夢か現か

黒梟

文字の大きさ
56 / 58
廻る時

五十五

しおりを挟む

 リーが目を覚ましてくれて本当に良かった。半年は目を覚まさ無いと言われていたが信用していなかった。
 リーの瞳が私を映さ無いなんて考えられない。彼女の瞳に映るのは私だけで充分だ。
 まあ、たまに子供たちを捉えてももんだいないが・・・・
 心が狭いと言われてもなんとも思わ無い。やっと、これで本当にリーが私のものになるのだから。

 

 メイヘルの兄が来るだろうと言われてから警戒は怠ら無い。だが、必要以上の警戒もしない。
 相手を捕まえるのに警戒しすぎると被害が大きくなる。子供にまで手を出されたら今度こそリーの精神は壊れてしまう。それだけはなんとしても避けたい。

 考えた末、得策とは言え無いがリーを囮にすることにした。本当に苦渋の選択だった。
 思わず王太子に死んでもらおうかと思うくらい嫌だった。

 全員に説得されなんとか、渋々、嫌々納得したが、許したわけではない。
 どうやって侵入するかなどを的確に予想を立て、人員を配置する。勿論腕の立つものばかりで顔の割れていない者限定だが。

 

 そんな準備をして迎えた出産。リーは無事に双子を産んでくれた。
 嬉しくて涙が出た。しかし子供たちの目を見る事は叶わなかった。

 落ち着いたら目を開けてくれるだろうと、しばらくリーの身体の上に二人を乗せ、初乳を飲ませる。母性が強いのか母乳の出に問題はなかったが、初めては中々上手く飲め無いようで子供たちは口を開けては含みを繰り返していた。

 夜も更けリーも疲れから寝てしまうと、子供たちを別室に運び厳重に警護してもらう。

 私はリーの寝ているベッドの頭元で。
 気づかれる事はない。気配も消し他にも三人程この部屋の中に潜んでいる。全て諜報の人間だがリーの事を可愛がっている者ばかりだ。


 リーが目を覚ましたのを確認し暫くすると窓の鍵が開き誰かが侵入してきた。
 迷いなくリーのところまで行くと短剣を取り出し振り下ろした。


 だがその短剣はリーに刺さることはなかった。


 そうリーには神の加護がある。それも普通の神ではない創世神。


 何の非も無い魂を消してはいけない


 その言葉通りあらゆる面でリーは守られてきた。だが何故か魂の輝きは曇るばかり。原因は分からない。言うなれば何かに蝕まれているようだという。

 許さない。リーの魂は全て私のモノだ。勝手に干渉するなど消されて当然だ

 侵入者を殺しそうな勢いで捕らえ別室に連れて行く。もちろん逃げられないように厳重に。
 そして屋敷周辺にいる者も捕らえていく。協力者や内通者を生かしておくわけが無い。

 全員を一纏めにした所で、リーを襲った者の顔を見て驚愕した。メイヘルと瓜二つなのである。

 そんな空気をものともせずメイヘルが部屋に入ってくる。

「やあ久しぶりだね兄さん」

「お前に兄と呼ばれたくはないな」

「そうだね。でもなんでこんな馬鹿なことをしたの?利が無いことはしない主義でしょ?」

「ふ・・・・くくくく。相変わらずだな。まあそうだな、一種の洗脳の様なものだ。お前は護られていたから分からないだろうがな」

「・・・・・はぁ、兄さんは何も分かっていないね。幼い頃の私には加護なんて無かったんだよ?加護を授かったのは最近だね」

「嘘を言うな!みんな言ってる、兄弟の中で加護を貰えたのはお前だけだと。
 だからこそ兄上も私も何とか加護を授かろうと必死になっていたんだ」

「要はそれを逆手に取られたんだね。
 でも言わせてもらえば、私は生け贄のように神殿に送り出されていたからそう取れたんでしょ?
 詰まるところ何時死んでもいいようにと陛下は考えておられたようだけど。
 ただ偶然が重なって生き残っただけ。それだけ。生きていようがいまいがどっちでもいい存在。わたしはそんなちっぽけなモノなんだよ。あそこではね」

「なら何故加護を貰えた?」

「ああ、彼女に一目惚れしたから。何度か神殿を抜け出していくうちに協力してくれるようになったんだ。
 まあ、連絡係のような事もさせられていたけどね。諸外国を巡るのは楽しかったよ?
まあ、そのお陰で彼女の役には立ててるし、文句は無いけどね。
 それにこの国に永住が決まってからは加護は無くなったし楽なもんだよ」

「は?加護が無くなった?」

「うん。もうあの国の人間じゃないしね。必要ないだろって言われて取り上げられた」

「・・・・・、は、ははははは。なんだよ、だったら今まで俺がしてきた事はなんだったんだ?全部無駄じゃないか。何の為にあんなに頑張って、人も殺して・・・・・」

 かの国はそれだけ洗脳されていたのかもしれない。神殿が力を貸したがらないほどに。
そしてメイヘルの行動は軍神にとって面白かったからなのだろう。

 神の神経は一体どうなっているんだ?

