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制服管理課のドルマ
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マティアスの制服の繕いは、わずか2日で見事な仕上がりで戻ってきた。
これでお前も一人前だな、と他の兵士達からよく分からない激励を受けたマティアスが、修理された制服を受け取ってから、数日後の事だ。
今日、部隊は最近谷間に出没する魚魔獣の駆除を行っている。
魚魔獣は一般的にはそう危険ではないが、子供や老人が湖にひきこまれては大事になるので、定期的に駆除を行う。
3人も協力して共に一匹の駆除に取り掛かっていたのだが、一匹の魚魔獣が水の攻撃を放った際に、水の角度が少しだけそれて、ユールもカイルもびしょ濡れになったというのに、マティアスだけが水をかぶらなかったのだ。
「まただ。私だけ、水をかぶらなかった」
マティアスは呆然と、水を被ってびしょ濡れの己の友人達と、全く乾いたままの自分を前に、立ち尽くしていた。
(一体なぜだ。だがこれで少なくとも5回目だ)
マティアスがパンツの膝を大穴をドルマに繕ってもらってから、常に3人で寝食行動を共にしているのもかかわらず、明らかにマティアスの様子がおかしいのだ。
大型鳥魔獣が襲ってきた時も、マティアスだけは無事で、両隣にいたユールとカイルだけが足を引っ掛けらそうになるし、剣の訓練の際も、相手が叩きつけてきた剣が目の前でちょっとだけ距離が足らずにうまく逃げ仰せたり、なんだか本当にちょっとだけ、だが明らかに調子がいいのだ。
「言っただろう、ドルマちゃんに繕ってもらったらやっとここでは一人前だって。ドルマちゃんが繕った制服を着ると、なんかちょっとだけ色々上手く行くんだよ。みてみろ俺らの制服」
マティアスと剣の手合わせをしてくれたニマという騎士が、カラカラと笑いながらボロボロに繕われた自分のシャツを見せてくれた。
上手に見えないように繕われているが、なるほどニマが自慢するだけあって、シャツはあちこちすさまじく繕われている。脇から襟から、どこにもかしこにも、繕われた跡があるのだ。
ボタンも上のボタンの一つはよく見ると、少しだけ他のボタンとは違うものがつけられている。
ニマによると、繕われている場所が多ければ多いほど着ている時になんだか心地よく感じるらしく、だれも滅多な事では繕われた古い制服を手放さないというのだ。
「でもな、誰かの為に繕われた服を借りてもしっくり来ないんだよ。本当におかしな話だ」
どうやらニマだけではなく、この部隊の皆がそう感じているらしく、各々自分のためにドルマが繕ってくれた制服を、大切に大切に、だが穴をしょっちゅう開けながら着ているのだ。
「・・あのドルマという娘には、何か不思議な力でもあるというのですか?」
ニマはマティアスの質問にうーん、と少し考えて、そして笑って言った。
「まあ、あんな臆病で、あんなに可愛い子が自分のために健気に服を繕ってくれるっていうだけでテンション上がるから、そういう事なんじゃないか? ドルマは戦災孤児で、この峠の孤児院出身だし、そんな聖女様みたいな大層な力なんかあるわけないよな」
「へえ、あの子は可愛い子なんだ。いつも衝立の後ろに隠れてるから、俺、まだ顔も見た事ないぜ」
カイルが笑って会話に入ってきた。
「ああ、華奢で、結構可憐な感じの可愛い子だよ。でもあの子は社会不安と対人恐怖があるからな。お前みたいな大男なんかを衝立も挟まずに直接目の前にしたら、きっと失神してしまうよ」
カイルは、少し失礼な形でハンザから制服修繕部の部屋を追い出された事を思い出した。
おそらくあの衝立の奥にいた怖がりの女の子を、自分の存在が萎縮させてしまっていたのだろうとようやく思い至る。
「俺らの誰も、あの子と直接しゃべった事もないし、たまに外で見かけてもドルマちゃんを怯えさせると悪いから、俺らがドルマちゃんが通りすぎるまで隠れてるんだ」
他の兵士も言った。
「若い娘だというのに、それは気の毒だな。一体何があったんだ?」
ユールの疑問に、ダンダップがそっと答えた。
「ユール、ここは戦場だ。みんな多かれ少なかれ、何かしら心に傷を抱えている。ドルマの傷の原因は誰も知らないし、聞かない事にしているんだ。ただ大事なのは、ドルマには心に傷があって、そして大切なこの第6要塞の仲間だっていう事だ」
他の騎士たちもダンダップの言葉にうんうんと大きくうなずく。
騎士の一人が声を上げた。
「それにしても洗濯上手で繕い物上手なんて、なんだかドルマちゃん若いのに、まるでお母さんみたいだな、あんなに小さくて可愛いのに」
騎士の発言に隊は一気に笑いの渦に包まれた。
「ははは、本人は対人恐怖でそれどころじゃなさそうだけど、本当にその通りなんだよな、ドルマはきっといいお母さんになる。お母さん、お母さんといえば・・」
どうやら一生懸命「お母さんダジャレ」を考えているらしい、難しい顔をしたダンダップの隣で、マティアスは兵の一人から、聞き捨てならない一言を聞いてしまっていた。
「ドルマちゃん、笑ったらえくぼが可愛いんだよな。ああ、あんなに可愛いのに、あのえくぼが見られるのはこの要塞ではハンザだけなんて、本当にもったいないよな」
これでお前も一人前だな、と他の兵士達からよく分からない激励を受けたマティアスが、修理された制服を受け取ってから、数日後の事だ。
今日、部隊は最近谷間に出没する魚魔獣の駆除を行っている。
魚魔獣は一般的にはそう危険ではないが、子供や老人が湖にひきこまれては大事になるので、定期的に駆除を行う。
3人も協力して共に一匹の駆除に取り掛かっていたのだが、一匹の魚魔獣が水の攻撃を放った際に、水の角度が少しだけそれて、ユールもカイルもびしょ濡れになったというのに、マティアスだけが水をかぶらなかったのだ。
「まただ。私だけ、水をかぶらなかった」
マティアスは呆然と、水を被ってびしょ濡れの己の友人達と、全く乾いたままの自分を前に、立ち尽くしていた。
(一体なぜだ。だがこれで少なくとも5回目だ)
マティアスがパンツの膝を大穴をドルマに繕ってもらってから、常に3人で寝食行動を共にしているのもかかわらず、明らかにマティアスの様子がおかしいのだ。
大型鳥魔獣が襲ってきた時も、マティアスだけは無事で、両隣にいたユールとカイルだけが足を引っ掛けらそうになるし、剣の訓練の際も、相手が叩きつけてきた剣が目の前でちょっとだけ距離が足らずにうまく逃げ仰せたり、なんだか本当にちょっとだけ、だが明らかに調子がいいのだ。
「言っただろう、ドルマちゃんに繕ってもらったらやっとここでは一人前だって。ドルマちゃんが繕った制服を着ると、なんかちょっとだけ色々上手く行くんだよ。みてみろ俺らの制服」
マティアスと剣の手合わせをしてくれたニマという騎士が、カラカラと笑いながらボロボロに繕われた自分のシャツを見せてくれた。
上手に見えないように繕われているが、なるほどニマが自慢するだけあって、シャツはあちこちすさまじく繕われている。脇から襟から、どこにもかしこにも、繕われた跡があるのだ。
ボタンも上のボタンの一つはよく見ると、少しだけ他のボタンとは違うものがつけられている。
ニマによると、繕われている場所が多ければ多いほど着ている時になんだか心地よく感じるらしく、だれも滅多な事では繕われた古い制服を手放さないというのだ。
「でもな、誰かの為に繕われた服を借りてもしっくり来ないんだよ。本当におかしな話だ」
どうやらニマだけではなく、この部隊の皆がそう感じているらしく、各々自分のためにドルマが繕ってくれた制服を、大切に大切に、だが穴をしょっちゅう開けながら着ているのだ。
「・・あのドルマという娘には、何か不思議な力でもあるというのですか?」
ニマはマティアスの質問にうーん、と少し考えて、そして笑って言った。
「まあ、あんな臆病で、あんなに可愛い子が自分のために健気に服を繕ってくれるっていうだけでテンション上がるから、そういう事なんじゃないか? ドルマは戦災孤児で、この峠の孤児院出身だし、そんな聖女様みたいな大層な力なんかあるわけないよな」
「へえ、あの子は可愛い子なんだ。いつも衝立の後ろに隠れてるから、俺、まだ顔も見た事ないぜ」
カイルが笑って会話に入ってきた。
「ああ、華奢で、結構可憐な感じの可愛い子だよ。でもあの子は社会不安と対人恐怖があるからな。お前みたいな大男なんかを衝立も挟まずに直接目の前にしたら、きっと失神してしまうよ」
カイルは、少し失礼な形でハンザから制服修繕部の部屋を追い出された事を思い出した。
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「俺らの誰も、あの子と直接しゃべった事もないし、たまに外で見かけてもドルマちゃんを怯えさせると悪いから、俺らがドルマちゃんが通りすぎるまで隠れてるんだ」
他の兵士も言った。
「若い娘だというのに、それは気の毒だな。一体何があったんだ?」
ユールの疑問に、ダンダップがそっと答えた。
「ユール、ここは戦場だ。みんな多かれ少なかれ、何かしら心に傷を抱えている。ドルマの傷の原因は誰も知らないし、聞かない事にしているんだ。ただ大事なのは、ドルマには心に傷があって、そして大切なこの第6要塞の仲間だっていう事だ」
他の騎士たちもダンダップの言葉にうんうんと大きくうなずく。
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どうやら一生懸命「お母さんダジャレ」を考えているらしい、難しい顔をしたダンダップの隣で、マティアスは兵の一人から、聞き捨てならない一言を聞いてしまっていた。
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