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廻る時
五十五
しおりを挟むリーが目を覚ましてくれて本当に良かった。半年は目を覚まさ無いと言われていたが信用していなかった。
リーの瞳が私を映さ無いなんて考えられない。彼女の瞳に映るのは私だけで充分だ。
まあ、たまに子供たちを捉えてももんだいないが・・・・
心が狭いと言われてもなんとも思わ無い。やっと、これで本当にリーが私のものになるのだから。
メイヘルの兄が来るだろうと言われてから警戒は怠ら無い。だが、必要以上の警戒もしない。
相手を捕まえるのに警戒しすぎると被害が大きくなる。子供にまで手を出されたら今度こそリーの精神は壊れてしまう。それだけはなんとしても避けたい。
考えた末、得策とは言え無いがリーを囮にすることにした。本当に苦渋の選択だった。
思わず王太子に死んでもらおうかと思うくらい嫌だった。
全員に説得されなんとか、渋々、嫌々納得したが、許したわけではない。
どうやって侵入するかなどを的確に予想を立て、人員を配置する。勿論腕の立つものばかりで顔の割れていない者限定だが。
そんな準備をして迎えた出産。リーは無事に双子を産んでくれた。
嬉しくて涙が出た。しかし子供たちの目を見る事は叶わなかった。
落ち着いたら目を開けてくれるだろうと、しばらくリーの身体の上に二人を乗せ、初乳を飲ませる。母性が強いのか母乳の出に問題はなかったが、初めては中々上手く飲め無いようで子供たちは口を開けては含みを繰り返していた。
夜も更けリーも疲れから寝てしまうと、子供たちを別室に運び厳重に警護してもらう。
私はリーの寝ているベッドの頭元で。
気づかれる事はない。気配も消し他にも三人程この部屋の中に潜んでいる。全て諜報の人間だがリーの事を可愛がっている者ばかりだ。
リーが目を覚ましたのを確認し暫くすると窓の鍵が開き誰かが侵入してきた。
迷いなくリーのところまで行くと短剣を取り出し振り下ろした。
だがその短剣はリーに刺さることはなかった。
そうリーには神の加護がある。それも普通の神ではない創世神。
何の非も無い魂を消してはいけない
その言葉通りあらゆる面でリーは守られてきた。だが何故か魂の輝きは曇るばかり。原因は分からない。言うなれば何かに蝕まれているようだという。
許さない。リーの魂は全て私のモノだ。勝手に干渉するなど消されて当然だ
侵入者を殺しそうな勢いで捕らえ別室に連れて行く。もちろん逃げられないように厳重に。
そして屋敷周辺にいる者も捕らえていく。協力者や内通者を生かしておくわけが無い。
全員を一纏めにした所で、リーを襲った者の顔を見て驚愕した。メイヘルと瓜二つなのである。
そんな空気をものともせずメイヘルが部屋に入ってくる。
「やあ久しぶりだね兄さん」
「お前に兄と呼ばれたくはないな」
「そうだね。でもなんでこんな馬鹿なことをしたの?利が無いことはしない主義でしょ?」
「ふ・・・・くくくく。相変わらずだな。まあそうだな、一種の洗脳の様なものだ。お前は護られていたから分からないだろうがな」
「・・・・・はぁ、兄さんは何も分かっていないね。幼い頃の私には加護なんて無かったんだよ?加護を授かったのは最近だね」
「嘘を言うな!みんな言ってる、兄弟の中で加護を貰えたのはお前だけだと。
だからこそ兄上も私も何とか加護を授かろうと必死になっていたんだ」
「要はそれを逆手に取られたんだね。
でも言わせてもらえば、私は生け贄のように神殿に送り出されていたからそう取れたんでしょ?
詰まるところ何時死んでもいいようにと陛下は考えておられたようだけど。
ただ偶然が重なって生き残っただけ。それだけ。生きていようがいまいがどっちでもいい存在。わたしはそんなちっぽけなモノなんだよ。あそこではね」
「なら何故加護を貰えた?」
「ああ、彼女に一目惚れしたから。何度か神殿を抜け出していくうちに協力してくれるようになったんだ。
まあ、連絡係のような事もさせられていたけどね。諸外国を巡るのは楽しかったよ?
まあ、そのお陰で彼女の役には立ててるし、文句は無いけどね。
それにこの国に永住が決まってからは加護は無くなったし楽なもんだよ」
「は?加護が無くなった?」
「うん。もうあの国の人間じゃないしね。必要ないだろって言われて取り上げられた」
「・・・・・、は、ははははは。なんだよ、だったら今まで俺がしてきた事はなんだったんだ?全部無駄じゃないか。何の為にあんなに頑張って、人も殺して・・・・・」
かの国はそれだけ洗脳されていたのかもしれない。神殿が力を貸したがらないほどに。
そしてメイヘルの行動は軍神にとって面白かったからなのだろう。
神の神経は一体どうなっているんだ?
「どうもなってはないが面白いことは好きだな。見ていて焦れったいのが何ともいい酒の肴になる」
・・・・・人の心勝手に読むな。そしていきなり現れるな
「そう言うな、向こうの国も大分制裁が加えられたらしく国内も安定している。ただ、あの宗教の信者が居るかもしれないから気をつけてね。
でその子はどうする?」
「始末します」
「うん、待って」
「メイヘル、いくらお前の兄が被害者でも私のリーに刃物を向けたんだ、死が妥当だ」
「君がリーズラントさん至上主義なのはよく分かった。
でも噂と違って兄たちは一般人を殺めたりなんてしていない。それは軍神が確認済みだ。だからこそ今回兄が国を出るきっかけを作ってくれたのだから」
「とばっちりを此方が受けて、リーの精神が壊れる様な事をしておいて今更ですね」
「彼女の心の闇というか魂の曇りって君のせいじゃ・・・・・はい、すいません許してください」
目線だけでも位殺せそうなソーシアルの睨みに顔を引き攣らせながらも謝るメイヘル。
その考えに同調したのが男神である。
「そういえば子供は目を開けましたか?」
「いえ、生まれ落ちた時も目を開けませんでしたし、今は寝ていると思います」
「もしかしたら貴方に残っていた呪いが彼女の体内に入り込んでいる可能性がありますね。それを取り除けば綺麗な魂に戻るのではないでしょうか?」
「具体的には?」
「そうですね・・・」
こうして一度リーを怪我とは違う痛みで目覚めさせ、再度眠りについた時に体内から毒素を排出させる為に豊穣の女神に神力を注いで貰うと言う事だった。
子供の瞳を見れば少しは浄化されるだろうがそれだけでは足り無い。
ソーシアルが注ぎ込んだ体液分もしくはそれ以上のものが必要となる。要はがっつきすぎである。
神力も無限にある訳ではないので時間がかかると言われた。最低でも半年、長ければ一年。
身体への栄養補給はと言われれば、それも神力で補うと言われた。
痩せこけたりしていたら許さ無い
神をも恐れぬその思考を側にいた全員が読み取り呆れたのは言うまでもない。
で、話は逸れたがリーズラントを襲った者たちの処分は、兄以外が極刑。それは返還される途中で行うとの事。
この国で行えばいろいろな怨念や、宗教的な攻撃に晒さねかねないからと言う理由と、
兄以外の者の身体に刻印の様な模様が刻まれていたのが問題視されたからである。
明らかに呪いの類と分かるそれに、愚かな神々への罰が決まったと男神が宣言し、侵入者を内通者を即刻彼の国に送り返した。
その後、まともであった第一王子、第二王子に従う者を除き平民を含めた全員が落雷等の天災によって生命を落とした。
その余波は他の国にまで行き渡ったという。
この中には神の神力を奪い自ら神になろうとしていた者も含まれており、天界の方も綺麗に片付いたのだという。
それは国に帰ったメイヘルの兄が軍神の神殿に行った際に聞いたという。
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