ニューヨークの物乞い

Moonshine

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そうこうしているうちに、ギャラリーは繁忙期を迎える。

クリスマスのギフトを求めに、富裕層のお客様がおとづれる。

日本の古美術は、何もかもを持ち尽くした様な、超のつく様な富裕層のギフトに人気だ。
今日も私は、日本車の新車一台分くらいの値段の、「お手頃価格」の屏風を梱包して送り、その日の業務は終了した。

毎日毎日、深夜まで仕事が続く。
滅多にピーターと会える日が少なくなってしまった。

ピーターの指定席も、最近工事の影響で狭くなってしまった東出入口よりも、券売機の近くの方が実入りが良いと思われたのか、他の物乞いが入り浸る様になってしまっていた。

一度、雪の降る日にピーターを見かけた事がある。
場所取りに負けたのか、階段の隅に追い込まれていて、その小さな肩に、雪が積もっていた。
思わず声をかけようとしたら、身なりの良い紳士が、ピーターにそっと、暖かいコーヒーを差し出していた。

(ありがとう。)

私は、今更声をかけられなかったが、自分以外にも、ピーターを気にかけてくれる人がいることが、心から嬉しかった。
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