お仕置きはほどほどに

リツカ

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 ユズリハのお披露目パーティーに招かれたルシアンに連れられ、ローランはレーン大公家の屋敷へとやってきた。まあ、予想通りの展開だ。
 広々とした大広間にはすでに多くの貴族たちが集まっている。音楽隊の演奏に合わせてダンスを踊る者、ワインや食事に舌鼓を打ちながら談笑する者──皆思い思いにパーティーを楽しんでいるようだ。
 そんな中、ローランはあくびを噛み殺しながら、大人たちと談笑するルシアンの隣でにこやかに微笑んでいた。そろそろ頬がつりそうだ。

「ローラン!」

 ちょうどそんなとき、ひどくうれしそうな声で名前を呼ばれた。
 ローランが振り返ると、綺麗にドレスアップしたユズリハがこちらに駆け寄ってきている。白と青を基調とした愛らしいドレスがユズリハによく似合っていた。

「ユズリハ」
「来てくれてありがとう」
「こちらこそ、お招きありがとう。……そのドレス、すごく似合ってる」
「ふふ、ありがとう」

 ユズリハは少し照れくさそうに微笑んだ。その愛らしい笑みも相まって、今日の彼女は誰よりも輝いて見える。
 ローランが見惚れていると、背後から穏やかな声がかけられた。

「ローラン、こちらのお嬢さんは?」
「あ……彼女が異世界からやってきた、ユズリハ・レーン大公女です。ユズリハ、この方が俺の婚約者のルシアン・モンクレア公爵だ」
「は、初めまして。ユズリハ・レーンです」
「ああ、君がこのパーティーの主役のユズリハ嬢か。初めまして、ローランの婚約者のルシアン・モンクレアだ。君の話は聞いているよ。ローランのクラスメイトで、仲良くしてくれているらしいね」

 ルシアンはユズリハの手を取り、その華奢な手の甲に恭しく口付けた。
 すると、ユズリハの頬がポッと赤く色付く。彼女はあわあわしながら、早口で言った。

「わ、私の方こそ、ローランにはお世話になっていて……ねっ、ローラン?」
「……え? あ、ああ……うん……ははっ……」

 心ここに在らずといった様子で、ローランは空笑いをする。
 今、ローランの頭の中は恐ろしい疑問でいっぱいで、それどころではなかったのだ。

 ──……なんで、俺とユズリハがクラスメイトで、しかも仲良くしてることを知ってるんだ、このひとは……

 ローランはおずおずと横目でルシアンを見上げた。
 さもローランからユズリハの話を聞いているかのような口振りだったが、ローランはユズリハと友人になったことをルシアンに話したことなど一度もない。というか、あの約束をすっぽかしたとき以来、ルシアンに会ってすらいないのだ。
 こんな短い間に起こったことすら、なぜかルシアンに把握されている……ローランの背筋がぶるりと震えた。

「ローラン?」
「……ああ、大丈夫……そうだ、ユズリハ、ルシアン様と踊ったら?」

 少しルシアンと距離を取りたいが故の、ちょっとした思い付きだった。
 ユズリハは「えっ!?」と声をあげ、狼狽えたように首を横に振る。

「そ、そんな、私なんかが……」
「今日の主役は君だろ? ルシアン様はダンスが上手いから、きっと良い経験になるよ。ルシアン様も構いませんよね?」

 ローランがルシアンを振り返ると、ルシアンはにこやかに笑ったままローランを見下ろしていた。弧を描いた青い瞳が、じとりと湿り気を帯びている気がする。
 ローランはそれに気付かないふりをして、とぼけたように小首を傾げた。

「ルシアン様?」
「……ああ、もちろん。ではユズリハ嬢、一曲お付き合いよろしいですか?」
「えっ、あ、はいっ!」

 ルシアンから差し出された手に、ユズリハはおずおずと手を伸ばした。大きな手がほっそりとした白い手を取り、ユズリハはルシアンにエスコートされながらダンスホールの方へと歩いて行く。
 それを見送りながら、ローランはホッと肩の力を抜いた。
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