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ラウーラ、見つける。
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「ようこそいらっしゃいました。アルフレッド殿下」
小さな声で呼びかけられ、振り向くと小柄な老人が立っていた。教会責任者、教会長で、なんとジンとアンナの子孫らしい。
(そう言われれば面影が…………………ある様な、ない様な)
ラウーラは淑やかに令嬢らしい挨拶をしながら仲間たちに思いを馳せた。
薄暗い通路に複数の足音が響く。
「今日は当然の話ですまなかったね」
「いえいえ。ここは勇者グラフ様のための教会ですから。グラフ様の生まれ変わりであるアルフレッド殿下でしたら、いつでも大歓迎でございます」
教会長は穏やかに笑みを浮かべながらアルフレッドとラウーラを、関係者しか入れないとう奥の小部屋の、厳重に管理されているさらに奥へ案内した。
「こちらでございます」
窓のない薄暗い部屋に豪華な装飾の立派な箱が鎮座していた。
「勇者グラフ様の聖剣は、魔王との最期の戦いにおいて鞘を消失されてしまっています。そのため、グラフ様の死後、この専用の箱が作られました」
教会の職員が二人掛かりで、静かに恭しく蓋を開けた。果たして中には、すっかりアンティークと化したグラフの愛剣が収まっていた。
「………!」
愛剣との再会に、その場に固まってしまったラウーラを、チラと見ながらアルフレッドが剣に近づいた。
「持ってみても?」
「はい」
確認をとり剣を手に取り、掲げた。
「「「おお……」」」
教会の人達が思わず感嘆を漏らすほど、その姿は絵になっていていてラウーラも目を細めた。
「結構重いんだね」
軽く剣を振りながらアルフレッドが感想を漏らす。
「そうですね。今と比べて当時の武器は全体的に重量感があったと言われていますが、その中でもグラフ様の剣は重量級で、他の方も扱えなかったとか」
教会長の嬉しそうな説明を聞きながら、アルフレッドは「持ってみる?」とラウーラにそれを差し出した。
教会の職員たちが一様に「ご令嬢には流石に重すぎるかと」と大慌てする中、ラウーラは身体強化を纏うと、それを受け取った。
懐かしい感触を楽しみながら、何かを確認するように幾度か剣を振るうも、ラウーラは
「…………………確かに、重いですわね」
と、どこか寂しそうに笑った。
そのまま束の間、剣を見つめると器用にくるりと回し、打って変わってニコニコした様子でそれをアルフレッドに差し出した。
「やはりこれは、殿下がお持ちした方がお似合いですわ!」
「ラウーラ………ありがとう」
アルフレッドは厳粛にそれを受け取った。
ところで周りでそのやりとりを見ていた教会の責任者と職員は頭の中を疑問符でいっぱいになった。
(エッあの剣ってものすごく重かったよな?)(私でもまともに持てないのに)(どう言うこと?)(何を見せられているんだ?)
