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パワハラ男には、言い分があるのだそうだ
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しおりを挟む早起きは三文の得。
これはミシェルのいつも正しい叔母さんだけじゃなく、おばさんの夫のおじさんも、田舎の人はいつも、そんな事をいっていたっけ。
ミシェルの元いた世界の田舎の人はそういって、やたら早起きで、朝から体操までやってのけて、なにがそんなに楽しいのかと夜型人間の見本のようなミシェルは思っていたのだが、やはり皆が口を揃えて言う事というもののは、なにかしら、理由があるもんだ。
ちょっと田舎の人たちの言う事をバカにしていたきらいのあるミシェルは、反省しきりだ。
(三文どころか・・大儲けじゃん私・・うしししし)
ミシェルは笑いが止まらない。
気が向いて、ちょっとバードウォッチングにでもいこうかな、と普段は太陽が高くなってからじゃないと起きてこないミシェルが、誰よりも早起きして教えてもらったアケロン川のほとりまで、今日は一人で来ている。
こんな早朝から鳥なんか見に来ている物好きなど、誰もいないだろうと思っていたので、本日のミシェルの装いは、適当な服を適当に引っ掛けてきただけ、髪の毛も適当に後ろに引っ詰めただけどいう、実にみっともないものだ。
カロンに作ってもらった朝ごはん用のサンドイッチを咥えて、ぼーっと、日の出前から、鳥のお出ましをまって、アケロン川を眺めていた。
やがて、異世界の日が昇る。
カロン曰く、日が昇るその瞬間に、一斉に鳥たちが活動を始めるとか、
アケロン川を寝床としているその渡り鳥たちは、日が昇るそのタイミングで一気に空へと羽ばたいて、それはそれは美しいらしい。
「ミシェル、まるで沢山の緑の宝石を、一斉に空に放ったみたいに美しいんだよ、本当だよ!」
そうカロンが興奮気味に言っていたが、まあこのかわゆい子はちょっと鳥が空飛ぶところを見ても、そう感じるのか、そうかそうかと、カロンのかわゆさにほくほくしてしまい、何を言っていたかそんなに気にしてなかったのだが。
(さすが異世界・・!)
ミシェルは咥えていたサンドイッチを思わす落っことしそうにるほど、小鳥たちは美しかった。
小鳥達はとても小さく美しい緑色で、エメラルドで作ったピカピカとした妖精のごとく小鳥たちが、一斉に空に放たれる様子は、大げさでもなんでもなく、確かに本当に、緑の宝石を一杯に空に放ったかのようだった。
小鳥たちは、ハチドリに少し似ているが、もっと儚く、ガラス細工のように繊細で。
(なんて綺麗なんだろう・・)
ミシェルは夢中で小鳥を眺めていた。
異世界に来てからの一番の感動だ。
明け方の空には、まだ双子の月が浮かんでおり、その反対側に大きな太陽が昇る。
アケロン川の雄大な川面は、朝日を受けて光り輝き、光の輝きを縫うように、緑の宝石のごとき小鳥たちが朝日を浴びて、月を背に羽ばたく。
この景色は、決して元の世界では見られない美しい景色だ。
どのくらいの時間が経っただろうか。ミシェルはこの感動的な景色をその網膜に焼き付けるべく、ただひたすらに、心を無にしていたその頃。
不意に後ろから、見知らぬ声がした。
「美しいお嬢さん。小鳥がお好きなのですね」
折角うっとりと、心ゆくまで感動の景色を担当していた所を、実に野暮ではないか。
(ち、誰だよ折角の瞬間を邪魔すんのは)
ミシェルは、折角の感動の時間の邪魔をされて、非常に不機嫌に、イライラと声の主の方向に振り返った。
そこには。
「はい!!私、小鳥とっても大好きです!!」
ミシェルおもわず脊髄反射で、ミスコンの講師に教えてもらった最高の笑顔を、最高の角度で提供しちゃうほど、ものすごく、ものすごくいい男がたっていたのだ。
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