スライム牧場番外編

かかし

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ナチオルド子爵令息の華麗なる転落⑧(⑫)

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衣装は互いの色を合わせた色合いで、デザインも対になるように。
誰がどう見ても愛人なんて軽いものじゃなく、パートナーとして分かる衣装。
出来上がってトルソーに飾られたそれを見た時に、俺は震えが止まらなかったし泣きそうになった。
嫌だったからじゃない。
寧ろ、嬉しかった。

「泣くのはまだ早いぞ。」

オズがぐずぐず泣いている俺を後ろから抱き締めて、宥めるように俺の眦にキスをした。
振り向いて頬にキスをし返しながら、確かに泣くのはまだ早い。
だってまだ、夜会に行った訳ではないのだから。

「靴は?」
「この間取った型に合わせてヒールを作らせた。履けるか?」
「まあ。長時間は難しいですけど。でも一応先に試させてくれ。」

高さにもよるが、ヒールは履けないことはない。
現在、女性がスタイル良く見せる為に履くことが主流のハイヒールであるが、元々はそこらに放置された排泄物を避ける為に生まれた物だ。
現在、とは言っても、今でもまだそういった村は存在する。
そんな場所で軍靴で歩くとどうしても靴底にこびり付いて臭いが落ちにくくなってしまうので、村に立ち寄る際や巡回する際はヒールを履くことがあった。
そう高くないヒールであればという前提条件有りだとはいえ、多少走ったりすることだって出来る。

「構わないよ。今から履くか?」
「あるの?」
「ああ。もう届いた。衣装と合わせてみるか?」

オズはそう言って俺を抱き上げながらソファに座った。
何が楽しいのか、オズは最近俺をよく抱き上げるようになった。
俺自身、そう軽い訳ではないのだが身長差が20cm近くあるからバランス取りやすいし、オズ自身が筋肉質で力も強いから抱き上げやすいんだろう。
………悔しい。

「………今度、合わせる。靴だけ履かせて。」

でももう諦める。
だと、俺はウィル以上にオズに勝てない。
いちいち悔しがっているだけで、バカらしい。
対抗するのは止めて、思う存分ワガママ放題してみることにする。
何故か知らないが、そうするとオズは喜んでくれるし。

「俺が?」
「うん。オズが。」

ほら、今だって。
嬉しそうに口角を上げて俺の太腿を撫でている。
変態くさい。
でもそんなオズのことを嫌いになるどころか、興奮してしまうのだから俺自身も変態なのかもしれない。

「持って来て。」
「そこにあるよ。取ってごらん。」

抱き上げたのはオズなのに。
俺はそう思いつつも文句ひとつ言わずに、オズが指した箱を取りに行く。
オズの言葉は絶対だ。
言うことをちゃんと聞いたら、がある。

「靴を脱いで。ここに足を伸ばして座って。」
「うん。」

オズは俺から箱を受け取ると立ち上がり、俺をソファに座らせた。
俺が靴を脱いですっと足を伸ばせば、オズが跪いて俺の足を取った。
たったそれだけでゾクゾクとしてしまうのは、セックスする時に、オズが教え込むように俺の足を舐めるからだ。
最初は恥ずかしかったし汚いし、何よりオズにそんなことをさせられないと思って俺は泣いて嫌がったのに、オズは気持ちイイことなのだと徹底的に教え込んだのだ。
酷い奴だ。
おかげで今、こうしているだけで腰が震えてしまう。

「………んっ!」
「どうした?キスをしただけだろう?」

そう思っていたら足の甲に軽いキスをされて、思わず声が出た。
ニヤニヤすんなよ、へんたい。

「早く!履かせろよ!」
「はいはい。そう睨むな。」

睨みつけてやったのに、オズは楽しそうな態度を崩さないまま俺の右足にヒールを履かせた。
オーダーメイドだから違和感も何もないヒール。
それなのにどこか不相応に見えるのは、俺がまだ覚悟が足りないからか。

「夜会では、高らかに鳴らしなさい。」

しかしそんな俺の思考を読んだかのように、オズはそう言って俺と目を合わせた。
先程までのにやついた笑顔を引っ込めて、真摯な眼差しで。

「【子爵令息】から【準貴族のパートナー】という、ともすれば舌を嚙み切ってしまいたい程の転落劇だ。嘲笑する者も居るだろう。見当違いな慰めの言葉を掛ける者も居るだろう。」

そして俺の左足を手に取ると、そう言ってゆっくりとヒールを履かせた。
これはただの衣装ではなく武器なのだと、そう言いたいのだろう。

「そういった奴らに見せつけてやりなさい。のパートナーであることが、どういうことかと。」
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