【加筆修正済】貴方に幸せの花束を

かかし

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後編

現実が崩れていく

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「ごめんなさい………本当に、本当にごめんなさい………」

しゃがみ込んだまま、最後に小さくドミニク様は子供のような口調でそう言った。
その言葉は、何に対してなのだろうか。
少なくとも、今の僕も以前の僕も、そんな言葉は欲しくなかった。

「少し、冷静にならせてください………」
「ルイ………」

縋るように伸ばされた手を避け、僕はそれだけを告げた。
拾った手紙を持ったまま踵を返してその場を離れた。
少なくとも、今の僕にその手を取る資格も立場もない。

………何もかも。きっと最初から、僕らは間違えていたんだ。

でもそれに気付いたからって、もうどうしようもない。
僕は死んだ。
そして今、本来交わる筈のない人生を僕は自ら望んで歩いてしまっている。
もうこれ以上、ifはないんだ。
先に進まないといけない。
僕も、ドミニク様も。

返事を書くのは、もう終わりにしよう。

匿名希望さんは、匿名ではなくなった。
僕と彼とのおままごとは、ほんの少しの間に見る夢みたいなモノ。
夢はいつか、覚めてしまう。
覚める切欠が、匿名さんが匿名じゃなくなることだっただけ。

じんわりと、また眦に涙が溜まる。

今日一日、泣いてばかりだ。
少し部屋に戻って落ち着こう。
授業をサボることになるけれど、まぁ、今更だ。
そう、今更。

………アレ?そういえば、

思えば僕は、
以前の僕も、今の僕も。
そう気付いた瞬間、また耳の奥で砂嵐みたいな音が聞こえ始める。
ザーザー、ザーザー
この音は嫌いだ。
この音が聞こえる時は、高確率で嫌なことが起きる。

しかも脳みそが掻き回されてるみたいな、そんな感覚もして上手く歩くことが出来ない。
眩暈がして、足も動かなくて。
でも寮に帰らないといけない気がして、引き摺りながら必死に動かしていく。
くるくる、ぐるぐる。
吐き気する。

でも、帰らなきゃ。
それはどうして?
あの子達が、待ってるから。
誰が?
誰も居ないのに?

僕の頭の中で、僕じゃない人の声が聞こえる。
彼女の声に似ていて不快で、クスクスと嘲笑うような音がすごく耳障りだ。
嗚呼、でも、あの人を今世では見てないな。
どこに行ったんだろう。

でもそもそも、


ザザッ、ザーザー
現実が崩れていく。
美しかったことは覚えているけれど、獣人だったか人間だったかもあやふやだ。
兎の獣人だった気がする。
本当に?

喉が渇く。
何かが分かりそうになる度に、砂嵐の音が大きくなる。

『王として生きるならば、自分以外から全てを奪え。』
『奪え。お前は王になる者なのだから、その権利はある。』

何かの【映像】が、浮かんでは消える。
【映像】って何だ?
そう言えば、あの場所に居たのは本当に王だった?
否、王は確かに居た。
だけどもそれは、本当に

『そんな権利なんて、ある訳ないだろうが!!!』

階段を一段上る毎に、疑問が浮かんでは消える。
誰かの声が聞こえる。
護らなきゃいけないと、僕は思ったんだ。
だって、だってきっと―――

誰かが僕を担ぐように持ち上げた。
誰が?
その人はもう一人誰かを担いでいる。
誰を?

『起きるさ!起きて生きていてくれる!幸せな記憶があれば!それさえダウンロード出来れば!』
『作られただけのそれは記憶じゃないし、記録ですらないよ。それに、そんな【嘘】はいずれ矛盾を生み破綻する。』

誰かが泣きながら叫んでいる。
そんな誰かを、何かが必死に止めている。
嗚呼、泣かないで、

『………それに、は嘘が嫌いだよ。も、嘘はダメだって言ってた。』

そうだよ。
嘘はいけない。
ドミニク様パパは嘘が嫌いだし、お母さんは嘘を吐くのは悪いことだと教えたね。
覚えていて、偉いね。

『嘘じゃない、本当のことにすれば、それは嘘じゃなくなる!』

そんなあの子に、あの人は喰って掛るようにそう言った。
歌うように高らかに、慟哭するように。
でも、それは詭弁だよ。
埋めようのない亀裂が出来てしまう。
小さなそれはやがて大きくなり、そうして崩壊するしかなくなる。
今まさに、この瞬間のように。

『二人を幸せにする記憶を作って、辿らせるんだ!そうすれば確かな記憶になる!俺とお前なら出来る!!』
………』
『なぁ、ヘクター!頼む、二人にもう一度、笑って欲しいだろう!?二人は幸せになるべきなんだから!』

獅子レオが吼える。
でもそれは、ただのお人形遊びにしかならないんだよ。
現実にはならない。
だって―――

「レオ………夢はいつか、覚めるんだよ………」

名前を呼んだ瞬間、身体から全ての力が抜ける。
ゆっくりと後ろに倒れる感覚。
以前の僕も味わった感覚で、ボキャブラリーが無いなぁとちょっと笑ってしまった。




























エラー、エラー
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