宝箱を開けたら

riki

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21.異変の正体?

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 2の迷宮を8階層まで攻略を終えた日の夜。
 ドアをノックする音が部屋に響いた。

「誰だ?」

「マサです。入ってもいいですか?」

「いいぞ。どうした?」

 ドアを開けて部屋に入って来るマサに問いかける。
 表情から察するに、大切な話だとわかる。

「実は、ルナちゃんが鬼に殺されかけた時、新しい力を手に入れたみたいで、もしかすると今回のことと関係あるのかと思ったので相談に来ました」

「新しい力? エルフ族から習ったこととは別にか?」

「はい。召喚や魔術じゃなくて、勇者の覚醒です」

「勇者? マサが?」

「みたいですね。詳しくは知らないんですけど、この世界には大昔に魔王と勇者がいたんですよね?」

「俺もそこまで詳しいわけじゃないが、そうだな。魔王に似ている忌み子なんて存在もいるわけだし」

「もしかすると今回の異変は魔王復活的なものじゃないかと思ってたりします」

「マサが勇者なら、その可能性が出て来るのか。魔王復活の可能性があるなんて報告したら、笑い者にされそうだ」

「ですよね。それに勇者の力って何かわからないんですよ」

「鑑定でもわからないってことか。王族なら、何か知っている可能性はあるが、マサが勇者だと証明するものがないしな。別の世界から来たと言っても信じてもらえるかわからん」

「アドさんは信じてくれてますよね?」

「当たり前だろ? マサは俺の奴隷なんだから、信用しないわけがない」

「そこは仲間だからって言って欲しいですね」

「事実だからな。で、どうしたいんだ?」

「どう、とは?」

「俺がマサを王族に売るという手もある」

「な、なるほど。そうすると俺が勇者ということがわかって、世界のために戦うことになるんですね」

「さらに言えば、すぐに奴隷から解放してもらえるだろうな。勇者を奴隷にしているとなったら、他国から何を言われるかわからないからな。今は戦争もなく平和だが、50年くらい前は戦争をしていたらしいからな。王国が勇者を奴隷にしてるとなったら、戦争に発展するかもしれないからな」

