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オープニング
~冒険者になりました~
しおりを挟む――そんなこんなで、翌日。
私はどこか気持ちの高ぶりを感じながら、冒険者ギルドへと向かった。
やや寂れた木造のその建物の中に入ると、正面に受付。そして左手には談話室があり、多くの冒険者が何やら楽しげな会話を繰り広げていた。
「やっぱり、女性は少ない――ですね」
その中に同性がいないかを確認するが――うん。
十数名いる中に、それらしい人物はごく数名だった。やはり基本的には、冒険者とは男性の職業、ということなのだろう。
そこに若干のため息をつきながら、私は受付に顔を出した。
「あの、すみません。冒険者の登録はこちらでよろしいですか?」
「あん? なんだァ、嬢ちゃん。ここはお前さんのような貴族が来る場所じゃねぇよ。さっさとお茶でも飲みにお家に帰るんだなァ」
「え、いや。あの……」
しかし、すると現れたのは強面の男性。
彼はこちらの質問に答えることなく、粗暴な口振りでそう言った。
まるで話にならない。男性は咳払いをしつつ、頬杖をついて居眠りを始めてしまった。――そんな姿を見て私は、思わずカチンときてしまう。そして、
「ふざけるんじゃ、ありませんわ!!」
「ふぎゃあっ!?」
男性の耳元で、ギルド全体に響き渡るような声で叫んでしまった。
周囲は何事かとこっちを見て、受付の中の件の方はひっくり返ってしまう。
「う、うるせぇな!? 急に大声出すんじゃねぇよ!!」
「うるさい、じゃないです! こんな目に遭いたくなかったら、最初から素直にお話を聞いて下さい!! 私は、冒険者になりにきたのです!!」
「わーった! 分かったから、そんなキンキンと叫ぶんじゃねぇ!?」
「むぅ……」
そんなこんなで、口論になってしまった。
それでも、ひとまずは話を聞いてくれるようなので良しとしよう。
男性は咳払いを一つ――そして、改めて私に値踏みするような視線を向けてきた。嫌らしい眼つきなわけではなかったけど、どこか気味が悪い。
「……で。どう見ても、貴族の嬢ちゃん、って感じだけどな」
「まぁ、それは否定しませんが。もしや、貴族は冒険者になれないという規則でもあるのですか?」
「ねぇけどよ。まぁ、いっか――そんじゃ、この水晶に手をかざしてくれ」
「は、はぁ……」
水晶が差し出される。
私はそれが何か分からないまま、言われた通りに手をかざした。
「きゃっ……!?」
すると突然に水晶が激しい光を放つ。
目も眩むその輝きに、私は思わず目を背けてしまった。
そして、そのまましばしの時間が流れ、やがてヒビが入るような音。次いで唐突に光が収まり、同時にカシャンという、何かが割れるようなそれが聞こえた。
おずおずと見れば、そこにあった水晶は木っ端微塵に。
それと共に目に入ったのは、唖然呆然とする受付の男性の姿だった。
「あの、すみません。私……なにか、してしまいましたか?」
それを見て、私は思わずそう訊いてしまう。
けれども彼は答えることなく、唇をプルプルと震わせていた。
「い、いやぁ。なんでもねぇよ、ほら――冒険者カードだ。これでクエストを受けることが出来るぜ? ちょっくら俺は、用事が出来たんで。ここらで……」
「え、あの……! この後はどうすれば!?」
と、私の問いかけも聞かずに男性は奥の方へと引っ込んでしまった。
取り残されたこちらは、ただただ呆然と立ち尽くす。いったい、何が起きたのか分からないまま、私はひとまず【依頼板】と書かれた掲示板の方へと進むのであった……。
◆◇◆
ギルド受付担当の男性――ゴンザ・ロドリゴは慌てていた。
先ほどやってきた冒険者志望の女性のことを上司に報告しなければ、と。
「それにしても、なんだったんだ……!?」
やってきたのは、長いブロンドの女性だった。
青の瞳に、白の綺麗なワンピースドレスを身にまとう。顔立ちは整っており、軽く化粧も施されていた。華奢な身体つき。さらにはその物腰や所作から、一目で貴族の女だと判別できた。
どうせ冷やかしだろう、と――そうゴンザは考え、あしらおうとした。
だが、勢いに押されて冒険者測定を行うまでに至ったのである。
そこまではいい。そこからが、問題だった……。
「測定の水晶が壊れるなんて、前代未聞じゃねぇか……?」
そうなのである。
ゴンザが度肝を抜かれたのは、その測定での出来事だった。
測定の水晶はその者の秘めた力によって、一定の輝きを放つ。一般的なレベルであれば、微量の淡い光を発して終わり。今回はそれすら及ばないはず、だった……。
それが、どういうわけであろうか。
水晶は未だかつてない程の輝きを放ったかと思えば、破裂するかのように壊れてしまった。それはすなわち、あの女の能力はこの水晶では――。
「――測定不能、なんてな……」
ゴンザはその事実を口にして、改めて冷や汗を垂らす。
果たして、上司にいかに報告したものか、と。必死に思考を巡らせた。
「いや、俺は悪くねぇ。ありのままを話すだけだ……」
彼は自分は悪くないと、そう自ら肯定するように頷く。
そして、目の前にある扉をノックした。
「ゲイン様――ゴンザ、入ります」
「あぁ、入れ」
上司の声を確認し、ゴンザは扉を開く。
次いで彼は報告するのだ。
規格外の女冒険者が現れた、と……。
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