「どうもなってはないが面白いことは好きだな。見ていて焦れったいのが何ともいい酒の肴になる」

 ・・・・・人の心勝手に読むな。そしていきなり現れるな

「そう言うな、向こうの国も大分制裁が加えられたらしく国内も安定している。ただ、あの宗教の信者が居るかもしれないから気をつけてね。
 でその子はどうする?」

「始末します」

「うん、待って」

「メイヘル、いくらお前の兄が被害者でもリーに刃物を向けたんだ、死が妥当だ」

「君がリーズラントさん至上主義なのはよく分かった。
 でも噂と違って兄たちは一般人を殺めたりなんてしていない。それは軍神が確認済みだ。だからこそ今回兄が国を出るきっかけを作ってくれたのだから」

「とばっちりを此方が受けて、リーの精神が壊れる様な事をしておいて今更ですね」

「彼女の心の闇というか魂の曇りって君のせいじゃ・・・・・はい、すいません許してください」

 目線だけでも位殺せそうなソーシアルの睨みに顔を引き攣らせながらも謝るメイヘル。
 その考えに同調したのが男神である。

「そういえば子供は目を開けましたか?」

「いえ、生まれ落ちた時も目を開けませんでしたし、今は寝ていると思います」

「もしかしたら貴方に残っていた呪いが彼女の体内に入り込んでいる可能性がありますね。それを取り除けば綺麗な魂に戻るのではないでしょうか?」

「具体的には?」

「そうですね・・・」

 こうして一度リーを怪我とは違う痛みで目覚めさせ、再度眠りについた時に体内から毒素を排出させる為に豊穣の女神に神力を注いで貰うと言う事だった。

 子供の瞳を見れば少しは浄化されるだろうがそれだけでは足り無い。
 ソーシアルが注ぎ込んだ体液分もしくはそれ以上のものが必要となる。要はがっつきすぎである。

 神力も無限にある訳ではないので時間がかかると言われた。最低でも半年、長ければ一年。
 身体への栄養補給はと言われれば、それも神力で補うと言われた。

 痩せこけたりしていたら許さ無い

 神をも恐れぬその思考を側にいた全員が読み取り呆れたのは言うまでもない。

 で、話は逸れたがリーズラントを襲った者たちの処分は、兄以外が極刑。それは返還される途中で行うとの事。
 この国で行えばいろいろな怨念や、宗教的な攻撃に晒さねかねないからと言う理由と、
兄以外の者の身体に刻印の様な模様が刻まれていたのが問題視されたからである。

 明らかに呪いの類と分かるに、愚かな神々への罰が決まったと男神が宣言し、侵入者を内通者を即刻彼の国に送り返した。



 その後、まともであった第一王子、第二王子に従う者を除き平民を含めた全員が落雷等の天災によって生命を落とした。
 その余波は他の国にまで行き渡ったという。

 この中には神の神力を奪い自ら神になろうとしていた者も含まれており、天界の方も綺麗に片付いたのだという。
 それは国に帰ったメイヘルの兄が軍神の神殿に行った際に聞いたという。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵夫人フルールは、夫である伯爵と愛人の秘書に長年頭を悩ませていた。 何度夫に苦言を呈しても「彼女は仕事において必要不可欠なパートナーだから」と一切聞く耳を持たない。 困り果てていたそのとき、彼女は突然前世の記憶を取り戻した。 このままだと夫と愛人の真実の愛の犠牲になってしまう。 それだけは御免だ。 結婚五年目にして、彼女はようやく夫を見限り、新たな事業を立ち上げた。 そして事業を成功させたフルールの隣には、いつも同じ男が立っていた。 その男は誰なのかと問い詰める夫に、フルールはニッコリ笑って言った。 「彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです」と。

側近女性は迷わない

中田カナ
恋愛
第二王子殿下の側近の中でただ1人の女性である私は、思いがけず自分の陰口を耳にしてしまった。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...