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ほとんどのアメリカ人は、クリスマスの朝はどんな家でも、家族で過ごす。
うるさい二人組の物乞いも、掻き入れ時は昨日までらしく、今日はもう、駅にきていなかった。きっと、二人ともどこかに家族がいるのだろう。
ピーターは、いつもの通り、階段に座っていた。
ピーターにはお母さんと思わしき人がいるので、おそらくクリスマスは、家にいるだろう。
私は、ピーターに何か、プレゼントをしてやりたかった。してやりたかった、と言うとなんだか上からで、嫌なのだが、友達にちょっとしたギフトをあげるくらい、日本でもするではないか。
毎朝の、ピーターとの触れ合いが、私の心を温め続けてきた。
ちょっとだけ、この小さな友情のお礼を示したかった。
そして、何を贈るか、頭をずっと、悩ませていたのだ。
変な方向に頭を悩ませてしまった私は、妙な努力をしてしまい、ホームレスの子供に贈るクリスマスギフトのサイトに登録して、思わず3人ものホームレスの子供のサンタさんになってしまったり、かなり迷走していた。
私は、自分のピーターにしている行いが、かなり偽善的で、自己満足な物であることの自覚があるので、誰にもこのピーターとの小さな友情は、話していなかった。
悩み抜いた私は、一人だけ、私の最大の理解者で、お人好しで、そして現実主義の私の姉に、相談してみたのだ。
「そんなのね、お金が一番だよ!人からもらった物ばかりで生活しているのでしょう、自分で欲しいものあるって。」
現実主義者の姉は、非常に賢明だ。
「でもね、あんまり大きなお金だと、絶対おかしなことになるから、ちょっとだけ、いつもよりちょっとだけ多めにあげなさい。あんたは、気持ちを伝えたいだけなんでしょう?」
姉の言うことも最もだと、私は、ポケットに、5ドルだけ用意して、その日の朝は軽やかな気持ちで、電車に乗り込んだ。
今日が今年の仕事納めだ。しばらくは、ピーターの顔を見ることもない。
(明日開けてね、メリークリスマス!そう言おう。)
ピーターには見えないだろうけれど、ちょっと綺麗な封筒の中に、5ドルを入れて、私は幸せだった。
やがて、いつもの駅について、少し心を弾ませながら、ピーターのいる、券売機近くの階段に、足を急がせた。
。。。私は、その朝私が見たものが、信じられなかった。
ピーターは、まだきっと何が起こっているのか、知らないはずだ。彼がこの光景を見ることができたら、なんて、言うのだろう。
いつもの様に、ピーターは、静かに、白杖を頼りに、寒そうに座っている。
だが、ピータの周りには、プレゼントの山、山。山だった。
大きな赤いリボンをかけられたプレゼント、色とりどりのクッキー、クリスマスの食卓へ、と言うことだろうか、丸焼きの大きなターキー、新品のジャケットが入った、大きな紙袋。
通行人の人々は皆、淡々と、いつも通りに、ちゃりん、と小銭を入れて、メリークリスマス、とだけピーターに告げて、そして、そっとプレゼントを脇において去るのだ。
私はその光景に、涙が止まらなかった。
このとても静かな白杖の青年は、この駅で、とても愛されていたのだ。
私は、何人もの人々が彼にメリークリスマスを告げる列に加わって、そっと、私のプレゼントを彼の手に、握らせた。
「メリークリスマス、素晴らしいクリスマスになります様に。」
ピーターは、いつもの通り、こう言ってくれた。
「メリークリスマス、僕の友達。僕の友達でいてくれてありがとう。」
午後2時には、あの深い皺を顔に刻んだお母さんらしい人が、迎えにくるだろう。
こんなにたくさんのプレゼントを目にしたら、お母さんはどれだけ驚くだろう。
到底彼女一人では持てないから、誰か手伝ってくれるといいけれど。
そして、お母さんの口から、どれだけ静かなピーターが、この駅で、愛されているのか知るのだろうか。
