異世界で王子様の代わりを務めるだけの簡単なお仕事です

豆野 豆助

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4:弟(?)を懐柔するだけの簡単なお仕事です[1]

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翌日、レイヴァンとの約束の時間になる。子供相手に何かを教えるような経験は皆無だが準備はそれなりに整えてあるため、なんとかなるはず。





「失礼します。兄上」





「ああ、よく来た」





昨日と同じく椅子を勧めると、レイヴァンは大人しく座った。





「早速始めるぞ。まずは基礎からだ。魔法を使う際に最も重要なのはイメージだ。お前の場合、魔法の適正に不満があるようだから、それをどうやって補うかを考えないといけない」





「はい!」





それからしばらくレイヴァンへの講義を続けた。レイヴァンの適性属性は火、水、風、土の4種類。対してフォルティアは公言こそしていないものの現在周知されている全属性に適正を持っている。この差は大きいが教育次第でどうなるのか見ものだ。





「―――よし、こんなところか。次は軽い実践訓練だが、とりあえず魔力操作はどれくらいできる?ここでやって見せてみろ」





「分かりました。……でも、ほんとにここでいいのですか?正直上手く制御できる気が……」





レイヴァンは不安げに言った。それもそのはず、ここはフォルティアの部屋だ。いくら弟とはいえ、この部屋のものを壊すようなことがあったら大変なことになると考えているのは目に見えている。





「問題ない、やってみろ」





しかし、フォルティアは大丈夫だと言った。レイヴァンは意を決した様子で両手を前に出し、集中し始める。





「万物を統べ創世せめる火の精よ。矮小この身に御身の畏怖と狂想を示さん」





すると徐々にレイヴァンの手の前に小さな火の玉が現れた。大きさは手のひらより少し小さい程度で、色は赤色をしている。レイヴァンは驚いた表情を見せた。短時間の授業形式とはいえ、どうやら効果は覿面だったらしい。







フォルティアが魔法を発動させる際に必要なのは、体内にある魔力を放出することと、それをイメージすること。

詠唱の必要性についてそれなりに考えていたがどうにも合理性に欠けると思ってしまうのは自分がこの世界の出身では無いからだろうか。







詠唱魔法の上位として魔法陣を使った上位魔法が存在する。魔法陣が有るのと無いのとでは、魔法自体の質に雲泥の差が生まれる。これは魔法陣という媒体を使うことによって魔力を効率良く変換することができ、消費される魔力も大幅に削減することができるためだ__と考えられているらしい。







フォルティアの実力であれば魔法陣を扱うことも容易だが、残念ながら興味はない。無詠唱を極めたほうがよほど生産性がいいからだ。







そして、レイヴァンにはゆくゆくは無詠唱魔法の習得も視野に入れてもらいたいと思っている。そのためには多少なりとも時間が必要だ。自分が王城を出るまでには間に合いそうに無いが、そうなったらそうなったで、今は魔力操作だけ覚えさせればいいだろう。





そう結論を出したところで、ふと思い出す。





「そうだ、レイヴァン。お前の得意な属性はなんだ?」





「えっと、……火です」





「なるほど」



レイヴァンは火属性が得意だったのか。それは都合が良い。







「よし、それじゃあ次のステップに進むぞ。第一に魔法は属性なんてものよりもどう使うかが大切になる。もっと言えばどれだけ応用しその能力を最大限に活かせるかが重要になってくるんだ」





「えっと……つまり……?」





レイヴァンはいまいちピンときていないようだ。無理もない、これはこの国の通説とはかけ離れた考え方なのだから。





「まぁ、見ていろ。――――万物を統べ創世せめる火の精よ。矮小この身に御身の畏怖と狂想を示さん。」





フォルティアは詠唱句を適当に諳んじて掌の上に火の玉を作り出す。そこに軽く風魔法を組み合わせてやると炎は一気に天井近くまで立ち上がった。





「わっ!?」





レイヴァンは驚きの声を上げた。そんなレイヴァンを尻目にフォルティアはさらに火を大きくしてみせる。





「これくらいは簡単にできるようになるさ」





「そ、そうなんですか……すごい……」





「ああ。だが、今のは初歩の初歩に過ぎない。お前の適性属性なら余裕で再現できるぞ」





「……はい!頑張ります!」





キラキラとした尊敬の視線で見つめられてしまえば、その姿はもうかわいいとしか思えない。実の弟ではないのに思わず頭を撫でてしまう。







それから数十分間レイヴァンへの指導を続けた後、お開きにした。予定よりも2倍ほどの時間を費やしてしまったが、収穫は大きかったし、まぁいいだろう。















レイヴァンが部屋を出ていった後、ずっと後ろに控えていたローランに声をかける。レイヴァンがいる間は何を言うでもなくただ静かに控えていただけだったため、危うく居ることさえ忘れそうになっていたとは流石に言えない。





「……どう思う?あの子の才能」





「そうですね……。私から見れば十分すぎる才能を持っているように思えます。剣技も大変優秀であると聞き及んでおりますので、その才能は計り知れないかと」





「だろうな、私も同じ意見だ」





「……しかし、あそこまで急成長をされるとは。殿下の指南の賜物でしょうか……」





「いいや、あの子の才能だろう。俺はきっかけを与えただけだ」





フォルティアの言葉にローランは一瞬目を丸くしたがすぐに平静を取り戻した。





「では、その才能を伸ばすためにもしばらくはこのまま見守り続けるということでよろしいですか?」





「ああ、それで頼む」



実際のところ、レイヴァンに魔法を教えられる機会は多くとも2、3回程度しか残っていない。建国祭に合わせてこの城を出るという計画を捨てることは不可能だ。だからこそ、できる範囲で教えてあげたいとは思っていた。





















思ってはいたが…………





















「兄上!おはよう御座います。これからお食事ですか?ぜひ、ご一緒させてください」



朝食を取るために部屋を出ると、レイヴァンが部屋の扉の前に立っていた。昨日あれから夜遅くまで魔法の練習をしていたのだろう。目の下にうっすらとクマができているのに、一体どこから出てくるのかと聞きたくなるくらい元気溌剌とした笑顔を向けられ、思わず苦笑してしまう。





「おはよう、レイヴァン。随分と早いな」





「はい、早く兄上に会いたくって」





レイヴァンは照れくさそうに言った。会いたいと言われて悪い気はしないのだが、何故急にそんなことを言い始めたのかはよく分からない。





「……それは光栄だな。分かった、一緒に行こうか」





「はい!」





レイヴァンの従者を一人とローランのみを残して残りの付き人を下がらせると、レイヴァンと並んで歩きながら食堂へ向かう。



「……今日はやけに機嫌が良さそうだが何かあったか?」





「いえ、特に何もありませんが?」





レイヴァンは特に隠し事をしている様子も無かったが、心当たりも無いようだ。ならば、どうしてこんなにも懐かれているのだろうか。昨日の一件だけでここまで懐いているのだとしたら、それは少しチョロ過ぎないかと心配になる。





「まぁ、良いことならいいんだが」

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2022年 10月02日 23時08分
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