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悪役を演じて見せよ!

小坊主ポンタの授業

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 その日、ソラはこれまでの人生のランキング5に入る位の衝撃に見舞われた。

 3年生なのに、ソラは中級までの魔法が使えない。世界1の魔法使いになるどころか、何の魔法も使いこなせなかった。
 このままひょろ風と水が出る能力を使って魔法が使えるふりをするか、魔法の授業だけ1年生に混ざらせてもらってやり過ごすかの選択に迫られて、ソラは前者を選んだ。だって、エリヤとアランと別れるのがいやだったからだ。

 ここ数か月、彼らと過ごすことが本当に楽しくて、ソラにとっては掛け替えのない時間となっていた。エリヤは王子だけど、偉ぶらず接してくれるし、たまにからかってくることさえある。アランは毒舌だけど、いつも気遣ってくれる。クラスの女子総スカン事件ではソラをかばってくれた。
 ソラの勘違いでなければ、彼らとの間には確かな友情が芽生えていると思う。

 だから、能力を魔法と偽って、一緒の授業をとったことに対して後悔はしていない。3年生の授業は個人的に鍛えあげていき、これから先は課外授業があるくらいなので、能力さえあればついていけるのだ。

 だけど、せっかくなら魔法を使えるようになりたい。そこで、放課後、なぜかポンタに魔法を教わることになった。最初はタマキに教わろうとしていたのだが、彼女は恐ろしく教えるのが下手だった。ならば、ガラムに教わろうと思ったが、彼女もこの世界は初めてなので、教えることはできないそうだ。学園では彼女は占いの先生として活躍している。

 この世界に来た当初、タマキは1年生に混ざって魔法を勉強する選択をしていた。ポンタは召喚の授業以降タマキと過ごしてきたので、魔法に関しては少し学んだそうだ。ポンタにはとても失礼にあたるが、ポンタがタマキよりも教え上手なことに少なからず衝撃を覚えたし、ポンタが器用に光と闇魔法を使ったことに驚いた。

 まずは、おのれの中の魔力と向き合うことになった。
「背中ピン! 目をつむって! 息、吸って吐いて! はい集中! 心、集中!」
 ポンタは変身することができるので、小坊主に変身している。警策きょうさくという、座禅の時、肩を打つ棒を持ち、ソラの集中が切れたときに肩を叩けるように待機してくれた。

 10分くらいが経過した後、ポンタはたぬきに戻って、ソラの手に左前足をそっと添えた。
「続いて、ポンタの魔力を感じるんだ!」

 体の中にポンタの温かい魔力を感じる。
「最後に、おへその下にうずうずを感じたら、ポンタだ!」
 ソラは、へその下から感じた力を外に出力すると、純粋な魔力が体の外に吐き出されて、校庭のゴールポストにゴールインした。なんて奇跡。初めての魔法はこうして成功した。

 特訓の結果、ソラは魔法でひょろ風、ちょろ水を出せるようになった。だけど結局、能力以上の魔法は使えなかったので、今後も授業中ソラは能力を使い続けることになるのであった。光と闇の魔法が使える見込みは今のところない。
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