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闘技大会編
因縁の対決
しおりを挟む「決まった、決まりましたぁ~!! 準決勝戦の勝者はアキラ選手です!!
そしてこの瞬間、決勝戦の組み合わせはイーヴィディル選手対アキラ選手ということに決定いたしました!!」
司会の声を皮切りにして、激しい戦いに、息をのんで見守っていた観客達も気が付いたように歓声を上げ始める。
しかし、そのままではらちが明かないので、司会は頃合いを見ていったん切り上げようと、タイミングをうかがい、声を張り上げようとするが……。
「さて、それでは決勝戦ということで、ここで特別に10分間の休憩を――――」
「――――ちょっと待った」
それは彰によって遮られた。
彰は戸惑う司会や、観衆を前に、ただ一点、イーヴィディルの座っている場所を睨みつけながら言う。
「休憩なんかいらねぇ、出て来いよイーヴィディル。
―――――ケリ、つけようぜ?」
彰の鋭い視線を受けたイーヴィディルは、まるでいいおもちゃを見つけたとでも言うかのようにニヤリとした笑顔を浮かべると、余裕を持った口調で答える。
「ほう、面白い。どうやらよほど我輩にしつけてもらいたいらしいな?
いいだろう、その誘い、乗ってやろうではないか!!」
イーヴィディルはそう告げると、悠然と観客席を歩いて前へと進み出て来る。
そして、そのまま観客席の前にある柵をを越え、段差を飛び下り、フィールドへと降り立った。
「って事で司会の人、よろしく頼むよ」
未だに状況を飲み込めず、困惑していた司会にそう声をかける彰。
司会は未だに完全に混乱から復活しないながらも、何とか進行を再開した。
「わ、わかりました……え~それでは気を取り直して……オホン。
よ、予想外の事態となりましたが、闘技大会決勝トーナメント、決勝戦、始めていきたいと思います!!
果たしてチャンピオンへの挑戦権を手にするのはイーヴィディル選手とアキラ選手のどちらなのでしょうか?
泣いても笑ってもこれが最後、両者用意は……って聞くまでもありませんね。
それでは闘技大会決勝トーナメント、決勝戦。
――――――――――試合開始ですっ!!」
司会の掛け声とともに始まる決勝戦。
序盤から激しい戦いになると予想されていたがしかし、その大方の予想に反し、二人は未だにその場を動かずにいた。
「どうした来ぬのか? いや、来れないというのが正しいかのう?」
試合が始まってもなお攻めてこない彰を見て、イーヴィディルは愉快そうに言う。
「ここまでのお主の戦い方をずっと見てはきたが、お主の戦い方はその付与魔法に頼り過ぎておる。
あの小娘の時は少々油断してはいたが、我輩がその気になれば魔法など発動した瞬間に打ち消すことも可能。
魔法が使えないお主などとるに足らんただの憎たらしい小僧にすぎん。
故に必敗、お主が我輩に向かって来たところで、万に一つの勝ち目が無いことに気づいてしまったのだろう?
愉快、実に愉快な話だのぅ? ガハハハハッ!!」
彰にそう言うと、見る者の神経を逆なでするように笑い続けるイーヴィディル。
その気色の悪い笑い方は、遠くから見ているだけの観衆達までをも不快にさせる程であった。
それを目の前で、しかも自分のことで笑われているとなれば、どれほど不快であろうかなど考えるまでもない。
しかし、当の彰はと言えば、表情一つすら変えず、ただ冷徹にひとり笑い続けるイーヴィディルを見つめていた。
「――――言いたいことはそれだけか、イーヴィディル?」
彰は冷たく、感情の無い声でそう言い放つ。
「……なんだと?」
イーヴィディルは笑うのをやめ、自分の予想と違う彰の反応に不快感をあらわにする。
彼の予想では策もなく、ただ直情的になり突っ込んで来ると思っていたのだ。
そして、彰は冷たい声で続ける。
「まず、お前はいくつか勘違いをしている。
だが、簡潔に言っちまえばお前がこれから俺に負ける理由は三つある」
「はぁ? 我輩が魔法の使えないただのガキに負ける……? ガハハ!!
