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番外編
ひめごとびより 19日目
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それから、アーネストを味方に付けた俺は、父上に学園に復帰できるよう直談判した。
当然全員にめちゃくちゃ反対されたけど、最終的には色々と条件をつけられつつも登校再開できることになって、俺は再び学園に返り咲くことになったんだ。
学園では、俺がアーネストの子を身籠っていることが正式に発表され、俺に万一のことがないよう配慮するよう全生徒に『お願い』という形で周知させることになった。
あくまでも強制力のない個人の良心に甘えるになってはいるけど、まあ実質命令だよなー。
本気で怪我でもさせたら普通に罰を受けるし、そうでなくても何かあった場合、今はお咎めなしになろうが、卒業後にどんな未来が待っているかはお察しだ。
そんなさわらぬ神になんとやらな爆弾状態で学園に戻るのは申し訳なくはあったけど、殆どの生徒は俺の復帰を喜んでくれて、妊娠のことに関しても祝福してくれた。
衝撃的というか、案の定というか、アーネストはいきなり俺のクラスに無理矢理自分を捻じ込んでいた。
教室まで送ってくれたと思いきや、しれっと俺の隣の席に座って授業受け始めた時は、頭が痛くなったよ。
マリクは爆笑してるし、クラスメイトは然もありなんと頷きながら生暖かい目で見て来るし、俺は恥ずかしくて身を縮めるしかない。
アーネストはべったり俺に張り付きまくり、比喩じゃなく一時たりとも側を離れなかった。
あのなぁ……お前は一応、王太子なんだぞ?守られて生活するはずの立場なんだが??
放課後になり、生徒会で働くアーネストの膝に乗せられながら大人しく仕事ぶりを見ていたら、数人の生徒会役員に泣かれてしまった。ど、どうした?
マリク曰く、淡い恋心を粉砕されたらしい。アーネスト、モテるからな。ごめんな。
「すみません、ほんとにただ居るだけになっちゃって」
俺が謝ると、みんなは首を激しく横に振って、とんでもないと言い募った。
「会長の不機嫌爆弾を制御して下さるだけで、女神様です」
「会長が全部悪いんです」
「レニオール様は、お身体のことだけ考えていてください」
「具合が悪くなったら、無理しないですぐにお休み下さい」
何気に、アーネストの評判が悪くなってないか?
扱いが明らかに雑になってるのを感じる。
アーネスト本人は全く気にせず、むしろ上機嫌で見る見るうちに書類の山を潰していってるんだけどさ。
仕事ができる男は、やっぱりいいよなぁ。
マリクがちょっと尊敬の眼差しでアーネストを見てる俺に気付いて、猫みたいに目を細めてニヤァっと笑う。
そして、口をパクパクさせて、俺に何か言おうとしているのがわかった。
(えーと……そ い つ ほ め ろ……?そいつって、アーネストのことだよな?アーネストを褒めればいいのか?)
マリクとアイコンタクトして意図を確認すると、マリクは力強く頷く。
なんだか分からないけど、マリクが言うならきっと何か意味があるんだろう。やってみるとするか。
「アーネスト、すごいなー。仕事できる男ってカッコいいよなー」
これでいいのか?とマリクをちらりと見ると、マリクは眉を寄せてなんとも言えない表情を浮かべてる。なんで!
