42 / 91
闘技大会編
新天地へ
しおりを挟む
「さあさあ!! 力自慢大会を開催中だよ~!!
今のチャンピオンは百戦錬磨のパワーを持つこの男!! アームストロングだ!!
さあさあ、誰かこいつの連勝記録を破ろうって奴はいないのか!?」
と、人込みの中心で客寄せの男が大声叫ぶ。
力自慢大会……簡単に言ってしまえば腕相撲大会である。
今のチャンピオンに勝てば、そこまで蓄積された敗北者達のお金が貰えるという仕組みなのだ。
そして、その男のすぐ横には木製のテーブルと2つの椅子があり、その片方にはチャンピオンであろう、小麦色の肌に、膨れ上がった上腕二頭筋、鋼のような胸板を持つ、恰幅のいい大男が座っている。
その炭鉱マンのような体格を持つ彼は堂々と椅子に座り、不敵な笑みを浮かべていまかいまかと挑戦者を待ち構えていた。
しかし、観衆は集まっているものの、「我こそは!!」という者は現れない。
それもそのはず、彼は先ほど、挑戦者の一人の骨を折り、治療院送りにしているのだ。
さっきまでは気軽に参加していた者達も、痛みに苦しんでいる者を目の前で見てしまえば、自ら同じ運命をたどりたいとは思わず、参加者が途絶えてしまっていたのである。
(そろそろ潮時かねぇー、さすがにあれを見てやりたいって奴もいないだろうし、かぁーもったいねえ、こいつならもっと儲けられたのによう!!
まぁ、仕方ねぇ、切り上げるか……)
売り子の男がそう思って、一声かけて切り上げようとした、その時だった。
「やるやる!! 俺、参加するぞ!!」
そう言いながら人込みをかき分けて一人の男が姿を現す。
しかし、売り子の男はその姿を見て、思わず相手が心配になってしまった。
なるほど、確かに体格はいい方だろう、しかし、このアームストロングとは比べるべくもない、下手をすれば二人目の治療院送りになってしまうかもしれない。
それでも、相手がいい大人であれば売り子の男は躊躇しなかっただろう。
だが、やってきたのはまだ子ども、青年と言えるかどうかといった年ごろの男の子だ。
彼の将来をこんなところで潰してしまうのはどこか申し訳ないような、そんな衝動に駆られ、売り子の男は思わず口を開く。
「キミ……本当にやるのかい?」
「あぁ、もちろん!!」
「でも、もしも負けて怪我をしちゃってもおじさんは責任をとれないぞ?」
「子ども扱いすんなって、大丈夫大丈夫。わかってるよそのくらい!!」
「……そうか、わかった。もう言わないさ。ただ無理はしないようにね。それじゃあ銀貨一枚をそこの袋に入れて椅子に座ってくれ」
「おっけー」
青年はそんな意味のわからない言葉を返すと、銀貨を袋に入れて、椅子に座った。
アームストロングは「いいカモを見つけた」とでもいうかのように笑みを強くする。
それは相手がだれであろうと一切の容赦をしないという彼の意思の表れだった。
「おう、ボウズ、治療院送りになってもこっちは責任もたねぇからな?」
「だから子ども扱いすんなって。大丈夫、心配しなくていいよ、でも―――それはそっちも同じだからな?」
青年の生意気な物言いにアームストロングの頭に青筋が浮かぶ。
「ほぅ……面白いこと言うな、ボウズ。
―――後悔するなよ?」
「あぁそういうのいいから早くやろう、その方がわかりやすい」
二人はそんな会話をかわすと、手を組み、準備する。
青年を除くその場の全員がアームストロングの勝利を疑わない中、
「―――レディー、ゴー!!」
売り子の男により、戦いの幕が切って落とされた。
そして、次の瞬間、観衆は自身の目を疑った。
見るからに体格でアームストロングに負けているはずの青年。
その青年が―――アームストロングをひっくり返していたのだから。
この言葉に比喩はない、文字通り、アームストロングはひっくり返され、仰向けになっていた。
対して青年は汗一滴も流さず、何事もなく椅子に座っている。
―――勝敗は誰の目にも明らかだった。
「「「―――ウォォォォオオ!!」」」
予想外の結果に沸き上がる観衆。
対象的にアームストロングと売り子の男は唖然とし、開いた口が塞がらない。
それも仕方がない、わざわざこの辺で一番の筋力を持つ男を探し出し、売り上げを出そうとしていた売り子の男しかり、自分の筋力に絶対の自信を持っていた男しかり、彼らの今日の収入は0であることがこの瞬間、決定したのだから。
