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「あ!君は………!」
「………え?」
現れたのは、オーナーでもなければ渡邊さんでもなかった。
弟が呼び出した人、弟が呼ぶ【あの人】。
それはまさかのあのイケメンくんだった。
名前も知らないし、そもそもあの人は弟の友達だったんじゃないのか?
「杉村お前、俺と俺の運命の人とを会わせてくれたのか!」
「「は?」」
イケメンくんがキラキラとした笑顔で言った意味が、まるで分からなかった。
運命の人?
誰が?
混乱する俺を他所に、イケメンくんは嬉しそうに俺の方へと向かってくる。
え?普通に怖い。
「あの時急に居なくなるから、心配したんだ。制服でそう言えば杉村の双子の兄弟がそこに通ってるとか言ってたなって思い出して聞いてみたら、知ってるって言うじゃん?しかも杉村の双子の兄弟その人だなんて!」
「待って!でも言ったじゃん!マトモな人間じゃないって!頭おかしいんだよ、この人!!」
ちょっと状況が分からない。
俺はてっきり渡邊さんかオーナーかと思ったけど、弟が言ってた【あの人】は最初からこのイケメンくんだったって事?
なんだ、紛らわしいこと言うなよ。
不安になって損したじゃないか。
「この人そもそも夜遊びしまくってんだよ!?家に帰って来ないし、いつも俺の事虐めてくるし………」
「それはお前がそう感じてるだけだろ?お前の主観とかマジどうでもいい。」
なんかイケメンくんと弟がギャーギャー言い争ってるけど、なんだって良いや。
なんか申し訳ないな。
渡邊さん、あんなに幸せそうに俺の事お嫁さんって言ってくれてるのに疑ったりなんかして。
オーナーがどう思ってるなんかなんて正直分かんないけど、脳内で勝手に弟とくっつけたりしてそれも申し訳ないなって思う。
「………かった………」
「は?お前何言って………」
「良かった。わた、渡邊さんじゃなくて。」
良かった。安心した。嬉しい。
早く帰って、二人に謝ろう。
そんでもって今日の晩ご飯は二人の大好きなオムライスにしよう。
卵ふわふわ半熟なんて芸当とても出来ないからそれは勘弁してもらうとして、チキンライスだけは気合い入れて作ろう。
薄焼き卵も………うん、まあ頑張る。
「………ざけんなっ!なんでお前が!!」
そんなふわふわとした思考のまま笑ったら、弟に思いっきり突き飛ばされた。
事の成り行きをこそこそ見守っていた野次馬の皆さんもビックリだよ。
イケメンくんが焦った顔で手を伸ばすのが、何故だかすごくゆっくりに見える。
俺のすぐ後ろは長い階段。
そこで押されたら当然………落ちる。
「千草!!」
さっきからずっと聞きたかった声が聞こえて、背中になにか硬い壁のようなものが当たる。
恐る恐る視線を上にあげれば、何故か泣きそうな顔をした渡邊さんがそこに居た。
太い腕が、しっかりと俺の体を支えてくれてる。
助けられたのは分かるけれど、なんで渡邊さんがここに居るのかが謎だった。
「渡邊さん………?」
「千草、ちぃちゃん………痛い所ない?平気?」
泣きそうな渡邊さんをこれ以上悲しませたくなくて、本当は思いっきり突き飛ばされた肩と捻ったかもしれない足が痛いけど、首を横に振る。
でも渡邊さんにはそんな俺の嘘はすぐ分かったみたいで、ますます辛そうな表情を浮かべた。
「愛永、千草を少し広い所に運んでやりなさい。あー、そこの子も逃げるな。今救急車と警察呼んだから、逃げ場無いよ。」
どうしようかと思っていると、聞き慣れない口調の聞き慣れた声が聞こえる。
見れば案の定階段をゆっくりと上ってくるオーナーと、後何故か俺の両親と担任が居た。
何その謎のメンバー。
「警察だなんて………そんな!」
母親が金切り声を上げたが、オーナーがひと睨みして黙らせる。
やっぱりオーナーはカタギの人じゃないよねと納得していると、渡邊さんは軽々と俺を抱いて上りきった先の広い所へと運んでくれた。
公衆の面前で恥ずかしくはあるけど、いつもの事だし何より横抱きじゃない。
俺は無駄で邪魔にしかならない恥じらいを捨てて、ギュッと渡邊さんの太い首にしがみついて身を委ねた。
でも警察って、民事非介入ってやつなんじゃないのかな?
チラリと俺を突き飛ばした犯人である弟を見る。
イケメンくんに腕を掴みあげられながら、今にも飛びかかって来そうな目で俺を睨んでいた。
「こんな所で故意に突き飛ばしておいて、甘ったれたことぬかしてんじゃねぇよ。」
聞き取りやすい低い声で、渡邊さんはそう言った。
いつもと違う口調にビックリしたけれど、不思議と怖くはない。
いや、怖い口調ではあるけど、それが俺に向かって吐かれたものではないと分かるから。
俺は大丈夫だよって気持ちを込めて、渡邊さんの背中を撫でる。
怒るということはエネルギーをすごく消費することだ。
渡邊さんにはこんなつまらない事の為に、疲れて欲しくなんてなかった。
「………え?」
現れたのは、オーナーでもなければ渡邊さんでもなかった。
弟が呼び出した人、弟が呼ぶ【あの人】。
それはまさかのあのイケメンくんだった。
名前も知らないし、そもそもあの人は弟の友達だったんじゃないのか?
