはグレーのカーペットが敷かれ、同系色の3人掛けソファがあった。テレビにゲーム機が数種類、ミニコンポ。
床には飲みかけのペットボトルや漫画雑誌が乱雑に置かれていたが、ガラスのローテーブルはすっきりと片付けられていた。
健人はしゃがみ込み、ペンライトを照らす。ローテーブルの天板と外枠のすきまにわずかに白い粉が挟まっていた。ゴミ箱を覗くと5センチの長さにカットされたストローが捨てられている。
立ち上がり、テレビ台の引き出しをひとつずつ調べていく。
(リビングじゃないのか)
キッチンへと移動する。これ以上ないくらいに殺風景だった。
調理器具は片手鍋ひとつと薬缶しかない。これではインスタント麺くらいしか調理できないだろう。もっともコンロの五徳に焦げひとつないところをみるとそれすら作っていないのかもしれない。
冷蔵庫を開ける。醤油やマヨネーズなどのいくつかの調味料と、炭酸飲料、アルコール飲料、デリカテッセンのサンドイッチが入っていた。
食器棚にはグラスが5つ、あとは缶詰、カップラーメン、クラッカー、紅茶の缶、スナック菓子が雑多に詰め込まれていた。
「これか」
紅茶の缶を手に取る。マグカップもないようなキッチンに紅茶の茶葉はさすがに違和感がある。
缶の蓋を開けると中から白い粉の入ったジッパー袋がでてきた。
「先輩、見てください」
隣室の薫子に声をかける。
「何かあった?」
「おそらくコカインです。ガラステーブルに粉末が残っていました。そこにコカインを広げてストローで吸引していたんでしょう」
「ということは、白羽の犠牲者じゃなくて薬物絡みのトラブルの線が濃厚だね」
薫子はため息をついた。
大学生の部屋から持ち帰ったジッパー袋には複数の指紋があり、そのうちの一つが警視庁前歴者データベースでヒットした。
村木武夫(38歳)
薬物使用および薬物売買で逮捕歴のある男だ。2年前に出所している。
村木の現住所を調べ、車でアパートを張り込む。
「ねえねえ、健人くんはさ、佐伯さんと仲いいよね?」
「プライベートな話はしないので、彼女がいるかはわかりません」
「まだ何も言ってないんだけど」
「違う話でしたか?」
「もー、少しは相棒の幸せに協力しようかなーって思わない?」
「出てきました」
村木がアパートの外階段を降りてきた。助手席の薫子が写真を撮る。
村木はヘルメットをかぶると、駐輪場にとめてあったバイクにまたがりエンジンをかけた。
「追うよ」
「はい」
村木の乗ったバイクは国道を南下していく。幸い渋滞しておらず、車間距離をとりながら尾行できた。
「先輩、あれ大学生のバイクに似ていませんか?」
「うん?」
「部屋のパソコンに保存されていた写真にあのバイクが写っていました」
薫子がナンバーを照会する。
「登録が野田大翔になってる」
「そうですか」
「コカインの代金代わりに取り上げられたのかも。多いのよね、遊び半分で手を出して払いきれないほどの借金して、あげく犯罪の片棒を担がされたり」
薫子は第七係に来る前は少年課にいた。そうやって道を誤る青少年らを見てきたのだろう。
30分ほど走ったところで村木は古びたビルの駐車場にバイクを停めた。ヘルメットを外すと、エントランス方向へ歩いていく。
「行ってきます」
「お願い」
車を降り、健人は少し離れて村木の後を追った。
エレベーターに乗るところを確認する。村木一人だ。
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