「さて、こいつはもらってくよ♪」
そう言って賞金もとい、彼らの稼ぎを全て持って颯爽と去っていく青年。
それに続くように観衆もこれ以上面白いものが見れそうに無いことを察し、その場から散っていく。
あとに残されたのは自信の誇りを粉々に砕かれた元チャンピオンと、「あ~今日の飯どうしよう……」と途方にくれる売り子の男だけだった……。
****
「もぅ~またアキラは勝手なことをして!!」
「……アキラ、勝手にいなくなっちゃ…やだ……」
「ご、ごめん……でも一稼ぎしてきたんだから良いじゃんかよ~」
と、二人と合流して早々に怒られる青年こと、鬼道 彰。
「よく言うよまったく、力自慢大会なんて付与術使える彰に勝てる人なんかそうそういるわけないよ」
「……むしろ…相手が心配……」
「いや、お前ら、もうそれ逆に相手に失礼だからな?」
さらりとチャンピオンをけなす二人にツッコミを入れる彰。
「そんなことよりも早く今日の宿探そうよアキラ」
「……ふかふかのベッド…凄く…楽しみ」
しかし、二人は彰のそんなささやかな主張そっちのけで事を話始める。
「お前ら俺の意見をそんなことで切り捨ててこれから泊まる宿に思いを馳せるなよっ
なんか虚しくなってきちゃうだろうがっ」
「さ、行こっか、ノエルちゃん♪」
そう言ってリンはノエルに手を差し出す。が、しかし……。
「……え、あなた…だれ?」
「まさかの裏切りっ!?
というかそれ以前にボク認知されてなかったんだ……ぐすっ」
ノエルのあなた誰発言にショックを受け、泣き出してしまうリン。
どうやら彰達に突き放されるのはリンにとってはかなり辛いことらしい。
まぁとはいっても泣くのはどうかという感じだが……。
とにかく、リンが泣き出した事に焦った彰は、慌ててリンにフォローを入れる。
「あああ!! まてまてまて、大丈夫だからっ 認知されてるからっ!!
というか一週間も一緒に居て認知されてないってよっぽどだぞ、それっ!?」
「―――ボクよっぽどだったんだ~!!」
「どうしてそうなんのっ!?
ノエル、お前からも何かフォローを……って、なんか泣いてるリンをツンツンして遊んでやがるっ!?
やめろノエル!! それ以上リンの心を抉るんじゃないっ!!」
そんな会話をしながら、三人は今日の宿を探して、町を歩いていく……。
―――――彰達が王都から逃げ出して一週間、彼らはなんとか近くの町に到着していた。
もちろん、ここに到達するまでにもかなりの苦難があったのがそれは割愛させてもらおう。
とにかく、彼らはここ、ウォードラスに到着したのだった。
ウォードラスは元々、そんなに大きな町ではなかったのだが、闘技場を作ってから一気に栄え始めた町である。そんな町だから当然、腕に自信のあるもの達が集まってくるのだ。
そして、到着してすぐ、彰が力自慢大会を開催しているのをめざとく発見し、一人でさっさと行ってきて、チャンピオンのプライドと、売り子の男ホクホク顔を粉々に砕いてきたというのが真相である。
そして、合流して宿を探そうとちゃんと動き出してからも、彰がウォードラスの町並みや、闘技場を見て「うぉぉぉぉ――!!」や「かっけぇぇぇぇ――!!」「でけぇぇぇぇ――!!」と一人で子供のようにはしゃいだり、ノエルがいつの間にか居なくなったかと思うと、興味深々といった感じの目で出店の商品を見ていたり、そんな落ち着きのない二人をまとめようとしながら、結局翻弄されてしまうリンがまたまた泣き出してしまったりと、苦労しながらも、なんとか宿を発見したのだった。
「や、やっと着いたぁぁぁ~」
「本当、大変だったよ……」
「……二人とも……もっとしっかりして……」
「いやいやノエルちゃん、キミもぜんぜん人の事言えないからね?」
くたびれながらも中に入り、カウンターへと向かう彰達。
「すいません、二人部屋一室と一人部屋一室空いてますか?」
「ごめんなさいね、今ほとんど満室で、二人部屋一室しか空いてないのよ、どうする?」
「二人部屋……」
「……一室…」
カウンターの女の人のその答えに、目の色を変える若干二名。
「どうするも何も……しょうがないですね……俺はどっかで野宿でもしてくるから二人だけでも……」
「そ、そんなの駄目だよ!!
