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悪役を演じて見せよ!
悪役令息とたぬきいち
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さて、ソラの憂いはいい意味で覆された。
彼は悪役令嬢ではなく、悪役令息として活動することになった。いや何それ、悪役令嬢と悪役令息って、自分は違いの分からない男なのかもしれない。ソラは自信を無くした。
ちなみに、書き換えられた物語では悪役は王子の婚約者ではなく、ただの意地悪なクラスメートとなったそうだ。便宜上、王子の婚約者はいない設定となった。
「えっ、ボーイズがラブする展開ですか? それは何だかドキがむねむね致します。いたっ」
いい大人なのにお茶らけているタマキは常に黒歴史を更新しているのに、その自覚が未だにない。きっと10年経っても彼女は恥ずかしいと思うことはないんだろう。タマキの頭をひっぱたいたソラは設定を振り返る。
「だまれ、用務員いち。まず、僕は悪役令息だ。意地悪ばかりすると勘違いされているけど、実はめっちゃいい子。そして、僕の歌声は天上の神々さえも魅了する天使の歌声なのさ」
ふぁさーっと前髪をかき上げるしぐさも忘れない。ドレスを着なくて済んだが、意地悪なのにいい子というキャラクターを演じ切るには思い切りの良さと何だか自信ありそうにしてなきゃいけない気がする。キャラづくりは入念に行っていくつもりだ。
本日は晴天、絶好の新学期開始日和なり。
「さっそく、いい子アピールをするために、王子と友達になってくる。歌うまアピールはその後だ。幸運を祈ってくれ給え」
キャラが迷走しているのは気のせいだろうか、いや迷走している。
だが、用務員いちは花壇の草むしりをしながら、この子コミュニケーション能力半端ないなとあさってのほうに感心した。
タマキは会社員時代、エレベータで気まずくなりたくないがために、毎日、10階まで階段を使ったくらい人とのコミュニケーションが苦手だった。エレベータの中で気まずくなるくらいなら、たとえ息があがろうとも階段を上るんだ、健康にもいいしね。
「さあ、たぬきいち、我に続け! 僕のペットとして、そのつぶらな瞳で王子を魅了するのだ」
「あいあいさー」
ソラはポンタを王子と友達になるための懸け橋として利用するつもりらしい。タマキはソラのことをコミュニケーション能力高いやつ認定したが、本当は引っ込み思案で友達が少なかったりする。こうして用務員いちの使い魔は悪役令息のペットになり下がったのだった。
「ええー、たぬきいちって…、ポンタって呼んであげてー、まあ、私の分も頼んだよ」
タマキの朗らかな笑みに見送られてソラとポンタは意気揚々と始業式に挑むのであった。
彼は悪役令嬢ではなく、悪役令息として活動することになった。いや何それ、悪役令嬢と悪役令息って、自分は違いの分からない男なのかもしれない。ソラは自信を無くした。
ちなみに、書き換えられた物語では悪役は王子の婚約者ではなく、ただの意地悪なクラスメートとなったそうだ。便宜上、王子の婚約者はいない設定となった。
「えっ、ボーイズがラブする展開ですか? それは何だかドキがむねむね致します。いたっ」
いい大人なのにお茶らけているタマキは常に黒歴史を更新しているのに、その自覚が未だにない。きっと10年経っても彼女は恥ずかしいと思うことはないんだろう。タマキの頭をひっぱたいたソラは設定を振り返る。
「だまれ、用務員いち。まず、僕は悪役令息だ。意地悪ばかりすると勘違いされているけど、実はめっちゃいい子。そして、僕の歌声は天上の神々さえも魅了する天使の歌声なのさ」
ふぁさーっと前髪をかき上げるしぐさも忘れない。ドレスを着なくて済んだが、意地悪なのにいい子というキャラクターを演じ切るには思い切りの良さと何だか自信ありそうにしてなきゃいけない気がする。キャラづくりは入念に行っていくつもりだ。
本日は晴天、絶好の新学期開始日和なり。
「さっそく、いい子アピールをするために、王子と友達になってくる。歌うまアピールはその後だ。幸運を祈ってくれ給え」
キャラが迷走しているのは気のせいだろうか、いや迷走している。
だが、用務員いちは花壇の草むしりをしながら、この子コミュニケーション能力半端ないなとあさってのほうに感心した。
タマキは会社員時代、エレベータで気まずくなりたくないがために、毎日、10階まで階段を使ったくらい人とのコミュニケーションが苦手だった。エレベータの中で気まずくなるくらいなら、たとえ息があがろうとも階段を上るんだ、健康にもいいしね。
「さあ、たぬきいち、我に続け! 僕のペットとして、そのつぶらな瞳で王子を魅了するのだ」
「あいあいさー」
ソラはポンタを王子と友達になるための懸け橋として利用するつもりらしい。タマキはソラのことをコミュニケーション能力高いやつ認定したが、本当は引っ込み思案で友達が少なかったりする。こうして用務員いちの使い魔は悪役令息のペットになり下がったのだった。
「ええー、たぬきいちって…、ポンタって呼んであげてー、まあ、私の分も頼んだよ」
タマキの朗らかな笑みに見送られてソラとポンタは意気揚々と始業式に挑むのであった。
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