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中編
白昼夢でも見ていたのだろうか
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「ハロー、ハロー。メールだよ。」
ルイに一方的に想いと手紙を送り付けた翌日。
頭上から聞き覚えのない、しかしどこか聞き覚えのある声が聞こえた。
………頭上?
意味が分からず見上げれば、近くに植わっていた巨木の枝に、まるで猫のように寝転んでいる獣人が居た。
一体誰だと目を凝らせば、ルイといつも一緒に居るあの生意気な兎で。
無礼だと怒る前に、そもそも何故そんな所に居るんだという疑問と困惑が湧いてくる。
暗黙の了解で、一般生徒はご学友の子供達が使う校舎には近寄ってはいけないとなっている。
馬鹿馬鹿しい差別的な考えだが、王家の利益を考えるならば当然の処置なのだろう。
だからこそ、万が一見付かった際は如何なる理由があろうとも一般生徒に罰則が処せられるというのに。
兎は訝しむ私の前に軽やかに飛び降りると、何も気にすることもなく私にクリーム色の封筒を差し出してきた。
「………何だ、これは。」
「お返事。夜更かしして書いてたんだから、見てくれると嬉しいな。」
【お返事】という言葉に、思わず反応する。
俺が出した手紙は、一通しかない。
昨日ルイに出した手紙だけだ。
けれどその手紙に俺の名前は書いていないのに、どうして俺だと分かったのか。
もしかして、ルイも俺だと気付いているのか?
訝しみ、そして若干怖じ気づく俺に兎はニッコリと笑うと、更に封筒を差し出して来る。
何故だろうか。
受け取って当然だと言わんばかりの兎の態度に、従兄弟であるレオナルドを思い出してしまう。
「信じる信じないは君次第。どうするどうもしないも君次第。その選択に僕は勿論何も言わないし、彼もきっと何も言わないよ。」
まどろっこしい言い方。
ますますレオナルドを思い出して、少しばかり不愉快だった。
どう考えても胡散臭い態度。
しかし何故だろうか。
コイツは私に、偽りを言わないような気がした。
「………受け取ろう。」
「うん!どーぞ!」
ニコニコと、兎が封筒を渡す。
これが本当にルイからの返信なのかは分からない。
前の俺は一度だって、受け取ったことはないんだから。
けれどこれはきっと本物だろうと、俺は信じたくなった。
縋りたく、なった。
「ありがとう。」
自然と、礼を伝えて兎の頭を撫でていた。
どうしてこんな行動をしてしまったのか分からない。
しかし兎が満足気に笑うから、きっと正解なんだろうと思う。
「じゃあ、今 ちゃ でね。」
手を離した瞬間、ザーザーと砂嵐のような音が耳の奥で鳴り始める。
兎が何を言ったのかが聞こえず聞き返そうとしたが、そのタイミングで立っていられない程の眩暈がした。
一瞬だけとはいえ、咄嗟にたたらを踏み耐えながら兎を見ると―――
「は?居ない?」
もう、目の前には誰も居なかった。
砂嵐のような音も聞こえず、代わりに学生達の賑やかな声が聞こえた。
そう言えば、兎が居た時は兎の声しか聞こえなかった。
生徒達の声はおろか、風に揺られた木のざわめきすらも。
白昼夢でも見ていたのだろうか。
しかし、私の手元には確かにクリーム色の封筒があった。
何だったのだろうか。
もしかして、また偽物なのか?
『その選択に僕は勿論何も言わないし、彼もきっと何も言わないよ。』
先程の兎の言葉が、頭の中を反響する。
しかし不思議と、それ以上は疑うという選択肢が浮かばなかった。
ルイに一方的に想いと手紙を送り付けた翌日。
頭上から聞き覚えのない、しかしどこか聞き覚えのある声が聞こえた。
………頭上?
意味が分からず見上げれば、近くに植わっていた巨木の枝に、まるで猫のように寝転んでいる獣人が居た。
一体誰だと目を凝らせば、ルイといつも一緒に居るあの生意気な兎で。
無礼だと怒る前に、そもそも何故そんな所に居るんだという疑問と困惑が湧いてくる。
暗黙の了解で、一般生徒はご学友の子供達が使う校舎には近寄ってはいけないとなっている。
馬鹿馬鹿しい差別的な考えだが、王家の利益を考えるならば当然の処置なのだろう。
だからこそ、万が一見付かった際は如何なる理由があろうとも一般生徒に罰則が処せられるというのに。
兎は訝しむ私の前に軽やかに飛び降りると、何も気にすることもなく私にクリーム色の封筒を差し出してきた。
「………何だ、これは。」
「お返事。夜更かしして書いてたんだから、見てくれると嬉しいな。」
【お返事】という言葉に、思わず反応する。
俺が出した手紙は、一通しかない。
昨日ルイに出した手紙だけだ。
けれどその手紙に俺の名前は書いていないのに、どうして俺だと分かったのか。
もしかして、ルイも俺だと気付いているのか?
訝しみ、そして若干怖じ気づく俺に兎はニッコリと笑うと、更に封筒を差し出して来る。
何故だろうか。
受け取って当然だと言わんばかりの兎の態度に、従兄弟であるレオナルドを思い出してしまう。
「信じる信じないは君次第。どうするどうもしないも君次第。その選択に僕は勿論何も言わないし、彼もきっと何も言わないよ。」
まどろっこしい言い方。
ますますレオナルドを思い出して、少しばかり不愉快だった。
どう考えても胡散臭い態度。
しかし何故だろうか。
コイツは私に、偽りを言わないような気がした。
「………受け取ろう。」
「うん!どーぞ!」
ニコニコと、兎が封筒を渡す。
これが本当にルイからの返信なのかは分からない。
前の俺は一度だって、受け取ったことはないんだから。
けれどこれはきっと本物だろうと、俺は信じたくなった。
縋りたく、なった。
「ありがとう。」
自然と、礼を伝えて兎の頭を撫でていた。
どうしてこんな行動をしてしまったのか分からない。
しかし兎が満足気に笑うから、きっと正解なんだろうと思う。
「じゃあ、今 ちゃ でね。」
手を離した瞬間、ザーザーと砂嵐のような音が耳の奥で鳴り始める。
兎が何を言ったのかが聞こえず聞き返そうとしたが、そのタイミングで立っていられない程の眩暈がした。
一瞬だけとはいえ、咄嗟にたたらを踏み耐えながら兎を見ると―――
「は?居ない?」
もう、目の前には誰も居なかった。
砂嵐のような音も聞こえず、代わりに学生達の賑やかな声が聞こえた。
そう言えば、兎が居た時は兎の声しか聞こえなかった。
生徒達の声はおろか、風に揺られた木のざわめきすらも。
白昼夢でも見ていたのだろうか。
しかし、私の手元には確かにクリーム色の封筒があった。
何だったのだろうか。
もしかして、また偽物なのか?
『その選択に僕は勿論何も言わないし、彼もきっと何も言わないよ。』
先程の兎の言葉が、頭の中を反響する。
しかし不思議と、それ以上は疑うという選択肢が浮かばなかった。
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