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悪役を演じて見せよ!

窓際の先生と新任の先生

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 ロープウェイの事件の後、白岩先生はソラ達のクラスの担任を下ろされたが、謹慎があけて仕事に復帰している。席は窓際に移され、窓際族と化している。今は担当の授業もできずに雑務をちまちま引き受ける苦難の日々だ。彼はうり坊と出会ってからゴロゴロと坂を下る如く、転落人生を歩んでいる。そんな先生は今年、厄年で42歳。

 さて、そんな白岩先生の代わりに新任の先生が赴任してきた。教頭先生の紹介から始まる。
「こんな中途半端な時期となりましたが、この度、白岩先生の代わりにヤタ先生が藤組を担当することになりました。皆さん、よろしくお願いします」
「ヤタと申す。担当は魔法じゃ! よろしくのう。そこなエリヤはわしのひ孫じゃ。警備の都合で、まさかのわし担任として参上! あと、そこの小僧はわしの大事な毛帽子を飛ばした罪があるので、ちょっと後で体育館裏に集合、ちょっと先生が教育的指導するから」
 やたらハッスルしているかくしゃくたる老人がやってきた。そして、ソラは呼び出しを食らった。やはり、試験でソラがかつらを吹っ飛ばしてしまったのを根に持っているのだろうか。

「そんじゃま、教頭先生これからはわしそこそこ頑張るけど、沈みゆく泥船に乗った気持ちで応援よろしくのう。なんせ最近までわし、隠居していたよわよわな老人じゃし。老体にはちとこらえるのう」
「はい、ヤト先生、今回はお力添えいただきありがとうございます。大船と信じております。皆さんもなるべく、先生のためにお手伝いお願いしますね」
 どこがよわよわなのやら、はきはきしている先生である。色々と大人の事情があって、ヤト先生は隠居していたところ呼び出されてしまったようだ。白岩先生の件で、先生方への審査が厳しくなってしまったとばっちりを受けたのだ。特に王族のいる藤組の扱いは難しくなってしまったので、新任の先生の選出が難しかった。

 教頭先生はそんなヤト先生の様子を最後にちらっと一瞥すると、職員室に戻っていった。

「気を取り直してじゃなー、ええと、今月は音楽祭があるそうじゃな。クラスでも全員で合唱せにゃならんのじゃが、伴奏と指揮者決めは面倒じゃわい…エリヤと小僧でええじゃろ、課題曲は…秋のイルカ船で!」
「「えっ!」」
「何じゃ文句あんのか? あー、腰が痛くなってきたのーう、もうホームルーム終わりたいのーう」
 エリヤとソラは急な指名に驚いた。面倒になったヤト先生は少々押しが強い。全然腰が痛そうには見えない。
 
 こうして、音楽祭の課題曲と伴奏と指揮者がサクッと決まった。
「エリヤってピアノ弾けたんだ」
「たしなみ程度には…。ソラこそ、指揮なんてできたのか…」
「棒振るだけなら…あっ、指揮棒は木刀でもいいかな…あー、そうですかぁ…ダメですか…」
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