ニューヨークの物乞い

Moonshine

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クリスマスが近づいてきた。
この国のクリスマスは、本当に素敵だ。
街の至る所がイルミネーションで飾られて、一年で一番、美しい。

例のうるさい二人組の物乞いも、浮かれているらしく、二人してサンタの帽子をかぶってメリークリスマス!ジーザスのお恵みを!と通行人の腕を引っ張って、小銭をねだる。
この時期は人々も、チャリティ精神に溢れているので、このうるさい二人組も、それからピーターも、コップの中身はいつもより重そうだ。

お祭り騒ぎの物乞い二人組を尻目に、ピーターは、いつも通り、静かに白杖と一緒に、階段のはしに座っている。
いつも寒そうにしているので、近くの屋台でマフラーを買って渡してあげようかと思い始めた頃、どこかの若いお兄さんが、ピーターに、自分のしていたマフラーをしゅるりと外して、そのまま渡しているところをみた。
お兄さんは、とてもお洒落な若い大学生くらいの男の子だった。

いつも通り、ピーターは丁寧にお礼を言っていた。

(。。パタゴニアの、お洒落なやつ。)

いらない物や、余っている物、私が与えようとしていた安いものでなくて、今さっきまで自分が使っていた、ちょっとお洒落なマフラーを、目の前のピーターに、スッと譲ってあげたお兄さんは、とても素敵に見えた。

次の日から清潔だけど安っぽい身なりのピーターは、なんだちっとも似合っていない、お洒落なパタゴニアのマフラーをして、駅に現れるようになった。

「おはよう、マフラーよく似合っているわ。」

翌日、いつもの様に1ドル札を握らせて、私はどうしても、ピーターに伝えてあげたかった。

「おはよう僕の友達、ありがとう。あったかいんだ。」

そうやって、ちょっとはにかむピーターは、とても嬉しそうだった。
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