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Fの嘘
⑪
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最後のじいさんの世間話を終了させ、店舗のシャッターを閉める。
田舎のじじばば話が長い。
まあ、世間話位が娯楽みたいな所あるし、仕方ないよな。
ふと空を見上げると、不気味な程に赤黒くなった逢魔が時。
何故だろうか。
妙に胸騒ぎがして止まらない。
俺は手早く締め作業をすると、居住スペースまで戻った。
「ただいまー。」
しかしそんな胸騒ぎを誤魔化すように、俺はいつもの調子で玄関を潜る。
自分の家の筈なのに、妙に緊張するのは何故か。
鳥が好きなシューヤが喜ぶから買った、俺らしくない可愛らしいデザインの揃いのスリッパに足を通す。
元々うちの村にも、以前居た街にも靴を脱ぐ文化は無かったが、シューヤが何となくこっちが良いと言ったので土間を作りスリッパを履くようになった。
存外足が楽になったので、俺自身も気に入ってる。
「どうした、シューヤ。挨拶は無しか?」
スリッパを履き終わり視線を上げれば、シューヤが困ったような表情で立っていた。
背中に氷を入れられたような寒気がするのは、どうか気のせいであって欲しい。
俺はそんな切実な思いを込めながら、いつものように両腕を広げる。
「せ、先輩?」
だがそんなもの、何の役にも立たない。
嗚呼、ついに来たんだなと思った。
分かっていた筈だ。
所詮は偽り、しかも期間限定。
いつかは絶対、終わりが来てしまうんだと。
「そうか………シューヤ、お前………」
みっともなく、声が震える。
夢は所詮夢だ。
いつか絶対覚めてしまうものだと、俺は覚悟していた筈だろう?
「思い出したんだな。」
おかえり、シューヤ。
そんな意味を込めながら、俺は力なくそう言った。
田舎のじじばば話が長い。
まあ、世間話位が娯楽みたいな所あるし、仕方ないよな。
ふと空を見上げると、不気味な程に赤黒くなった逢魔が時。
何故だろうか。
妙に胸騒ぎがして止まらない。
俺は手早く締め作業をすると、居住スペースまで戻った。
「ただいまー。」
しかしそんな胸騒ぎを誤魔化すように、俺はいつもの調子で玄関を潜る。
自分の家の筈なのに、妙に緊張するのは何故か。
鳥が好きなシューヤが喜ぶから買った、俺らしくない可愛らしいデザインの揃いのスリッパに足を通す。
元々うちの村にも、以前居た街にも靴を脱ぐ文化は無かったが、シューヤが何となくこっちが良いと言ったので土間を作りスリッパを履くようになった。
存外足が楽になったので、俺自身も気に入ってる。
「どうした、シューヤ。挨拶は無しか?」
スリッパを履き終わり視線を上げれば、シューヤが困ったような表情で立っていた。
背中に氷を入れられたような寒気がするのは、どうか気のせいであって欲しい。
俺はそんな切実な思いを込めながら、いつものように両腕を広げる。
「せ、先輩?」
だがそんなもの、何の役にも立たない。
嗚呼、ついに来たんだなと思った。
分かっていた筈だ。
所詮は偽り、しかも期間限定。
いつかは絶対、終わりが来てしまうんだと。
「そうか………シューヤ、お前………」
みっともなく、声が震える。
夢は所詮夢だ。
いつか絶対覚めてしまうものだと、俺は覚悟していた筈だろう?
「思い出したんだな。」
おかえり、シューヤ。
そんな意味を込めながら、俺は力なくそう言った。
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