うるさい二人組の物乞いも、掻き入れ時は昨日までらしく、今日はもう、駅にきていなかった。きっと、二人ともどこかに家族がいるのだろう。
ピーターは、いつもの通り、階段に座っていた。
ピーターにはお母さんと思わしき人がいるので、おそらくクリスマスは、家にいるだろう。
私は、ピーターに何か、プレゼントをしてやりたかった。してやりたかった、と言うとなんだか上からで、嫌なのだが、友達にちょっとしたギフトをあげるくらい、日本でもするではないか。
毎朝の、ピーターとの触れ合いが、私の心を温め続けてきた。
ちょっとだけ、この小さな友情のお礼を示したかった。
そして、何を贈るか、頭をずっと、悩ませていたのだ。
変な方向に頭を悩ませてしまった私は、妙な努力をしてしまい、ホームレスの子供に贈るクリスマスギフトのサイトに登録して、思わず3人ものホームレスの子供のサンタさんになってしまったり、かなり迷走していた。
私は、自分のピーターにしている行いが、かなり偽善的で、自己満足な物であることの自覚があるので、誰にもこのピーターとの小さな友情は、話していなかった。
悩み抜いた私は、一人だけ、私の最大の理解者で、お人好しで、そして現実主義の私の姉に、相談してみたのだ。
「そんなのね、お金が一番だよ!人からもらった物ばかりで生活しているのでしょう、自分で欲しいものあるって。」
現実主義者の姉は、非常に賢明だ。
「でもね、あんまり大きなお金だと、絶対おかしなことになるから、ちょっとだけ、いつもよりちょっとだけ多めにあげなさい。あんたは、気持ちを伝えたいだけなんでしょう?」
姉の言うことも最もだと、私は、ポケットに、5ドルだけ用意して、その日の朝は軽やかな気持ちで、電車に乗り込んだ。
今日が今年の仕事納めだ。しばらくは、ピーターの顔を見ることもない。
(明日開けてね、メリークリスマス!そう言おう。)
ピーターには見えないだろうけれど、ちょっと綺麗な封筒の中に、5ドルを入れて、私は幸せだった。
やがて、いつもの駅について、少し心を弾ませながら、ピーターのいる、券売機近くの階段に、足を急がせた。
。。。私は、その朝私が見たものが、信じられなかった。
ピーターは、まだきっと何が起こっているのか、知らないはずだ。彼がこの光景を見ることができたら、なんて、言うのだろう。
いつもの様に、ピーターは、静かに、白杖を頼りに、寒そうに座っている。
だが、ピータの周りには、プレゼントの山、山。山だった。
大きな赤いリボンをかけられたプレゼント、色とりどりのクッキー、クリスマスの食卓へ、と言うことだろうか、丸焼きの大きなターキー、新品のジャケットが入った、大きな紙袋。
通行人の人々は皆、淡々と、いつも通りに、ちゃりん、と小銭を入れて、メリークリスマス、とだけピーターに告げて、そして、そっとプレゼントを脇において去るのだ。
私はその光景に、涙が止まらなかった。
このとても静かな白杖の青年は、この駅で、とても愛されていたのだ。
私は、何人もの人々が彼にメリークリスマスを告げる列に加わって、そっと、私のプレゼントを彼の手に、握らせた。
「メリークリスマス、素晴らしいクリスマスになります様に。」
ピーターは、いつもの通り、こう言ってくれた。
「メリークリスマス、僕の友達。僕の友達でいてくれてありがとう。」
午後2時には、あの深い皺を顔に刻んだお母さんらしい人が、迎えにくるだろう。
こんなにたくさんのプレゼントを目にしたら、お母さんはどれだけ驚くだろう。
到底彼女一人では持てないから、誰か手伝ってくれるといいけれど。
そして、お母さんの口から、どれだけ静かなピーターが、この駅で、愛されているのか知るのだろうか。
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