ニューヨークの物乞い

Moonshine

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秋が終わりになり、冬に近くなる頃、私はほとんど毎日の様に、ピーターと挨拶だけする日々が続いていた。
いくら人見知りの私でも、盲目のピーターとなら、

「おはよう、今日は涼しいね」

くらいの言葉は怖がらずに交わせる様になっていた。

その頃には、私もこの街の物乞い事情に大分詳しくなってたと思う。
冬の寒い日は、凍死者が出ない様に、市の担当が車で、物乞いの人たちを、暖かい施設まで回収してくれるバスが巡回していると聞いて、携帯に番号を登録しておいた。
もう着ないコートを、コートが必要な人たちに渡す寄付にも出す様になった。

繰り返し言うが、ピーターとは、挨拶以外は何も会話も交わさない中だ。

それでも、私の中でピーターと言う人は大切な友人で、それから、彼を取り巻く環境が、少しでも優しいものであると良いと、願う様になってきた。

その週、いつもの人の出入りの激しい東の出入り口は、工事だった。
ピーターは目が不自由なこともあって、すぐに力のある物乞いに、良い場所を横取りされてしまうらしい。

その週は、いつもピーターの前に、他の、いつもは西にいる二人の物乞いが、ぎゃあぎゃあと、彼らのやり方で人々に小銭をねだり、ピーターはその後ろで、静かにいつも通りに座っていた。
ピーターのいつもの透明のコップの中には、いつも見る小銭の、半分も入っていなかった。

私も、ピーターの前にいる二人の男の物乞いに、腕を引かれるのが怖くて、出口を変えてしまった。
彼らはうるさいが、人を害するタイプではないことくらい、この数ヶ月で知っていたけれども、怖いものは怖いのだ。

(今週、ピーターはお金をもらえたのかな。。)
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