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第31話「見た目」
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「……ん」
アンジュが目を覚まして隣のベッドを見ると、そこには壁によりかかって本を読んでいるフローガがいた。
朝、彼がこの部屋で過ごすようになってから、いつも見る光景となっている。
この人はいつ寝ているんだろうと初めは思っていたが、数週間も経つと慣れてくるものだ。
「おはようございます、フローガさん……」
「ああ……起き抜けに悪いが、お前の兄について分かったことがある」
「えっ!?」
その言葉にアンジュは一気に覚醒した。
まさか昨日の今日で話が進むとは思ってもみなかった。
「とは言っても、一つだけ……お前の兄が消える前に街で目撃されていたってことだけだ」
「街で?」
「誰かと一緒にいるのを見たらしいが、それ以上のことは分からない」
「そうなんですか……」
「悪いな、余計な期待させたか」
「いえ、そんなことないです。今まで何も分からなかったんですから、どんなに小さなことでも兄のことが知れたら嬉しいです」
アンジュは小さく首を横に振り、ニコッと笑ってみせた。
確かに行方が分かるものでなく残念に思う気持ちもあるが、兄のことをほんの僅かでも知ることが出来て嬉しいのも本当だ。
「でも、なんで街に……お買い物でしょうか」
「いや、目撃されたのは人目のない路地裏だったらしい。隠れて何かをする必要があったのかもしれない」
「……うーん、それだけだと何も分わからないですね」
「とりあえず捜索は続ける。お前もそうだが、兄も目立つ風貌してるからな」
「私、目立ちますか?」
アンジュは首を傾げた。
人付き合いがないせいで、自分の見た目が周りからどう思われるのか理解していない。
雪の中にいたら溶け込んでしまいそうなほど白い肌や、月明かりを浴びると銀色に輝く白い髪が目立たない訳がない。
双子の兄も顔立ちや身長に違いはあれど、ほぼ同じような見た目をしているのだ。街に行けば嫌でも目に入る。
そんな彼が消えて、学園が全くの騒ぎにならないのは本当に不自然過ぎる。
フローガは彼から特に変わった気配などを感じなかったため全く気にしなかったが、学園内でのイデアはちょっとした有名人だった。
「お前の兄、この学園で雪姫なんて呼ばれてたぞ」
「え、なんですかそれ」
「俺は噂で聞いただけだが、男しかいないこの学園で白くて綺麗なやつがいるとか何とかで、その見た目が雪みたいだから、そう呼ばれてたらしい」
「……確かに私も兄も色が薄い方だとは思ってましたが……」
アンジュは自分の髪を指先で弄りながら、よく分からないという表情を浮かべた。
人の外見を人と比べるようなこともなく、両親と兄の四人で暮らしていたら美的感覚なども普通とズレているのかもしれない。
「……お前は他人と自分のツラを見比べたりはしないのか」
「顔、ですか? 比べるというのは……?」
「……いや、なんでもない。気にするな」
フリード自身も人の外見にこだわりを持たない。ここで何を言っても不毛だろう。
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