「杉村お前、俺と俺の運命の人とを会わせてくれたのか!」
「「は?」」
イケメンくんがキラキラとした笑顔で言った意味が、まるで分からなかった。
運命の人?
誰が?
混乱する俺を他所に、イケメンくんは嬉しそうに俺の方へと向かってくる。
え?普通に怖い。
「あの時急に居なくなるから、心配したんだ。制服でそう言えば杉村の双子の兄弟がそこに通ってるとか言ってたなって思い出して聞いてみたら、知ってるって言うじゃん?しかも杉村の双子の兄弟その人だなんて!」
「待って!でも言ったじゃん!マトモな人間じゃないって!頭おかしいんだよ、この人!!」
ちょっと状況が分からない。
俺はてっきり渡邊さんかオーナーかと思ったけど、弟が言ってた【あの人】は最初からこのイケメンくんだったって事?
なんだ、紛らわしいこと言うなよ。
不安になって損したじゃないか。
「この人そもそも夜遊びしまくってんだよ!?家に帰って来ないし、いつも俺の事虐めてくるし………」
「それはお前がそう感じてるだけだろ?お前の主観とかマジどうでもいい。」
なんかイケメンくんと弟がギャーギャー言い争ってるけど、なんだって良いや。
なんか申し訳ないな。
渡邊さん、あんなに幸せそうに俺の事お嫁さんって言ってくれてるのに疑ったりなんかして。
オーナーがどう思ってるなんかなんて正直分かんないけど、脳内で勝手に弟とくっつけたりしてそれも申し訳ないなって思う。
「………かった………」
「は?お前何言って………」
「良かった。わた、渡邊さんじゃなくて。」
良かった。安心した。嬉しい。
早く帰って、二人に謝ろう。
そんでもって今日の晩ご飯は二人の大好きなオムライスにしよう。
卵ふわふわ半熟なんて芸当とても出来ないからそれは勘弁してもらうとして、チキンライスだけは気合い入れて作ろう。
薄焼き卵も………うん、まあ頑張る。
「………ざけんなっ!なんでお前が!!」
そんなふわふわとした思考のまま笑ったら、弟に思いっきり突き飛ばされた。
事の成り行きをこそこそ見守っていた野次馬の皆さんもビックリだよ。
イケメンくんが焦った顔で手を伸ばすのが、何故だかすごくゆっくりに見える。
俺のすぐ後ろは長い階段。
そこで押されたら当然………落ちる。
「千草!!」
さっきからずっと聞きたかった声が聞こえて、背中になにか硬い壁のようなものが当たる。
恐る恐る視線を上にあげれば、何故か泣きそうな顔をした渡邊さんがそこに居た。
太い腕が、しっかりと俺の体を支えてくれてる。
助けられたのは分かるけれど、なんで渡邊さんがここに居るのかが謎だった。
「渡邊さん………?」
「千草、ちぃちゃん………痛い所ない?平気?」
泣きそうな渡邊さんをこれ以上悲しませたくなくて、本当は思いっきり突き飛ばされた肩と捻ったかもしれない足が痛いけど、首を横に振る。
でも渡邊さんにはそんな俺の嘘はすぐ分かったみたいで、ますます辛そうな表情を浮かべた。
「愛永、千草を少し広い所に運んでやりなさい。あー、そこの子も逃げるな。今救急車と警察呼んだから、逃げ場無いよ。」
どうしようかと思っていると、聞き慣れない口調の聞き慣れた声が聞こえる。
見れば案の定階段をゆっくりと上ってくるオーナーと、後何故か俺の両親と担任が居た。
何その謎のメンバー。
「警察だなんて………そんな!」
母親が金切り声を上げたが、オーナーがひと睨みして黙らせる。
やっぱりオーナーはカタギの人じゃないよねと納得していると、渡邊さんは軽々と俺を抱いて上りきった先の広い所へと運んでくれた。
公衆の面前で恥ずかしくはあるけど、いつもの事だし何より横抱きじゃない。
俺は無駄で邪魔にしかならない恥じらいを捨てて、ギュッと渡邊さんの太い首にしがみついて身を委ねた。
でも警察って、民事非介入ってやつなんじゃないのかな?
チラリと俺を突き飛ばした犯人である弟を見る。
イケメンくんに腕を掴みあげられながら、今にも飛びかかって来そうな目で俺を睨んでいた。
「こんな所で故意に突き飛ばしておいて、甘ったれたことぬかしてんじゃねぇよ。」
聞き取りやすい低い声で、渡邊さんはそう言った。
いつもと違う口調にビックリしたけれど、不思議と怖くはない。
いや、怖い口調ではあるけど、それが俺に向かって吐かれたものではないと分かるから。
俺は大丈夫だよって気持ちを込めて、渡邊さんの背中を撫でる。
怒るということはエネルギーをすごく消費することだ。
渡邊さんにはこんなつまらない事の為に、疲れて欲しくなんてなかった。
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