うり坊すごろく記 ~もふもふは非常食要員なんじゃないかと最近うたがってます~

青山零

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悪役を演じて見せよ!

後に語り継がれるキョンシー恐怖伝説はこのあと

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 キョンシーのシンシンは舌なめずりをした、真っ赤な口紅がはがれてしまったが、気にしない。
 1年も前から今日という日を楽しみにしていた。なぜなら、今日は合法的に都会のシティーボーイ、シティーガールを恐怖のどん底に落としてもいい日だったからだ。5年前、親戚のヤンおじさんが昇天させられたと聞いたとき、復讐を誓った。すべての不浄が祓われたヤンおじさんの最期はとても穏やかで苦しまずに逝ったそうだ。何たる屈辱!

「えーんえーん…けふけふ、すんすん…びえーん」
 幼気なおかっぱ頭の女の子が泣いているのに、情けないことにソラ達3人共なかなか声をかけられない。
 行きに、一般の妖怪を装ったゴーストに騙されて危うく底なし沼に轢きづりこまれそうになったのは記憶に新しい。耳元で『一緒に逝こう』と言われた恐怖は簡単にはぬぐえない。タンクトップ先生に助けてもらって、何とか生きて肝試しを続けていられている次第だ。チキン3人衆はお互いの脇腹を肘で小突きあって、話しかける役を譲り合っている。

「ごるあぁ、そこの3人、幼子が泣いているのにほっとくとか、男の風上にも置けない! くらえ天誅、そいやっ!」
 大きな扇でもって風を発生させたキョンシーのシンシンによって、ばびゅんっと3人は吹っ飛ばされた。ブーちゃんが呆然としてあんぐりその光景を眺めていた、結果として、泣き止んだので良しとしよう。

 腕くみしたキョンシーお姉さんに顎をしゃくられた。
「ごめんね、僕達、君がお化けかなんかだと思って…」
 3人はブーちゃん好物のチョコレートを持ち合わせていなかったので、それぞれ、ポケットに入っていた、いちご飴、プロテインバーカボチャ味、1口サイズの羊羹ようかんを渡してみた。よかった、お気に召してもらえた。

「ブーちゃん、お化けじゃなくて、ロックロックビート旅館の座敷童です。大きくなったら宿の敏腕トップリーダーになるのが夢です」
 こんな小さい頃から夢を語るなんてしっかりした子だ。妖怪ろくろ首が経営する旅館のお嬢さんらしい。

「何やら昼間に楽しそうな声が聞こえたので、宿を抜け出したのですが、怖いのいっぱいで…やっぱり、板前の鉄さんみたいに盗んだロバで走り出すべきでした…」
「盗みはいけないよ!」
 ついつい自分の不良な武勇伝を語っちゃってたのかな板前の鉄さん…、でも、小さい子に語る内容じゃない。愛すべきロバに関してはツッコミを入れない。前から思っていたけど、列車やロープウェイがあるのに、近場の移動手段が馬車かロバって、この世界の交通網どうなっているんだろう。

「あっ、じゃあ僕達、ブーちゃんをスタート地点にいる先生に預けてきますので! シンシンさんも今日はお疲れ様でした、それじゃあ」
「次は気を付けるのよ!」
 何だかんだ自己紹介までした手前、シンシンはこの3人を恐怖のどん底に落とすのは諦めた。というか、幼子を前にそんな気も失せた。気を取り直して、次のターゲットに移行だ。恐怖はこれからだ!

「皆様、ブーちゃん、とても心強かったです。ありがとうございました」
 ブーちゃんを真ん中にソラとアイランで手を繋いで、スタート地点まで戻った。アランは警戒役を引き受けてくれた。その後、無事、先生に事情を説明してブーちゃんを引き渡すと、3人はなんとか肝試しを乗り切ったのだった。

アイランのメモ、[座敷童のブーちゃんの夢は旅館の女将、キョンシーのシンシンさんは扇で風を起こすのが得意]
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