ア、アキラにだけ今日も野宿させてボク達だけふかふかのベッドで寝るなんて……で、できないよ!! ね、ノ、ノエルちゃん!!」
「……(コクコク)」
と、リンの言葉に無言で頷くノエル。
「そんなこと言ったってなぁ……どうすんだよ、またみんなで野宿するのか?」
「え、えっと……そ、そうじゃなくて……」
彰の問いかけにエルフ耳まで真っ赤になって蹲ってしまうリン。
そこでノエルがその先を代弁するように言った。
「……二人部屋で……みんな一緒に寝る……」
「いやいや駄目だろ、常識的に。」
「……なら…しょうがない……」
残念そうに落ち込むノエル。
「そ、そーだよねっ!! 常識的に駄目だよね!! 常識的に!!
しょうがないよね!! うんうん!!」
「……うん、しょうがない……それじゃあ、リン」
と、そこで言葉を切ってリンの方を向くノエル、そして……。
「……野宿…頑張って」
と、無表情で告げた。
「……え、ボクなの?」
「……もちろん…私はアキラのパートナー……パートナー同士は離れちゃ…ダメ」
「いや、でも……」
「……そもそも…リンは後から参加してきた……いわば後輩…後輩が…先輩を野宿させてベッドで寝るなんて……常識的にダメ」
「うぅぅぅ~」
何も反論出来ずにただ唸るリン。
―――ポコッ!
「―――うにゃっ!!」
「こらノエル、リンをそんなに困らせるような事を言ったら駄目だろ?」
「……でも…アキラだけ野宿なんて……ヤダ」
「そうだよ!! そうなるくらいだったらみんなで野宿するよ!!」
と、軽くノエルを叱った彰は、二人に真剣な顔で反論されたしまった。
(はぁ~、このままだと本当に俺と一緒に野宿するな、こいつら、仕方ない、いざとなったら俺が床で寝ればいいか……)
「わかったよ、じゃあ二人部屋をとろう、お前らにまた野宿させるのはなんか俺が嫌だしな……」
こうして、男一人と美少女二人で一部屋に泊まる事が決定したのだった。
……因みに、その光景をカウンターの女の人がニヤニヤしながら眺めて居たことは秘密である。
今のチャンピオンは百戦錬磨のパワーを持つこの男!! アームストロングだ!!
さあさあ、誰かこいつの連勝記録を破ろうって奴はいないのか!?」
と、人込みの中心で客寄せの男が大声叫ぶ。
力自慢大会……簡単に言ってしまえば腕相撲大会である。
今のチャンピオンに勝てば、そこまで蓄積された敗北者達のお金が貰えるという仕組みなのだ。
そして、その男のすぐ横には木製のテーブルと2つの椅子があり、その片方にはチャンピオンであろう、小麦色の肌に、膨れ上がった上腕二頭筋、鋼のような胸板を持つ、恰幅のいい大男が座っている。
その炭鉱マンのような体格を持つ彼は堂々と椅子に座り、不敵な笑みを浮かべていまかいまかと挑戦者を待ち構えていた。
しかし、観衆は集まっているものの、「我こそは!!」という者は現れない。
それもそのはず、彼は先ほど、挑戦者の一人の骨を折り、治療院送りにしているのだ。
さっきまでは気軽に参加していた者達も、痛みに苦しんでいる者を目の前で見てしまえば、自ら同じ運命をたどりたいとは思わず、参加者が途絶えてしまっていたのである。
(そろそろ潮時かねぇー、さすがにあれを見てやりたいって奴もいないだろうし、かぁーもったいねえ、こいつならもっと儲けられたのによう!!