そんなことは意に介さず、満足したアルフレッドとラウーラはさて剣を箱に戻そうかとなった時
「あら?」とラウーラが声をあげた。
「どうしたのラウーラ?」
アルフレッドがラウーラの視線の先を追った。豪華な装飾の箱の一点。
ラウーラは耳打ちした。
『ここ、この装飾の部分なんですが仲間内で使っていた暗号になっているように見えるんです「回せ」「見ろ」と』
同じく息を飲んだアルフレッドは、許可をとりその箱に触れ、暗号付近のいくつかの装飾を調べる。何度か触った後、「ここが動きそうだな」と赤い石のついた部分をぐるりと回した。
「「「えっ!!!」」」
「隠しスペースだ」
「中に何か入っていますわね」
「この様な仕掛けがあったとは存じませんでした。これは大発見ですよ殿下!」
開いた小さな扉の奥に、狭いながらもポッカリと空間があった。だいたいラウーラの持っているジュエリーボックスくらいだろうか。
アルフレッドはそこに手を突っ込み探ると、緑の石のついた不思議なアミュレットが出てきた。
「先程の話からすると、このアミュレットはグラフ様が亡くなった後くらいからこの箱の中にあった、と言うことになるのかな?でもこれはまるで」
皆でアミュレトをまじまじと眺める。長い間仕舞われていたと言う割に、埃一つついていないし、緑の石からはしっかりと生き生きとした魔力が感じられた。ラウーラも流石に眉を顰めた。
「箱の細工の部分を見ても一度も開けられていない様に見えます。だとすると確かに不思議ですね。どんなにすごいアミュレットであろうと、魔石であろうと、何百年も稼働したまま保つなんて聞いたことがありませんわ」
「あの、勇者グラフ様と共に戦ったと言う、大魔術師エミリオ様の作ったアミュレットと言う事は?」
教会長がやや遠巻きに言葉を投げた。
「エミリオは確かに優秀な魔術師でしたが、これはそう言うレベルではない様な」
「は?」
ラウーラがポロリと漏らし、教会長がキョトンとする中、アルフレッドはアミュレットの裏側を眺めて言った。
「この魔術式、普段見るものとは全く違っててどういった効果があるのかさっぱりわからないけど……………このシンプルな感じ………ラウーラの作ってくれたアミュレットの魔術式に雰囲気が似てないか?」
そう言って差し出されたアミュレットの裏側をじっ……っと見て、ラウーラは「……………………んっ?」と小さく声をあげた。
『何か思い出した?』
アルフレッドの言葉にラウーラは一瞬考える素振りを見せるも小さく頷いた。
「このアミュレットにどういった効果があるかわからないが、まだ稼働しているし下手に動かさない方がいいだろう」
アルフレッドの提案に、教会長も興奮冷めやらぬ様子で頷く。
「いやあ、殿下!!本当に。私の代でこの様な素晴らしい発見ができ万巻胸に迫る想いです。我々の方でもこのアミュレットにどの様な効果があるのか調べてみたいと思います!」
アミュレットは元の隠しスペースに再びしまわれ、開け方を協会長に教えると「今日はどうもありがとう」と挨拶もそこそこにふたりは教会を後にした。
小さな声で呼びかけられ、振り向くと小柄な老人が立っていた。教会責任者、教会長で、なんとジンとアンナの子孫らしい。
(そう言われれば面影が…………………ある様な、ない様な)
ラウーラは淑やかに令嬢らしい挨拶をしながら仲間たちに思いを馳せた。
薄暗い通路に複数の足音が響く。
「今日は当然の話ですまなかったね」
「いえいえ。ここは勇者グラフ様のための教会ですから。グラフ様の生まれ変わりであるアルフレッド殿下でしたら、いつでも大歓迎でございます」
教会長は穏やかに笑みを浮かべながらアルフレッドとラウーラを、関係者しか入れないとう奥の小部屋の、厳重に管理されているさらに奥へ案内した。
「こちらでございます」
窓のない薄暗い部屋に豪華な装飾の立派な箱が鎮座していた。
「勇者グラフ様の聖剣は、魔王との最期の戦いにおいて鞘を消失されてしまっています。そのため、グラフ様の死後、この専用の箱が作られました」
教会の職員が二人掛かりで、静かに恭しく蓋を開けた。果たして中には、すっかりアンティークと化したグラフの愛剣が収まっていた。
「………!」
愛剣との再会に、その場に固まってしまったラウーラを、チラと見ながらアルフレッドが剣に近づいた。
「持ってみても?」
「はい」
確認をとり剣を手に取り、掲げた。
「「「おお……」」」
教会の人達が思わず感嘆を漏らすほど、その姿は絵になっていていてラウーラも目を細めた。
「結構重いんだね」
軽く剣を振りながらアルフレッドが感想を漏らす。
「そうですね。今と比べて当時の武器は全体的に重量感があったと言われていますが、その中でもグラフ様の剣は重量級で、他の方も扱えなかったとか」
教会長の嬉しそうな説明を聞きながら、アルフレッドは「持ってみる?」とラウーラにそれを差し出した。
教会の職員たちが一様に「ご令嬢には流石に重すぎるかと」と大慌てする中、ラウーラは身体強化を纏うと、それを受け取った。
懐かしい感触を楽しみながら、何かを確認するように幾度か剣を振るうも、ラウーラは
「…………………確かに、重いですわね」
と、どこか寂しそうに笑った。
そのまま束の間、剣を見つめると器用にくるりと回し、打って変わってニコニコした様子でそれをアルフレッドに差し出した。
「やはりこれは、殿下がお持ちした方がお似合いですわ!」
「ラウーラ………ありがとう」
アルフレッドは厳粛にそれを受け取った。
ところで周りでそのやりとりを見ていた教会の責任者と職員は頭の中を疑問符でいっぱいになった。
(エッあの剣ってものすごく重かったよな?)(私でもまともに持てないのに)(どう言うこと?)(何を見せられているんだ?)