何を馬鹿げたことを――――――」
彰の言うことがよほど馬鹿らしかったのか、再び声を上げて嘲笑しようとするイーヴィディル。
しかし、彼の言葉が最後まで言い切られることはなかった。
なぜなら……。
「一つ、俺が魔法が使えなければろくに戦えないと思いこんだこと」
それは一瞬にして彼我の距離を詰め、接近して来た彰によって遮られてしまったからだ。
「――――――なッ!?」
(馬鹿なッ!? 今の我輩は≪鮮血石≫により魔力妨害を最大にしている。
どんな魔法を発動しようとも、その効果は発現したとたんに瞬時に霧散し、消滅するはず……)
自身の予想の埒外の出来事に困惑するイーヴィディル。
まさかその動きが『縮地』の名で呼ばれる彰の世界の武術の奥義であろうことなどわかるはずもない。
だが、イーヴィディルもその動きに困惑しながらも、≪鮮血石≫により高められた身体能力を駆使して何とか対応し、抜剣すると、そのまま彰に斬りかかる。
しかし、その時にはすでに彰は目の前から消えていた。
「――――――遅ぇよ」
「くッ!?」
背後から聞こえた声に驚きながらも、イーヴィディルは右手に持った剣を振り向きざまに背後へと叩きつけるように振り下ろす。
彰の意識を刈り取ろうと振り下ろされる剣、だがそれに対し彰は真っ向から拳で向かって行く。
彼は自身の右拳を限界まで内側に捻ると、それを振り下ろされる剣の側面に添え、それを一気に解放。
最小の動きで剣を払いながら右拳による正拳突きを放つ。
「なっ!? 拳で剣を払っただと!?」
拳対剣、そのありえない組み合わせの戦いに、剣を持つ自分が負けたという理解不能の事実を前に困惑するイーヴィディル。
そんな彼の顔面に剣を払った彰の正拳突きが突き刺さる。
「――――ぐはッ!!」
直後、彼の顔面を衝撃が襲った。
そのあまりの衝撃に少し意識が朦朧としながらも、何とか体勢を立て直そうとその場から距離をとる。
イーヴィディルは魔法を使っていない筈の相手に≪鮮血石≫で強化された身体能力を持つ自分が押されているという現実を前にし、困惑していた。
「ガハッ!! 馬鹿なこんなはずは……何故だ!! どうしてお前は魔法を使えているのだ!!」
表情に困惑と怒りを浮かべながら叫ぶイーヴィディル。
「魔法なんて使ってないさ、今の動きはただの技術と身体能力だよ」
「そんな馬鹿な話があるはずがないだろう!! 言え、いったい何をした!? どんな道具を使ったのだ!!」
まるで自分に言いきかせるようにして叫ぶイーヴィディル。
「だから使ってないって言ってるだろ? わからないやつだな」
「あくまでしらを切るというのならいいだろう……力づくではかせてやろうではないか!!」
そう叫ぶと、イーヴィディルは剣を構え、彰へ上下左右のあらゆる方向から斬りかかるが、しかし、そのどれもが当たらない。
その全てを彰は時には払い、時には躱しながら回避して見せる。
イーヴィディルの剣は空を切るばかりであった。
「もういい!! 遊びは終わりである!! ここからは本気でやらせてもらうぞ!!」
自身の剣が当たらないことにしびれを切らし、もう一度彰から距離をとると、そう叫び≪鮮血石≫の力を限界まで引き出すイーヴィディル。
≪鮮血石≫は所持者の身体能力を湧き上がる殺人衝動と引き換えに、限界を超えて強化させるもの。
使い過ぎれば自我を無くし、殺人鬼と化してしまうのだが、そんなことはすでにイーヴィディルにはどうでもよかった。
「今度こそ、これで終わりであぁぁぁる!!」
「――――ッ!?」
そう叫び彰に斬りかかったイーヴィディルの速度は以前よりも数段速く、流石の彰も反応が一瞬遅れてしまう。
イーヴィディルの剣が人間の肉体の限界を遥かに超えた速度、威力を持って彰に襲いかかる。
――――そして次の瞬間、イーヴィディルの剣は彰の体を袈裟懸けに切り裂いた。
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