上 下
2 / 7

2

しおりを挟む
じわじわとした苦しさは、父が再婚してから更に息苦しいものになった。
別に、再婚相手の人はとても素晴らしい女性だと思う。
それに、彼女の連れ子………兄の新しい弟になる子だと紹介された子は僕と同じ年で僕と同じ男の子だったけど、女の子に見間違う程に愛らしく、僕よりもずっとずっと【弟】として相応しかった。
それはきっと彼もそう思っているのだろう。
彼はいつも兄にべったりだったし、時折兄が居ない場所では兄や父に疎まれている僕のことを汚物を見るような目で見ていた。
………心配しなくても、父の子は君と兄だし、兄の弟は君だけなのに。

「どうしてお前はあの子に優しくしてやれないんだ!」

ある日、僕は父と兄からそう怒鳴られた。
彼はどうやら父や兄に僕から嫌がらせを受けていると言ったらしい。
嫌がらせ、何のことだろう。
父や兄から言われたその【嫌がらせ】の内容は、どれもこれも身に覚えのないことだった。
そもそも、僕から近付きもしてないのに何を言っているんだろうか。

「あなた方がそうだと仰るなら、そうなのでしょう。」

僕はやったともやってないとも言わなかった。
父は激昂して僕の頬を叩いたけれど、もう僕は痛いとも思えなかった。
ただ頭を下げて部屋を出る。
嫌いなら、追い出してくれれば良いのに。
それでも僕から出て行かないのは、変に騒ぎになって連れ戻されたら嫌だからだ。

「ダッサ。早くこの家から出て行けば良いのに。」

僕に割り当てられた部屋に戻る途中、彼からそう言われた。
そうですね、僕もそう思いますと返せば怪訝そうな顔をされた。
同意しただけなのに、なんでそんな顔をされなければいけないのだろうか。
そうは思うが父の子である彼の方が立場が上なのだからそれ以上の口答えはせず、頭を下げてからその場を立ち去った。

ふと、またお母さんが恋しくなったけれど、頬が腫れているだろう今鏡を見てもきっとお母さんに似てなくて余計に恋しくなるだけだから、今日は鏡を見なかった。
しおりを挟む

処理中です...