「レニたんに褒めてもらうと、めっちゃやる気が沸いてくる!もっと褒めて褒めて!」
マリクの合格点はもらえなかったけど、アーネストは大喜びで手の動きを早めた。ただでさえ高速だったのに、もう目で追えないぐらいの速さになってる。俺は楽しくなって、パチパチ手を叩いた。
すごいぞ、アーネスト。つよいぞ、アーネスト。なんかそういう怪獣みたい。
「お疲れ様です、皆さん。お茶を淹れましたから、休憩しましょう」
暫くすると、シリルがお茶とお菓子を用意してくれて、みんなでワイワイお茶を飲みながらお喋りした。
俺がいない間の学園のこととか、色々と面白い話がたくさん聞ける。
やっぱり、色々反対や不安もあったけど、学校に戻ってきてよかったなぁ。こんな楽しい時間、きっと学園にいる間にしか味わえないと思う。
「そういえばさぁ、僕、卒業したらレニオール付きの側仕えになることになったんだよね」
「ええっ!?ズルイ!僕も一緒にやりたい~!!」
話の流れでマリクが打ち明けると、シリルは羨望の声を上げた。おいおい……。
「いや……シリルはダメでしょ。公爵令息が使用人働きなんて聞いたことないよ」
至極当然のことを言われて、むぅう、とシリルは頬を膨らませて拗ねる。
そういえば、シリルは卒業したらどうするんだろうか。
「シリルは進路って決まってないの?」
「僕はお父様から領地管理を手伝ってほしいって言われてるけど、できれば王都から離れたくないんですよね。宮仕えの道も考えてるんですけど、父上が良い顔しないからなかなか決まらないんです」
なるほど。多分ラートン公爵はシリルを一緒に領地経営してくれるいい人と結婚させるつもりなんだろうな。
俺がずっとアーネストとうまくいってなかったから、ワンチャン狙いで今までフリーだったけど、普通シリルの年で婚約者がいないなんてあり得ない。
シリルの性格的に、官吏になったらバリバリ働いて、暫くは自由に過ごしたがるんじゃないかな。そうなると、結婚もまだ先の話になるだろう。公爵的にはそれが喜ばしくないんだろうなぁ。
「大方お見合いの吊書きが山積みにされてるんじゃないか?」
「わかります?全く、今更そんなこと言われたって困りますよね」
アーネストの指摘に、シリルは実家の見合い話を思い出したのか、鼻息を荒くした。
シリルには可哀想だけど、ラートン公爵の言い分もわからくはないからなぁ。
「シリルは具体的に縁談の何がイヤなわけ?」
当然全員にめちゃくちゃ反対されたけど、最終的には色々と条件をつけられつつも登校再開できることになって、俺は再び学園に返り咲くことになったんだ。
学園では、俺がアーネストの子を身籠っていることが正式に発表され、俺に万一のことがないよう配慮するよう全生徒に『お願い』という形で周知させることになった。
あくまでも強制力のない個人の良心に甘えるになってはいるけど、まあ実質命令だよなー。
本気で怪我でもさせたら普通に罰を受けるし、そうでなくても何かあった場合、今はお咎めなしになろうが、卒業後にどんな未来が待っているかはお察しだ。
そんなさわらぬ神になんとやらな爆弾状態で学園に戻るのは申し訳なくはあったけど、殆どの生徒は俺の復帰を喜んでくれて、妊娠のことに関しても祝福してくれた。
衝撃的というか、案の定というか、アーネストはいきなり俺のクラスに無理矢理自分を捻じ込んでいた。
教室まで送ってくれたと思いきや、しれっと俺の隣の席に座って授業受け始めた時は、頭が痛くなったよ。
マリクは爆笑してるし、クラスメイトは然もありなんと頷きながら生暖かい目で見て来るし、俺は恥ずかしくて身を縮めるしかない。
アーネストはべったり俺に張り付きまくり、比喩じゃなく一時たりとも側を離れなかった。
あのなぁ……お前は一応、王太子なんだぞ?守られて生活するはずの立場なんだが??
放課後になり、生徒会で働くアーネストの膝に乗せられながら大人しく仕事ぶりを見ていたら、数人の生徒会役員に泣かれてしまった。ど、どうした?
