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第8話 一途に恋する女の子ほど可愛いものはない
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タルクとサリッドがナジュム奪還後の作戦会議をしている間に、私は一人で広場に出かけた。
あちこちに建てられた木製の立て札には、明後日の正午に公開処刑が行われることが記されていた。
偶然、買い物かごを持ったラーニアを見かけたので声をかける。
「会えてよかったわ。タルクさんは無事よ。怪我も回復に向かっているわ」
「そうですか、よかった」
心からホッとした表情だ。
「彼のこと、好きなの?」
「えっ!! 違います、そんなんじゃないんです!!」
ぶんぶんと首を振る。
耳や首まで真っ赤になってる。
やだ、可愛い。
恋っていいよね。
「隠さなくたっていいじゃない。タルクさんカッコいいし、お似合いだと思うわ」
お世辞ではなく、タルクはサリッドとはまた違ったタイプのイケメンだ。
王宮騎士団って顔で採用しているのかしら?
なんて冗談だけど。
「わたしなんか無理ですよ。タルクさんに好きになってもらえるわけがないし……」
「何言ってるの。女がね、本気で追いかけたら逃げ切れる男なんかいやしないわ」
ラーニアはまたぶんぶんと首を振る。
「だって、わたしはあなたみたいに美人じゃないし……。あんな素敵な恋人がいるあなたにはわからないわ」
「サリッドなら恋人じゃないわ。旅のパートナーで、私の片思いなの」
「え?」
「私はいずれ必ずサリッドを落としてみせるけど、あなたはどうする?」
「でも、彼のために何もしてあげられないもの……」
私はラーニアの顔を両手ではさみ、ほっぺをくいっと持ち上げた。
「笑顔よ。いつも明るく前向きで、男を安心させる笑顔。それさえあれば、たいていなんとかなるものよ。ゴタゴタが片付いたらタルクさんを笑顔で迎えてあげて」
「……はい!」
ガールズトークはこのへんにして、ナジュム奪回の計画に必要なことを訊く。
広場の中央には1メートルほどの高さの舞台があり、公開処刑の時は、ここに断頭台が置かれるという。
正午を知らせる鐘が鳴り終わるのと同時に、ギロチンの刃が落とされる。
チャンスは一瞬。
タイミングを見計らって転移するには目視できることが必須だ。
「ねえ、ラーニア。この広場が良く見えるけど、広場からはあまり見えない、かつ人気のないそんな都合のいい場所ってあるかしら?」
「ありますよ」
彼女は広場の西側の坂の上の指さす。
高台になっていて、夜は逢引するカップルが来るが、昼はほぼ無人らしい。
ラーニアと別れて、教えてもらった高台へ向かう。
実際に足を運んでみると、そこはいくつかベンチが置かれ、ちょっとした休憩スペースのようになっていた。
背の低い木に囲まれていて、たしかに下からは見えにくい。
一方でこちらからは広場の様子がよく見えるし、この距離なら転移魔法の範囲内だ。
条件にぴったり合っている。
あちこちに建てられた木製の立て札には、明後日の正午に公開処刑が行われることが記されていた。
偶然、買い物かごを持ったラーニアを見かけたので声をかける。
「会えてよかったわ。タルクさんは無事よ。怪我も回復に向かっているわ」
「そうですか、よかった」
心からホッとした表情だ。
「彼のこと、好きなの?」
「えっ!! 違います、そんなんじゃないんです!!」
ぶんぶんと首を振る。
耳や首まで真っ赤になってる。
やだ、可愛い。
恋っていいよね。
「隠さなくたっていいじゃない。タルクさんカッコいいし、お似合いだと思うわ」
お世辞ではなく、タルクはサリッドとはまた違ったタイプのイケメンだ。
王宮騎士団って顔で採用しているのかしら?
なんて冗談だけど。
「わたしなんか無理ですよ。タルクさんに好きになってもらえるわけがないし……」
「何言ってるの。女がね、本気で追いかけたら逃げ切れる男なんかいやしないわ」
ラーニアはまたぶんぶんと首を振る。
「だって、わたしはあなたみたいに美人じゃないし……。あんな素敵な恋人がいるあなたにはわからないわ」
「サリッドなら恋人じゃないわ。旅のパートナーで、私の片思いなの」
「え?」
「私はいずれ必ずサリッドを落としてみせるけど、あなたはどうする?」
「でも、彼のために何もしてあげられないもの……」
私はラーニアの顔を両手ではさみ、ほっぺをくいっと持ち上げた。
「笑顔よ。いつも明るく前向きで、男を安心させる笑顔。それさえあれば、たいていなんとかなるものよ。ゴタゴタが片付いたらタルクさんを笑顔で迎えてあげて」
「……はい!」
ガールズトークはこのへんにして、ナジュム奪回の計画に必要なことを訊く。
広場の中央には1メートルほどの高さの舞台があり、公開処刑の時は、ここに断頭台が置かれるという。
正午を知らせる鐘が鳴り終わるのと同時に、ギロチンの刃が落とされる。
チャンスは一瞬。
タイミングを見計らって転移するには目視できることが必須だ。
「ねえ、ラーニア。この広場が良く見えるけど、広場からはあまり見えない、かつ人気のないそんな都合のいい場所ってあるかしら?」
「ありますよ」
彼女は広場の西側の坂の上の指さす。
高台になっていて、夜は逢引するカップルが来るが、昼はほぼ無人らしい。
ラーニアと別れて、教えてもらった高台へ向かう。
実際に足を運んでみると、そこはいくつかベンチが置かれ、ちょっとした休憩スペースのようになっていた。
背の低い木に囲まれていて、たしかに下からは見えにくい。
一方でこちらからは広場の様子がよく見えるし、この距離なら転移魔法の範囲内だ。
条件にぴったり合っている。
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