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悪役を演じて見せよ!

勇気あるもの、祠に妖怪の好物を捧げよ

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 課外授業でのレクリエーションといえば、肝試しなのか何なのか知らないが、本日、1日目の夜は肝試しで締めくくられる。結局、妖怪[ブレネリ]には会えなかった。非常に残念である。今日会えたのは、海坊主、ぬらりひょん、鵺、かまいたち、鉄鼠、結構濃ゆい妖怪と出会えた、悪くはないぞ。

 肝試しの集合がかかった。ちなみに、ソラが辞書で調べた肝試しの定義は【墓場のような怖い場所へ行って、その恐ろしさに耐えうる力を試すこと】だった、要は勇気や根性を試されるというわけだ。でも、摩訶不思議だけどフレンドリーな妖怪が普通にそこら中にいるし、湖畔はエメラルドグリーンのきれいな場所でそんなおどろおどろしい雰囲気もない。なんせ、リゾート地だから。

 というわけで、ソラはあまり肝試しを怖がっていない。ただ、周りの様子が尋常じゃない。上級生の中には、お経を唱えている生徒や手を合わせて涙している生徒もいる。普通に彼らのほうが怖い。

 一緒に来たアランに聞いてみることにした。エリヤはすでに警護要員昼間会った2人に囲まれている。
「ばっ、ばか、あんまそういうこと大きい声で聞くなよ、目ぇ付けられるって。あー、ソラは編入組だったか…。課外授業のレクリエーションはえげつないので有名なんだ。毎年、引きこもる生徒が10人以上でてくる」

 アランが顔を近づけて、手の甲を口に当てつつ、声を潜めて教えてくれた。
「先生が妙に張り切っちまって、アンデッド系の魔物を召喚しまくる。ふよふよしているゴーストや人魂ならまだいい、スカルなんかもまあ攻撃力が低いしまだいい。だけど、興に乗って、グールとか死神とかデュラハンやらも出てくる年は悲惨だ。マジ怖い。さらにさらに、ここらに住んでいるアンデッド系妖怪が出張った日は終わりだ、キョンシーとかな、うっかり、生徒が昇天させたことがあって、良いことしたのに罪悪感が半端なかったってよ」
「そ…そう、やばいじゃん、うちの学校…」
「なっ、だから、目ぇつけられて、すげーアンデッド召喚されないように気ぃつけな」

 そして、いよいよ肝試しがはじまった。灯りのともった提灯片手に近くにある祠に向かう。そして、今日自分が出会った妖怪の好物を捧げるミッションだ。予め、色んな好物は縦長机に置かれていて、そこからチョイスして持っていくのだ。ソラはぬらりひょんの好物であるお酒を選んだ。このチョイスを間違っていた場合は、祠からの帰り道、集中的に狙われるそうだ。

 共に回る人は自由ということだったので、ソラはアランとアイランと一緒に祠に行くことにした。エリヤは護衛要員と一緒のため、別行動だ。
 行きはゴーストとデュラハンに遭遇してしまったが、何とか仲間3人励ましあって乗り切れた。アランが叫びすぎて息も絶え絶えになり、アイランが恐怖のあまり笑いだしたときはもうだめかと思った。ゴーストもデュラハンも想像以上の怖さだった。ソラは終始無言でぶるっていた。

 そんな帰り道、ちょっと進んだところのことだった、何者かが目の前を横切った。また、アンデッドきたかっと身構えたところだった。
「こちらブーちゃんです。チョコレートください。ぶーちゃんはチョコレートが好きです、そして、ここお化けが多くて怖いです、助けてなのです」
 肝試しについて、地域の防災無線で予め通達されていたはずなのに、聞き流してしまった現地妖怪ブーちゃんが助けを求めてきた。
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