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秘密
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(結界までマティアス様に送って頂いたら、後は私一人で大丈夫と言ったのに)
ドルマはこの状況が理解できないでいた。
ドルマは塔の鍵を開けて、マティアスとヴァルクの二人を塔から解放した。
その後は馬車に乗せてもらって、一人で結界の綻びを繋いで、その後は魔の森の穴を、一人で繕うつもりでいたのだ。
魔獣たちは本能的にドルマを恐れて、ドルマに近づく事はない。
まだ幼児だったドルマが、スタンピートの焼け野原を一人で彷徨っていたのに無事だったのには、そんな訳があるのだ。
そう、説明したのに。
(私は一人で安全だから、と言ったのに)
ドルマはマティアスの胸にしっかり抱かれて、この塔に連れてこられた時と同じ、目隠しの馬車に乗っていた。
「あんなあドルマちゃん、ここでドルマちゃんを一人で行かせたら、こんどこそ俺ハンザに一生口もきいてもらえなくなる。それに、俺はこの状況で、ドルマちゃんに魔獣が襲ってくる危険はないからって、女の子を一人で結界に行かせるほど薄情な男だとおもわれてるのかよ。ショックだよ・・、ちぇ、ドルマちゃんは友達甲斐がないな。俺だってドルマちゃんを心配したっていいだろう」
ブツブツとドルマの馬車の横を、大きな黒い馬で護衛するのはカイルだ。
ドルマは何も言っていないし、メモも馬車から出していない。だが、カイルは馬車の中のドルマの考えている事などお見通しとばかりに、ブツブツと馬車の隣で文句を言い続けているのだ。
(友達・・)
こんな恐ろしい力を持つドルマを、この大きな体のお人よしの青年は「友達」と呼んだ。
ドルマは胸に込み上げてくる思いで一杯になって、マティアスの胸に顔をうずめた。
「それで、ユールとレナはなんで付いて来たんだ? 早く避難した方がいい」
マティアスは、ドルマのつむじに愛おしそうに口づけを落とすと、そう馬車の外に呼び掛けた。
すぐに馬で馬車の後ろをついてきていたレナの声が返ってくる。
「あのねえマティアス様、私だってドルマの友達だからじゃない!・・というのは理由の半分で、実はねえ、もう半分はどうやって綻びを繋ぐのか見てみたいのよね。あの塔の鍵は、とんでもない高度な魔術でつなげていたのよ。魔法伯家の人間なら、メンダーだろうが対人恐怖だろうが、そんな魔術を解いた人間のワザを実際にこの目で見たいのよ。もう体がうずうずしてさあ・・」
ユールが続けた。
「姉さんは魔術狂いだからね。魔法泊家の編み出した魔術の最高峰である魔術の、あんな見事な解呪を見てしまったら、もうしょうがないよ・・俺? 俺は、正直な所、罪滅ぼしだよ。俺はそれが正しい事だと信じて、マティアス様もドルマちゃんも、第六も裏切って、国の安寧を優先してドルマちゃんを拿捕した。仕方がなかったとはいえ、もうあんな辛い思いはしたくないんだよ。ドルマちゃんを何処かに連れてゆくなら、私も最後まで着いて行きたいんだ」
レナが大きなため息をついた。
「そうよね・・あの後マティアス様にも嫌われて、ユールは落ち込んで大変だったんだから。それで、お館さまは?なんでローズ様の所にいないのです? 折角塔から出られたのに」
カイルと逆側で、大きな愛馬に乗って馬車を護衛しているのは、ヴァルクだ。
二人の辺境を誇る戦士の真っ黒な馬に囲まれて、ドルマの馬車はさながら王族の馬車のごとく警備だ。
「レナ、この娘は怖がりなんだ。マティアス一人には任せておけん。うちのドルマなにかあったら大変だ。ローズはあれで、治癒魔法が少し使える。自分の身は自分で何とかできるように、軍属の娘であるローズを娶ったんだ。ローズが向かっていた先も、治療魔法で負傷者の応援しに行く途中だったと知っている。あれは信用に足る女だ。自分の事は自分で守れる」
一見すると冷たい夫の発言だが、この厳しい辺境を統べてきた夫婦の間に、確実に強い絆と信用があっての行動だ。ヴァルクの歩みに迷いはなかった。
はーああ、とわざとらしいため息をついて、マティアスは馬車の中から悪態をついた。
「お前ら、みんなして私の恋路を邪魔して楽しいか! やっとドルマと二人っきりになれたというのに、ぞろぞろと付いてきて・・ここはドルマと私、二人っきりで手をとりあって、国の危機を救うというロマンチックな場面だろう。多少は気を使ったらどうだ」
第六ではドルマともう少しで恋人になりそうな時はユールに邪魔をされ、第一では手紙をレナに阻まれ、やっと塔で恋人になったかと思ったら今度は父親が塔に押しかけて、マティアスの発言はもちろん冗談ではあるし、みなドルマを思っての事であるのは知っているが、やはり恋人としての本音がちらつく。
「マティアス様・・私、みんなに心配してもらえて幸せです」
「可愛いドルマ。全てが終わったら、私は君を一人で独占しておきたいよ。怖くなったら私に言ってくれ、いつでもよろこんで君とまた、一緒にあの塔に閉じこもるよ」
今度は父上抜きでね!と大きな笑顔をマティアスはドルマに見せた。
マティアスの胸に抱かれて、塔から馬車で半日の、結界までの距離。