「俺のために争わないで! 的なやつですね」

「お前が望めばフィーも解放してもらえるだろうな。どうする?」

「決まってますよ。ここにいます」

 流石に即答されるとは思わなかった。

「いいのか?」

「アドさんの夢を叶えるまで、俺はアドさんの奴隷を辞める気はありませんからね。ていうか、出て行って欲しいんですか?」

「そんなわけないだろ。マサは大事な仲間だ。しかし強制はしたくない。奴隷とは言っても人だ。希望があれば叶えてやりたいからな」

「じゃ、残るってことで。この異変と俺の力がどう関係するかわかりませんけど、よろしくお願いします」

「なんとかするさ。俺はお前達のご主人様だからな。金を積まれたって、お前達が行くと言わない限りは、手放すことはない。解放してやれるのは、まだまだ先だな」

「俺たちに嫌われないよう頑張ってくださいね、ご主人様」

「善処する。そう言えば、フィーとはどこまでいったんだ?」

「解放されるまでお預けですよ。手を繋いで買い物に行くくらいですね」

「子供を作られると困るが、フィーの子か。可愛いんだろうな」

「お爺ちゃんみたいなこと言わないでくださいよ、お父さん」

「誰がお父さんだ。結婚式には呼べよ?」

「アドさんすぐ泣きそうだな」

「経験がないから、なんとも言えないな」

「ありがとうございました。おやすみなさい」

「おやすみ」

 マサが部屋から出て行く。
 忌み子の次は勇者か、と思いながらベッドに寝転がって天井を見る。

 どんどんパーティーメンバーが濃いメンバーとなっているな、と苦笑いを浮かべて呟く。

「退屈しないな」

 相手が魔王であっても関係ない。あの子達と力を合わせてランクSになる。

 何度目かわからない決意を胸に、眠りについた。

 翌朝。
 朝食を済ませて、迷宮街へ行かずにギルドに行って、アン達がどうするのか確認することにした。

 もしかすると協力することになるので、情報交換とメンバー紹介をする必要がある。

「アドさん、おはようございます。どうされました?」

 受付にいたナーナに近づいて挨拶を交わす。

「おはよう。アンのパーティーはどうするか知っているか?」

「今朝、ラーキを迎えに来たので、迷宮に入っていると思いますよ?」

「そうか。ありがとう、迷宮街に行ってくるよ」

 ギルドにアンのパーティーがいないことを確認できたので迷宮街に向かう。

 明日はギルドに行かずに迷宮街へ行けば、アンのパーティーと会うことができる確率は高そうだ。

「よう、アド。アン達なら先に入ったぜ」

「そうか。追いつけるように頑張るよ」

「おう。アンが待ってるとさ」

「今日はゆっくりと探索する予定だからすぐには追いつけないと思うぞ」

 昔に描いた地図を見ながら探索するのと、ルナに地図作成を教える予定なので、時間がかかることが予想される。

 目標は12階層だが、今のところ焦る必要もなさそうなので、確実に進んでいきたいと考えていた。

「そんなこと言って、すぐ追いつくのが今のお前だ。頑張れよ」

「俺はやれることしかやらないよ」

 ナーキに背を向けて2の迷宮の入口にあるクリスタルに触って8階層に転移する。

 ある程度近くにいれば、一度に複数人の転移は可能だ。

 周りを見て全員いることを確認すればマジックバッグから自作の地図と白紙の紙とペンを取り出す。

「ルナ、地図の描き方を教える。独学だから正式な作成方法じゃないが、ある程度分かればいいものだし、気軽に描いてみろ」

「は、はい。頑張ります」

「簡単に口頭で説明するぞ?
 まずは紙を四つ折りにして広げる。折り目で区切られた四つの四角が出来上がるだろ? 右上、右下、左上、左下にどこからでもいいから1、2、3、4と数字を書く。数字が見えるように四つ折りにしてポケットに入れて、歩いて行く。分かれ道を見つけた時に紙を取り出して十字なら1の下の方に十を描く。左右に別れればこうT描く。左右のどちらかに進むなら2にどちらかの端の方に一線描いておく。まっすぐ進むなら1の十の上を伸ばす、またポケットにしまって歩いて行く。その繰り返しだ。で、四つ折りにした紙を切って繋げると簡単な地図ができる。あとは新しい紙に自分がわかりやすいように描けば地図の出来上がりだ。簡単だろ?」

「斜めに進んだりした時は、進んだ方向を紙の端に斜め線を描けばいいんですね」

「自分が見た時に分かればいいんだ。それじゃあ、進むぞ」

 ルナは紙を折ってペンと一緒にポケットに入れた。

 俺は自分が昔に書いた地図を片手に1番前を進んで行く。

 一直線。曲がり道もなくなり、分かれ道も無くなっている。

 予想通り、迷宮は小さくなっている。地図を見たことで昔のことを思い出したので確信に変わる。

 こんな道ではなかった。

「さらに魔物が少ないな」

 2回の戦闘で9階層へ上がれる階段を見つけた。

「ほとんど一本道でしたね」

 紙の1と2の部分しか描いていないルナが声をかけてくる。

「そうだな。迷宮が小さくなっていることが確定した。地図作成は無しでいいだろう。またの機会に描いてもらうことにする」

「わかりました。迷宮が大きくなるとは聞いたことがありますが、小さくなっているのですよね?」

「みたいだな。迷宮から力を吸い取っている得体の知れないものが住み着いたのかもな」

「それはフラグっていうんですよ?」

 魔物が少なく暇そうにしていたマサが声を掛けてくる。フラグとは何かわからないが、よくないものだというのはわかった。

「フラグかなんだか知らないが、2の迷宮に無くなられるのは困る。さっさと異変を調査して解決するとしよう」

「「「「はい」」」」

 9階層も何事もなく攻略し、10階層にあるはずの中間地点も無くなっていて、戦闘も少ないまま12階層に上がるための階段までやってきた。

「アン達が先に行っているはずだから、魔物の数は少ないと思う。まだ余裕もあるし、行けるところまで行ってみるか?」

「「「「はい!」」」」

 いい返事だ。疲れていないことがわかる。

 ほとんど歩くか走るだけで、つまらないと思っていたのは俺だけじゃないようだ。

 このまま12階層の攻略に挑むことにした。
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