まぁ、仕方ねぇ、切り上げるか……)
売り子の男がそう思って、一声かけて切り上げようとした、その時だった。
「やるやる!! 俺、参加するぞ!!」
そう言いながら人込みをかき分けて一人の男が姿を現す。
しかし、売り子の男はその姿を見て、思わず相手が心配になってしまった。
なるほど、確かに体格はいい方だろう、しかし、このアームストロングとは比べるべくもない、下手をすれば二人目の治療院送りになってしまうかもしれない。
それでも、相手がいい大人であれば売り子の男は躊躇しなかっただろう。
だが、やってきたのはまだ子ども、青年と言えるかどうかといった年ごろの男の子だ。
彼の将来をこんなところで潰してしまうのはどこか申し訳ないような、そんな衝動に駆られ、売り子の男は思わず口を開く。
「キミ……本当にやるのかい?」
「あぁ、もちろん!!」
「でも、もしも負けて怪我をしちゃってもおじさんは責任をとれないぞ?」
「子ども扱いすんなって、大丈夫大丈夫。わかってるよそのくらい!!」
「……そうか、わかった。もう言わないさ。ただ無理はしないようにね。それじゃあ銀貨一枚をそこの袋に入れて椅子に座ってくれ」
「おっけー」
青年はそんな意味のわからない言葉を返すと、銀貨を袋に入れて、椅子に座った。
アームストロングは「いいカモを見つけた」とでもいうかのように笑みを強くする。
それは相手がだれであろうと一切の容赦をしないという彼の意思の表れだった。
「おう、ボウズ、治療院送りになってもこっちは責任もたねぇからな?」
「だから子ども扱いすんなって。大丈夫、心配しなくていいよ、でも―――それはそっちも同じだからな?」
青年の生意気な物言いにアームストロングの頭に青筋が浮かぶ。
「ほぅ……面白いこと言うな、ボウズ。
―――後悔するなよ?」
「あぁそういうのいいから早くやろう、その方がわかりやすい」
二人はそんな会話をかわすと、手を組み、準備する。
青年を除くその場の全員がアームストロングの勝利を疑わない中、
「―――レディー、ゴー!!」
売り子の男により、戦いの幕が切って落とされた。
そして、次の瞬間、観衆は自身の目を疑った。
見るからに体格でアームストロングに負けているはずの青年。
その青年が―――アームストロングをひっくり返していたのだから。
この言葉に比喩はない、文字通り、アームストロングはひっくり返され、仰向けになっていた。
対して青年は汗一滴も流さず、何事もなく椅子に座っている。
―――勝敗は誰の目にも明らかだった。
「「「―――ウォォォォオオ!!」」」
予想外の結果に沸き上がる観衆。
対象的にアームストロングと売り子の男は唖然とし、開いた口が塞がらない。
それも仕方がない、わざわざこの辺で一番の筋力を持つ男を探し出し、売り上げを出そうとしていた売り子の男しかり、自分の筋力に絶対の自信を持っていた男しかり、彼らの今日の収入は0であることがこの瞬間、決定したのだから。
「さて、こいつはもらってくよ♪」
そう言って賞金もとい、彼らの稼ぎを全て持って颯爽と去っていく青年。
それに続くように観衆もこれ以上面白いものが見れそうに無いことを察し、その場から散っていく。
あとに残されたのは自信の誇りを粉々に砕かれた元チャンピオンと、「あ~今日の飯どうしよう……」と途方にくれる売り子の男だけだった……。
****
「もぅ~またアキラは勝手なことをして!!」
「……アキラ、勝手にいなくなっちゃ…やだ……」
「ご、ごめん……でも一稼ぎしてきたんだから良いじゃんかよ~」
と、二人と合流して早々に怒られる青年こと、鬼道 彰。
「よく言うよまったく、力自慢大会なんて付与術使える彰に勝てる人なんかそうそういるわけないよ」
「……むしろ…相手が心配……」
「いや、お前ら、もうそれ逆に相手に失礼だからな?」
さらりとチャンピオンをけなす二人にツッコミを入れる彰。
「そんなことよりも早く今日の宿探そうよアキラ」
「……ふかふかのベッド…凄く…楽しみ」
しかし、二人は彰のそんなささやかな主張そっちのけで事を話始める。
「お前ら俺の意見をそんなことで切り捨ててこれから泊まる宿に思いを馳せるなよっ
なんか虚しくなってきちゃうだろうがっ」
「さ、行こっか、ノエルちゃん♪」
そう言ってリンはノエルに手を差し出す。が、しかし……。
「……え、あなた…だれ?」
「まさかの裏切りっ!?
というかそれ以前にボク認知されてなかったんだ……ぐすっ」
ノエルのあなた誰発言にショックを受け、泣き出してしまうリン。
どうやら彰達に突き放されるのはリンにとってはかなり辛いことらしい。
まぁとはいっても泣くのはどうかという感じだが……。
とにかく、リンが泣き出した事に焦った彰は、慌ててリンにフォローを入れる。
「あああ!! まてまてまて、大丈夫だからっ 認知されてるからっ!!
というか一週間も一緒に居て認知されてないってよっぽどだぞ、それっ!?」
「―――ボクよっぽどだったんだ~!!」
「どうしてそうなんのっ!?