ドルマはマティアスの胸に抱かれて、人生で一番幸せだった。
(私は一人じゃない・・)
ドルマはこの状況が理解できないでいた。
ドルマは塔の鍵を開けて、マティアスとヴァルクの二人を塔から解放した。
その後は馬車に乗せてもらって、一人で結界の綻びを繋いで、その後は魔の森の穴を、一人で繕うつもりでいたのだ。
魔獣たちは本能的にドルマを恐れて、ドルマに近づく事はない。
まだ幼児だったドルマが、スタンピートの焼け野原を一人で彷徨っていたのに無事だったのには、そんな訳があるのだ。
そう、説明したのに。
(私は一人で安全だから、と言ったのに)
ドルマはマティアスの胸にしっかり抱かれて、この塔に連れてこられた時と同じ、目隠しの馬車に乗っていた。
「あんなあドルマちゃん、ここでドルマちゃんを一人で行かせたら、こんどこそ俺ハンザに一生口もきいてもらえなくなる。それに、俺はこの状況で、ドルマちゃんに魔獣が襲ってくる危険はないからって、女の子を一人で結界に行かせるほど薄情な男だとおもわれてるのかよ。ショックだよ・・、ちぇ、ドルマちゃんは友達甲斐がないな。俺だってドルマちゃんを心配したっていいだろう」
ブツブツとドルマの馬車の横を、大きな黒い馬で護衛するのはカイルだ。
ドルマは何も言っていないし、メモも馬車から出していない。だが、カイルは馬車の中のドルマの考えている事などお見通しとばかりに、ブツブツと馬車の隣で文句を言い続けているのだ。
(友達・・)
こんな恐ろしい力を持つドルマを、この大きな体のお人よしの青年は「友達」と呼んだ。
ドルマは胸に込み上げてくる思いで一杯になって、マティアスの胸に顔をうずめた。
「それで、ユールとレナはなんで付いて来たんだ? 早く避難した方がいい」
マティアスは、ドルマのつむじに愛おしそうに口づけを落とすと、そう馬車の外に呼び掛けた。
すぐに馬で馬車の後ろをついてきていたレナの声が返ってくる。
「あのねえマティアス様、私だってドルマの友達だからじゃない!・・というのは理由の半分で、実はねえ、もう半分はどうやって綻びを繋ぐのか見てみたいのよね。あの塔の鍵は、とんでもない高度な魔術でつなげていたのよ。魔法伯家の人間なら、メンダーだろうが対人恐怖だろうが、そんな魔術を解いた人間のワザを実際にこの目で見たいのよ。もう体がうずうずしてさあ・・」
ユールが続けた。
「姉さんは魔術狂いだからね。魔法泊家の編み出した魔術の最高峰である魔術の、あんな見事な解呪を見てしまったら、もうしょうがないよ・・俺? 俺は、正直な所、罪滅ぼしだよ。俺はそれが正しい事だと信じて、マティアス様もドルマちゃんも、第六も裏切って、国の安寧を優先してドルマちゃんを拿捕した。仕方がなかったとはいえ、もうあんな辛い思いはしたくないんだよ。ドルマちゃんを何処かに連れてゆくなら、私も最後まで着いて行きたいんだ」
レナが大きなため息をついた。
「そうよね・・あの後マティアス様にも嫌われて、ユールは落ち込んで大変だったんだから。それで、お館さまは?なんでローズ様の所にいないのです? 折角塔から出られたのに」
カイルと逆側で、大きな愛馬に乗って馬車を護衛しているのは、ヴァルクだ。
二人の辺境を誇る戦士の真っ黒な馬に囲まれて、ドルマの馬車はさながら王族の馬車のごとく警備だ。
「レナ、この娘は怖がりなんだ。マティアス一人には任せておけん。うちのドルマなにかあったら大変だ。ローズはあれで、治癒魔法が少し使える。自分の身は自分で何とかできるように、軍属の娘であるローズを娶ったんだ。ローズが向かっていた先も、治療魔法で負傷者の応援しに行く途中だったと知っている。あれは信用に足る女だ。自分の事は自分で守れる」
一見すると冷たい夫の発言だが、この厳しい辺境を統べてきた夫婦の間に、確実に強い絆と信用があっての行動だ。ヴァルクの歩みに迷いはなかった。
はーああ、とわざとらしいため息をついて、マティアスは馬車の中から悪態をついた。
「お前ら、みんなして私の恋路を邪魔して楽しいか! やっとドルマと二人っきりになれたというのに、ぞろぞろと付いてきて・・ここはドルマと私、二人っきりで手をとりあって、国の危機を救うというロマンチックな場面だろう。多少は気を使ったらどうだ」
第六ではドルマともう少しで恋人になりそうな時はユールに邪魔をされ、第一では手紙をレナに阻まれ、やっと塔で恋人になったかと思ったら今度は父親が塔に押しかけて、マティアスの発言はもちろん冗談ではあるし、みなドルマを思っての事であるのは知っているが、やはり恋人としての本音がちらつく。
「マティアス様・・私、みんなに心配してもらえて幸せです」
「可愛いドルマ。全てが終わったら、私は君を一人で独占しておきたいよ。怖くなったら私に言ってくれ、いつでもよろこんで君とまた、一緒にあの塔に閉じこもるよ」
今度は父上抜きでね!と大きな笑顔をマティアスはドルマに見せた。
マティアスの胸に抱かれて、塔から馬車で半日の、結界までの距離。
ドルマはマティアスの胸に抱かれて、人生で一番幸せだった。
(私は一人じゃない・・)
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