マリク曰く、淡い恋心を粉砕されたらしい。アーネスト、モテるからな。ごめんな。
「すみません、ほんとにただ居るだけになっちゃって」
俺が謝ると、みんなは首を激しく横に振って、とんでもないと言い募った。
「会長の不機嫌爆弾を制御して下さるだけで、女神様です」
「会長が全部悪いんです」
「レニオール様は、お身体のことだけ考えていてください」
「具合が悪くなったら、無理しないですぐにお休み下さい」
何気に、アーネストの評判が悪くなってないか?
扱いが明らかに雑になってるのを感じる。
アーネスト本人は全く気にせず、むしろ上機嫌で見る見るうちに書類の山を潰していってるんだけどさ。
仕事ができる男は、やっぱりいいよなぁ。
マリクがちょっと尊敬の眼差しでアーネストを見てる俺に気付いて、猫みたいに目を細めてニヤァっと笑う。
そして、口をパクパクさせて、俺に何か言おうとしているのがわかった。
(えーと……そ い つ ほ め ろ……?そいつって、アーネストのことだよな?アーネストを褒めればいいのか?)
マリクとアイコンタクトして意図を確認すると、マリクは力強く頷く。
なんだか分からないけど、マリクが言うならきっと何か意味があるんだろう。やってみるとするか。
「アーネスト、すごいなー。仕事できる男ってカッコいいよなー」
これでいいのか?とマリクをちらりと見ると、マリクは眉を寄せてなんとも言えない表情を浮かべてる。なんで!
「レニたんに褒めてもらうと、めっちゃやる気が沸いてくる!もっと褒めて褒めて!」
マリクの合格点はもらえなかったけど、アーネストは大喜びで手の動きを早めた。ただでさえ高速だったのに、もう目で追えないぐらいの速さになってる。俺は楽しくなって、パチパチ手を叩いた。
すごいぞ、アーネスト。つよいぞ、アーネスト。なんかそういう怪獣みたい。
「お疲れ様です、皆さん。お茶を淹れましたから、休憩しましょう」
暫くすると、シリルがお茶とお菓子を用意してくれて、みんなでワイワイお茶を飲みながらお喋りした。
俺がいない間の学園のこととか、色々と面白い話がたくさん聞ける。
やっぱり、色々反対や不安もあったけど、学校に戻ってきてよかったなぁ。こんな楽しい時間、きっと学園にいる間にしか味わえないと思う。
「そういえばさぁ、僕、卒業したらレニオール付きの側仕えになることになったんだよね」
「ええっ!?ズルイ!僕も一緒にやりたい~!!」
話の流れでマリクが打ち明けると、シリルは羨望の声を上げた。おいおい……。
「いや……シリルはダメでしょ。公爵令息が使用人働きなんて聞いたことないよ」
至極当然のことを言われて、むぅう、とシリルは頬を膨らませて拗ねる。
そういえば、シリルは卒業したらどうするんだろうか。
「シリルは進路って決まってないの?」
「僕はお父様から領地管理を手伝ってほしいって言われてるけど、できれば王都から離れたくないんですよね。宮仕えの道も考えてるんですけど、父上が良い顔しないからなかなか決まらないんです」
なるほど。多分ラートン公爵はシリルを一緒に領地経営してくれるいい人と結婚させるつもりなんだろうな。
俺がずっとアーネストとうまくいってなかったから、ワンチャン狙いで今までフリーだったけど、普通シリルの年で婚約者がいないなんてあり得ない。
シリルの性格的に、官吏になったらバリバリ働いて、暫くは自由に過ごしたがるんじゃないかな。そうなると、結婚もまだ先の話になるだろう。公爵的にはそれが喜ばしくないんだろうなぁ。
「大方お見合いの吊書きが山積みにされてるんじゃないか?」
「わかります?全く、今更そんなこと言われたって困りますよね」
アーネストの指摘に、シリルは実家の見合い話を思い出したのか、鼻息を荒くした。
シリルには可哀想だけど、ラートン公爵の言い分もわからくはないからなぁ。
「シリルは具体的に縁談の何がイヤなわけ?」
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