婚約破棄された私ですが、このたび最強の治癒師として冒険者になりました。

あざね

文字の大きさ
3 / 3
オープニング

~仲間が出来ました~

しおりを挟む




 【依頼板】には、様々なクエストが書かれた紙が貼りだされていた。
 私は人の波を掻き分けながら、ボンヤリとそれを見上げる。魔物の討伐に、鉱石の採掘、さらには薬草の採集。他には隣の国までの護衛、などというのもあった。
 今回、私が探しているのはとりあえず近場でのクエストだ。

「……それで。やっぱり、初心者となると薬草採集、とかがいいわよね」

 ひとまずは、この国――リディアからは出るつもりはない。
 その上で今の私に出来そうな依頼となると、やはりそんな簡単なモノになるのであった。しかし、見ていて気付くことが一つある。それは、パーティー人数制限、というモノ。なにやら、一部のクエストを行うには複数人で受注しなければいけないらしい。

「あぁ、そうなると。最初は誰かと一緒に行った方がいいのかな……」

 だったら、まずは仲間集めか。
 でも、こんな駆け出しをいきなり入れてくれるパーティーなんて……。

「そんな簡単にはいかないわよね。それなら、今日は大人しく薬草を――ん?」

 と、そう考えた時だった。
 後方から、何やら怒号が聞こえたのは。

「ふざけんじゃねぇぞ、このガキが!!」
「すみませ――うわっ!?」

 そこにあったのは、一人の少年が大人の冒険者に足蹴にされる光景だった。
 少年は尻餅をつく。その際にどうやら、ついた手首を捻ったらしい。私は痛がる彼の姿を目にした瞬間、まるで放たれた矢のようにそこへ駆け寄っていた。

「キミ、大丈夫? ――ちょっと見せて」
「え、お姉さん……誰?」
「いいから、ほら……」

 半ば強引に、私は少年の手を見る。
 すると分かったのは、完全に骨が折れてしまっていることだった。患部は赤紫色に変色して腫れている。このまま放って置けば、決して良くないことは明らかだった。そのため、私は本で学んだ【治癒魔法ヒール】を試みる。

「――――――――」

 意識を集中すると、淡い光が生まれた。
 そして少年の傷を癒していく。

「あれ、痛くない……?」

 しばらくすると、彼は不思議そうに呟いた。
 どうやら私程度の力でも、治癒できるモノであったらしい。
 ホッと息をつく。だがしかし、まだやるべきことが残っていた。

「貴方たち、こんな小さな子に暴力を振るうなんて何を考えてるのですか!?」
「あァん? なんだ、よく見たら貴族の嬢ちゃんじゃねぇか。なんでそんな奴が冒険者ギルドなんかにいるんだ? ――あぁ、依頼者か」
「違います! それに、話をはぐらかすんじゃありません!」

 それは、少年に危害を加えたことへの追及。
 しかし男の冒険者は、何が悪いんだと言わんばかりの表情を浮かべた。

「何が悪いってんだ。コイツは今日のクエストで下手を打ったんだ――一歩間違えば、俺の仲間が死んじまうような、そんなミスをな?」
「ち、違う! アレはボクのミスじゃない! 貴方が――」
「――あぁ!? うるせぇな! この、何も出来ないボンクラが!!」
「うわっ……!」
「やめなさい!」

 そして、苛立ちが湧きあがったのか。
 またもや少年に暴行を働こうとしたので、私がその拳を手のひらで受け止めた。

「なっ――!?」

 男はそのことに何故か驚き、目を見開く。
 が、すぐに歯をむき出しにして怒りをあらわにした。

「いいか、貴族の嬢ちゃんよ。このガキの味方をするんだったら――それ相応の負債を背負ってもらうぜ? こいつが今までやらかしてきた分のな!」

 男は腕を振り払って言う。
 それは、私に対しての挑戦のようにも思われた。

「分かりました。それなら、甘んじて受けましょう……」

 私も頭に血が上っていたのか、それを真正面から受け止める。
 そして、こう宣言するのであった。


「それなら。今回失敗したクエスト、私が達成してみせましょう」――と。


 向こう見ずにも程があると、そうリューク兄さんにも言われそうな勢いで。
 しかし、この時の判断は決して間違いではない。そう思った。


◆◇◆


「あの、お姉さん。本当に良かったんですか……?」
「ん? 大丈夫ですよ。これでも私、色々と訓練はしてきたんですから」

 街を歩いていると、少年がどこか申し訳なさそうに訊いてきた。
 それに私はあえて元気に答える。そして、そこに至ってようやく少年のことをしっかりと観察するのであった。

「そう言えば、キミ――名前は? 私の名前は、エレナ・ファーガソン」
「え、えっと……レオ、です。レオ・テレイラ」

 少年――レオくんは、元気なく名前を口にする。
 色素の薄い髪に華奢な身体つき。円らな赤の瞳をし、継ぎ接ぎだらけの服を身にまとっていた。こう言っては何だが、見るからに貧しい。そんな子だった。
 しかし顔立ちは整っており、いずれは美少年になると思わされる。

「そっか、レオくん。これからよろしくね?」
「え、あの……え?」

 私が手を差し出すと、レオくんはキョトンとした。
 どうやら少年は、この手の意味が分かっていないらしい。

「これから、私たちはパーティーを組むんです。だから、握手!」

 だから私は言葉にして彼に伝えた。
 すると少年は困惑の色を浮かべ、しかしすぐに唾を呑み込んだ。
 そして、ゆっくりではあったが私の手を取る。それを確認した私は、大きく頷いて改めてこう言った。

「よろしく、レオくん!」――と。





 それが私の最初のパーティーメンバー、レオくんとの出会い。
 私の冒険の始まりを告げるモノであった……。


 
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

Conanlove
2019.01.16 Conanlove

続き楽しみに待ってます~😆頑張ってくださいねぇ~😆

解除
珂神 狼 (lou)

これからが楽しみですね!

投稿頑張ってください!

2018.09.23 あざね

ありがとうございます!
なろうの方でも公開してるので、ぜひご覧になってみてください!
<(_ _)>

解除

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。