ノエル、お前からも何かフォローを……って、なんか泣いてるリンをツンツンして遊んでやがるっ!?
やめろノエル!! それ以上リンの心を抉るんじゃないっ!!」
そんな会話をしながら、三人は今日の宿を探して、町を歩いていく……。
―――――彰達が王都から逃げ出して一週間、彼らはなんとか近くの町に到着していた。
もちろん、ここに到達するまでにもかなりの苦難があったのがそれは割愛させてもらおう。
とにかく、彼らはここ、ウォードラスに到着したのだった。
ウォードラスは元々、そんなに大きな町ではなかったのだが、闘技場を作ってから一気に栄え始めた町である。そんな町だから当然、腕に自信のあるもの達が集まってくるのだ。
そして、到着してすぐ、彰が力自慢大会を開催しているのをめざとく発見し、一人でさっさと行ってきて、チャンピオンのプライドと、売り子の男ホクホク顔を粉々に砕いてきたというのが真相である。
そして、合流して宿を探そうとちゃんと動き出してからも、彰がウォードラスの町並みや、闘技場を見て「うぉぉぉぉ――!!」や「かっけぇぇぇぇ――!!」「でけぇぇぇぇ――!!」と一人で子供のようにはしゃいだり、ノエルがいつの間にか居なくなったかと思うと、興味深々といった感じの目で出店の商品を見ていたり、そんな落ち着きのない二人をまとめようとしながら、結局翻弄されてしまうリンがまたまた泣き出してしまったりと、苦労しながらも、なんとか宿を発見したのだった。
「や、やっと着いたぁぁぁ~」
「本当、大変だったよ……」
「……二人とも……もっとしっかりして……」
「いやいやノエルちゃん、キミもぜんぜん人の事言えないからね?」
くたびれながらも中に入り、カウンターへと向かう彰達。
「すいません、二人部屋一室と一人部屋一室空いてますか?」
「ごめんなさいね、今ほとんど満室で、二人部屋一室しか空いてないのよ、どうする?」
「二人部屋……」
「……一室…」
カウンターの女の人のその答えに、目の色を変える若干二名。
「どうするも何も……しょうがないですね……俺はどっかで野宿でもしてくるから二人だけでも……」
「そ、そんなの駄目だよ!!
ア、アキラにだけ今日も野宿させてボク達だけふかふかのベッドで寝るなんて……で、できないよ!! ね、ノ、ノエルちゃん!!」
「……(コクコク)」
と、リンの言葉に無言で頷くノエル。
「そんなこと言ったってなぁ……どうすんだよ、またみんなで野宿するのか?」
「え、えっと……そ、そうじゃなくて……」
彰の問いかけにエルフ耳まで真っ赤になって蹲ってしまうリン。
そこでノエルがその先を代弁するように言った。
「……二人部屋で……みんな一緒に寝る……」
「いやいや駄目だろ、常識的に。」
「……なら…しょうがない……」
残念そうに落ち込むノエル。
「そ、そーだよねっ!! 常識的に駄目だよね!! 常識的に!!
しょうがないよね!! うんうん!!」
「……うん、しょうがない……それじゃあ、リン」
と、そこで言葉を切ってリンの方を向くノエル、そして……。
「……野宿…頑張って」
と、無表情で告げた。
「……え、ボクなの?」
「……もちろん…私はアキラのパートナー……パートナー同士は離れちゃ…ダメ」
「いや、でも……」
「……そもそも…リンは後から参加してきた……いわば後輩…後輩が…先輩を野宿させてベッドで寝るなんて……常識的にダメ」
「うぅぅぅ~」
何も反論出来ずにただ唸るリン。
―――ポコッ!
「―――うにゃっ!!」
「こらノエル、リンをそんなに困らせるような事を言ったら駄目だろ?」
「……でも…アキラだけ野宿なんて……ヤダ」
「そうだよ!! そうなるくらいだったらみんなで野宿するよ!!」
と、軽くノエルを叱った彰は、二人に真剣な顔で反論されたしまった。
(はぁ~、このままだと本当に俺と一緒に野宿するな、こいつら、仕方ない、いざとなったら俺が床で寝ればいいか……)
「わかったよ、じゃあ二人部屋をとろう、お前らにまた野宿させるのはなんか俺が嫌だしな……」
こうして、男一人と美少女二人で一部屋に泊まる事が決定したのだった。
……因みに、その光景をカウンターの女の人がニヤニヤしながら眺めて居たことは秘密である。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる