上 下
5 / 96
悪役を演じて見せよ!

チーム名は「とまとをつぶせ!」

しおりを挟む
 現在、ソラは15歳になったばかりの少年だ。ちょっぴり猪突猛進なところのあるけど、いたって普通の子だ。茶髪で澄んだ琥珀色の眼をもち、身長が低いことを気にしているが、これからまだ伸びしろはあるだろうと楽観的に考えている。
 仲間内では、暴走特急とか、猪突猛進なところからウリ坊なんて言われている。

 そんなソラがとまと伯爵のチームに所属してから、かれこれ10年弱の月日が過ぎ去った。
 チームメンバーでは中堅どころだ。
 親元を離れて、幼いころから子供時代をゲームの中で過ごすことで胸の中に広がる苦い気持ちやもやもやはあったものの、相棒を組むことの多いガラム導きのお陰で割と健全に過ごしてきた。ソラの中では、ガラムは母親のような存在で、ガラム母さんと呼んでいる。
 それから、チーム関係者以外には知られていないが、ソラと双子の姉レミが極稀に入れ替わることがある。ゲームに代打で参加してもらうことでゲームへのストレスが多少軽減しているのも、ソラが割とまともな精神で過ごせてきた大きな理由であろう。

 ちなみにガラムは年齢不詳で、ソラが初めて会った時から今でもあまり姿形が変わらない。褐色の肌に黒髪の女性だ。一方、とまと伯爵はというと、鼻下のスクエアなちょび髭がトレードマークのぽっちゃりおじさんだ。黒髪黒目で赤の帽子と青のつなぎが似合いそうな風貌だったりする。
 双子のレミはソラに似ており、茶髪と琥珀色の眼の賢い女の子だ。チーム対抗のクイズバトルではソラの代わりに大活躍してくれた。

 チームを率いるとまと伯爵の掲げている指針は初心忘るべからず。「きらきらと 笑顔のさきに 若葉かな」という俳句をどや顔で詠んでいた。
 ソラはあの時ほど、とまと伯爵をぶん殴りたいと思ったことはないと今でも思う。自分が双六ゲーム攻略に苦労している時に、のほほんとしているところがちょっといけ好かない。
 しかも、チーム名は「とまとをつぶせ!」だ。とまとをつぶせイコールとまと伯爵の顔をぶっつぶして血の雨を降らすことを掲題にしているんですかというツッコミとともにグーパンしても自分は誰からも責められないはずだ。
 彼のユーザーネーム[とまと伯爵]といい、思いつきの俳句といい、チーム名といい、壊滅的にセンスがない。ユーザーネームの伯爵は実際の彼の階級ではなく、ただ語呂がいいからつけたとのこと。

 それにどうしてそんなチーム名にしたんだろう。
 チーム名の変更は1つのゲームが終わるまで受け付けないので、まだまだこのチーム名は継続される。
しおりを挟む

処理中です...