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屋敷に着いたローランたちを、緊張した面持ちのユズリハが出迎えてくれた。淡いピンクのワンピースドレスが、可憐なユズリハによく似合っている。
彼女に連れられて向かった庭園にて、お茶会はスタートした。最初はぎこちない様子だったユズリハの緊張も次第にほぐれ、和やかな雰囲気で会話が弾む。
「よく手入れされた美しい庭だな」
「ありがとうございます。庭師の方々に伝えたら、きっと喜ぶと思います」
レーン大公家の美しい庭園には、秋の花々が咲き誇っていた。準備されていたテーブルにも色とりどりの花が飾り付けられており、このお茶会への力の入れようが感じられる。
──好きかどうかわからないとか言ってたけど、絶対好きだよな。
ローランは胡乱な目でユズリハを見つめながら、温かい紅茶に口を付けた。
ルシアンと楽しそうに談笑するユズリハは楽しそうで、その頬はバラ色に色付いている。その顔は誰がどう見ても、恋する乙女そのものだ。
一方ルシアンも、興味津々といった様子でユズリハの話に耳を傾けている……が、ルシアンはユズリハ本人よりも異世界のことが気になっているようだった。
「──ほう、そちらの世界ではかなり文明が発展しているんだな……新事業のヒントになるかもしれないから、もっと話を聞かせてもらえたらうれしい」
「は、はいっ!」
ふたりは『くるま』だとか『てれび』だとか、そんなよくわからない話を嬉々としている。ローランにはちんぷんかんぷんだが、ユズリハの持つ異世界の情報がルシアンにはひどく物めずらしいようだ。
「ああ、その『くるま』で『どらいぶ』というのは楽しそうでいいな。ローラン、君もそう思うだろ?」
「えっ……あ、はい、そうですね」
突然話を振られたローランは、取り繕うようににこりと笑った。
実際はルシアンの言葉の意味なんてちっともわかっていなかったが、恋のキューピッドに徹するつもりのローランには関係ない。
笑顔のまま片眉をあげたルシアンが口を開く前に、ローランはスッと椅子から立ち上がった。
「すまない、お手洗いを借りたいんだが」
「じゃあ、私が案内を……」
「いや、それは大丈夫。メイドに案内してもらうから」
「そう……?」
ローランが気を利かせたことに気付いていないのか、ユズリハは不思議そうな顔をしていた。小首を傾げる仕草がこれまた愛らしい。
ローランはレーン大公家のメイドに連れられて、屋敷内のレストルームへと向かった。広々としたレストルームには大きな鏡のある手洗い場があり、ローランはその縁に手をついて深く息を吐く。
──しばらくここで時間を潰そう。
ローランはふたりを繋ぐためのパイプに過ぎない。その役目を終えたあとは、ルシアンとユズリハの仲を深めるため早々に席を外すに限る。
そうして、ローランはレストルームの中を歩き回ったり、休憩用のソファに座ったり、鏡を覗き込んで髪を整えたり……とにかくのんびりと時間を潰した。
今頃、ルシアンとユズリハはふたりきりの逢瀬を楽しんでいる頃だろうか。案外、話が急ピッチで進んで、ローランが戻った途端にルシアンから婚約破棄を言い渡されたりするかもしれない。
「そうなったら最高だ……」
「──どうなったら最高なんだ?」
突如かけられた見知った声に、ローランの体はビクッと大きく跳ねた。
ローランはおそるおそる声のした方を振り返り、その姿を認めた瞬間に頬を引きつらせる。
「る、ルシアン様……」
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