夢か現か

黒梟

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廻る時

五十二

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 リーズラントたちの出産数日前。 


 最近メイヘルの出身国の情勢がおかしいと軍神から豊穣の女神に連絡があったらしい。
 それを律儀に神殿にいる男神が教えに来てくれたのだ。

 なんとも思わず獲物を片手に訪ねてくる様は見ていて気軽に友人を訪ねるそれに似ていた。

 作物もどこからともなく取り出し渡された。栄養のある物を食べさせろという隠れたメッセージの様なものだ。

 妊娠している三人を除き、家の主人であり諜報の頂点にいる者と彼の信頼できる部下が同席している。
 辺境伯家は諸事情でここには居ない。

「久しいな、まあそんな挨拶は良いとして、少し困ったことになった。
 メイヘル其方の祖国の者が事を荒立てたらしいと軍神から連絡があったぞ」

「私の祖国の者、ですか。思い当たるのは・・・・・考えたくはありませんが兄の第二王子くらいでしょうか」

「ああ、その第二王子で間違いない。あれは信仰心がなかった。だからこそ軍神の加護を得ることが出来なかったのだが・・・・そこをつけ込まれたらしい」

 その言葉に反応したのはソーシアルだ。

「つけ込まれるとはどういう事です?いくら加護を貰えないからと国を売る様な事をするのですか?」

「元々兄は気性が激しく略奪を繰り返していた時期があります。要は自分の実力を試したかったと言うだけなのですが。
 それには無関係の子供たちもいて・・・言ってはなんですが、かなり惨い殺し方をしたと聞いています。それもあって軍神の加護を貰えず王族としての権利も剥奪されています。
 どうやらそれに付け入って彼を動かした様です。どうやって接触できたのかはわかりませんが・・・・」

 考え込むメイヘルに男神は言った。

「神々のうちの一人が手を貸し逃亡の手助けをしたらしい。
 すまんな、こちらの不手際だ。ただその神は助け出したと同時に殺されている。どうやら呪いを掛けられていたようだ。
 他にもそういった者が居ないか確かめてはいるが、なにぶんしっぽを掴ませてくれなくてな。だからこそ余計に警戒して欲しい」

 そこで初めてこの屋敷の主が口を開いた。

「警戒するのは構わんが、狙われる者が分からんことには、戦力を分配せねばならん。もしも、狙われる可能性の高い者が分かるのならば、教えて欲しい。
 どうじゃ?無理か?」

「・・・・・怒らないで聞いて欲しいのだが、多分狙われるのはリーズラント。
 女神の力を欲しているのと、彼女を亡き者にすればあとが上手く回ると思っている節がある。
 創造神ですら関与していないのにご苦労な事だ」

 瞬間ソーシアルから発せられる殺気が凄いことになっている。顔は笑顔だが目が笑っていない。
 今度こそずっと一緒になれると思っていた。今度こそはずっと。
 死んでもなお手放す気は無かった。

 許せない、魂までも粉々に砕いてやる

 そう心に決めた瞬間何かがソーシアルの中で弾けた。
 それを感じ取った男神がため息混じりにソーシアルに声を掛けた。

「無闇矢鱈に力を使うと嫁が悲しむと思うがな。
 それに、あの嫁もしかしたら今もこの状況を夢だと思っている部分がある。それを逆手に取って事を進めればある程度精神を傷つけずに済むかもしれんぞ」

「リーに手を出される事自体が許し難い、万死に値する行為ですよ。
 それに子が産まれる前なら余計に身体に負担が掛かります」

「襲ってくるのは恐らく産後。動きが鈍くなっている時を狙ってくるだろう。それ程にリーズラントの実力は周りに知られている。
 もう一つ問題なのは襲撃に来る者だ。もしかしたらメイヘルの兄が直々に来るかもしれない。
 そうそう、お前達は知らないかもしれないが、メイヘルとその兄は双子でそっくりなんだ。だからぱっと見では人間は見分けをつけるのが難しいと思うぞ?」

「ああ、問題ありませんね。リーに刃を向けるものは何人たりとも許しませんよ。
 それより狙われるのが産後であるのなら生まれた我が子を別の部屋に移動させなければいけませんね。
 そちらは皆さんで護衛してもらいましょうか。お願いしますねマクロス、メイヘル」

 失敗することは許さないそんな表情で二人を見つめる。

「そんな顔で見なくても護り切る」

「我が子もいるのですから問題ありません。
であければ私が可愛いホーに殺されかねませんからね」

 それからは警備の話し合いもし、出産までは仰々しくしないと言う事に決まった。
 ただ、腕の立つ者が家の中に増やす様にした。家の当主が自身の部下の中でもとびきり腕の立つ者を配置した結果になる。
 勿論身元もしっかりしているし、神殿からの報告でも問題なしと判断されている。

 そんな準備を嫁達に知られずしているうちにリー達三人が産気づいた。


 

 無事に双子を産み落としたリーは疲れを滲ませベッドで休んでいる。
 子供たちはリーの胸の上ですやすや寝ていたが、リーを休ませる為に部屋を移動させた。その寂しさを埋める様に私がリーの手を握り眠るまで隣にいた。



 リーが寝入ったのを確認し私はゆっくり部屋を後にした。戸締りの確認もしっかりして。



 そして一刻後、夜も深まった時刻リーの部屋に何者かが侵入した。。
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