そんなことは意に介さず、満足したアルフレッドとラウーラはさて剣を箱に戻そうかとなった時
「あら?」とラウーラが声をあげた。
「どうしたのラウーラ?」
アルフレッドがラウーラの視線の先を追った。豪華な装飾の箱の一点。
ラウーラは耳打ちした。
『ここ、この装飾の部分なんですが仲間内で使っていた暗号になっているように見えるんです「回せ」「見ろ」と』
同じく息を飲んだアルフレッドは、許可をとりその箱に触れ、暗号付近のいくつかの装飾を調べる。何度か触った後、「ここが動きそうだな」と赤い石のついた部分をぐるりと回した。
「「「えっ!!!」」」
「隠しスペースだ」
「中に何か入っていますわね」
「この様な仕掛けがあったとは存じませんでした。これは大発見ですよ殿下!」
開いた小さな扉の奥に、狭いながらもポッカリと空間があった。だいたいラウーラの持っているジュエリーボックスくらいだろうか。
アルフレッドはそこに手を突っ込み探ると、緑の石のついた不思議なアミュレットが出てきた。
「先程の話からすると、このアミュレットはグラフ様が亡くなった後くらいからこの箱の中にあった、と言うことになるのかな?でもこれはまるで」
皆でアミュレトをまじまじと眺める。長い間仕舞われていたと言う割に、埃一つついていないし、緑の石からはしっかりと生き生きとした魔力が感じられた。ラウーラも流石に眉を顰めた。
「箱の細工の部分を見ても一度も開けられていない様に見えます。だとすると確かに不思議ですね。どんなにすごいアミュレットであろうと、魔石であろうと、何百年も稼働したまま保つなんて聞いたことがありませんわ」
「あの、勇者グラフ様と共に戦ったと言う、大魔術師エミリオ様の作ったアミュレットと言う事は?」
教会長がやや遠巻きに言葉を投げた。
「エミリオは確かに優秀な魔術師でしたが、これはそう言うレベルではない様な」
「は?」
ラウーラがポロリと漏らし、教会長がキョトンとする中、アルフレッドはアミュレットの裏側を眺めて言った。
「この魔術式、普段見るものとは全く違っててどういった効果があるのかさっぱりわからないけど……………このシンプルな感じ………ラウーラの作ってくれたアミュレットの魔術式に雰囲気が似てないか?」
そう言って差し出されたアミュレットの裏側をじっ……っと見て、ラウーラは「……………………んっ?」と小さく声をあげた。
『何か思い出した?』
アルフレッドの言葉にラウーラは一瞬考える素振りを見せるも小さく頷いた。
「このアミュレットにどういった効果があるかわからないが、まだ稼働しているし下手に動かさない方がいいだろう」
アルフレッドの提案に、教会長も興奮冷めやらぬ様子で頷く。
「いやあ、殿下!!本当に。私の代でこの様な素晴らしい発見ができ万巻胸に迫る想いです。我々の方でもこのアミュレットにどの様な効果があるのか調べてみたいと思います!」
アミュレットは元の隠しスペースに再びしまわれ、開け方を協会長に教えると「今日はどうもありがとう」と挨拶もそこそこにふたりは教会を後にした。
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