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ナチオルド子爵令息の華麗なる転落⑨(⑬)
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俺には唯一と決めた相手が居た。
部下だしそこそこの年の差だったし何より既婚者だったのでそうそう手は出せなかったのだが、それでも俺は彼を愛していた。
騎士団団長として、目に見える程の贔屓はしていない。
しかしながらプライベートで二人きりで飲みに行ったり食事をしたり、非番の日が合った時は買い物に出掛けたりと可能な限りのアプローチはしていた。
彼もまんざらでもなさそうな態度をしていたように思えてたから、あと一歩。
あと一歩だと思っていたのに。
『俺、騎士団辞めようと思います。』
それなのに、彼は後ろ向きな性格だったのに妙に思い切りが良くて。
静止も聞かずにそう言うと、とっとと騎士団から出て行ってしまった。
まるで、もう用は無いと言わんばかりの言動。
しかもその後、彼は怒涛の勢いで全てを捨てた。
家族も家庭も、何もかも。
そうして俺が全ての流れを聞いた時にはもう時すでに遅し。
ふらりと集合馬車に乗ったという姿が、彼の………ジェームズの最後の目撃情報だった。
この一連の流れは、騎士団にかなりの衝撃を与えた。
ジェームズの部下だった団員達は勿論だが、他の団員達もだ。
あまりの思い切りの良さに、もしかして………と。
そこから少しして、ナチオルド子爵から居場所は分かっているからもう探さなくても大丈夫だと言われた。
ジェームズの意思を尊重して無理に連れ戻すようなことをしたくない。
あの子から連絡があるまではどうか探さないで欲しいとまで言われた。
意味が分からない。
一人を嫌う子なのに、一人にさせるのかと私は憤慨した。
ただ騎士団として無駄に時間を割く訳にはいかない。
大々的に探すことは止めにしたが、個人で探すことは止めなかった。
だが不気味な程に見つからない。
何一つ情報が落ちて来ない。
焦りだけがじりじりと積もる中で、いくら嫡男じゃないにしてもそろそろ結婚しろと両親に怒鳴られてしまう。
跡継ぎ問題も出ない分、パートナーでも構わない。
そう怒鳴り散らされて俺は渋々夜会に出ることにした。
とはいえ、あの子以外を俺のパートナーにするつもりはなかったので、ただの冷やかしだ。
肉食モンスターのようなギラギラとした視線をスルーして壁に寄りかかり、おしゃべりマダム達の噂話に耳を傾ける。
「聞きました?あのモリス市長が、とうとうパートナーを見付けたそうですわよ。」
「まぁ!ではもしかして今宵はその方と一緒なのかしら。」
ウキウキとマダム達が囀る。
この夜会の主役は、準貴族達だ。
本来であれば最初に会場入りする立場だが、この夜会だけは立場の低い者が最後となる。
噂のモリス市長は、そろそろか………。
俺はそんなことをぼんやりと考えながら入口を見て、そして目を見開いた。
カツンッとヒールの音が響く。
モリス市長にエスコートされ、堂々と入って来た彼のパートナーが履いたヒールの音だ。
対になるように誂えられ、そして互いの色を入れた衣装。
背筋を真っ直ぐにして顔を上げて凛々しく歩くその姿は―――
「ジェームズ………?」
ぐしゃりと、心臓が潰れた心地になった。
息が上手く出来ない。
認めたくない現実が、目の前にあった。
部下だしそこそこの年の差だったし何より既婚者だったのでそうそう手は出せなかったのだが、それでも俺は彼を愛していた。
騎士団団長として、目に見える程の贔屓はしていない。
しかしながらプライベートで二人きりで飲みに行ったり食事をしたり、非番の日が合った時は買い物に出掛けたりと可能な限りのアプローチはしていた。
彼もまんざらでもなさそうな態度をしていたように思えてたから、あと一歩。
あと一歩だと思っていたのに。
『俺、騎士団辞めようと思います。』
それなのに、彼は後ろ向きな性格だったのに妙に思い切りが良くて。
静止も聞かずにそう言うと、とっとと騎士団から出て行ってしまった。
まるで、もう用は無いと言わんばかりの言動。
しかもその後、彼は怒涛の勢いで全てを捨てた。
家族も家庭も、何もかも。
そうして俺が全ての流れを聞いた時にはもう時すでに遅し。
ふらりと集合馬車に乗ったという姿が、彼の………ジェームズの最後の目撃情報だった。
この一連の流れは、騎士団にかなりの衝撃を与えた。
ジェームズの部下だった団員達は勿論だが、他の団員達もだ。
あまりの思い切りの良さに、もしかして………と。
そこから少しして、ナチオルド子爵から居場所は分かっているからもう探さなくても大丈夫だと言われた。
ジェームズの意思を尊重して無理に連れ戻すようなことをしたくない。
あの子から連絡があるまではどうか探さないで欲しいとまで言われた。
意味が分からない。
一人を嫌う子なのに、一人にさせるのかと私は憤慨した。
ただ騎士団として無駄に時間を割く訳にはいかない。
大々的に探すことは止めにしたが、個人で探すことは止めなかった。
だが不気味な程に見つからない。
何一つ情報が落ちて来ない。
焦りだけがじりじりと積もる中で、いくら嫡男じゃないにしてもそろそろ結婚しろと両親に怒鳴られてしまう。
跡継ぎ問題も出ない分、パートナーでも構わない。
そう怒鳴り散らされて俺は渋々夜会に出ることにした。
とはいえ、あの子以外を俺のパートナーにするつもりはなかったので、ただの冷やかしだ。
肉食モンスターのようなギラギラとした視線をスルーして壁に寄りかかり、おしゃべりマダム達の噂話に耳を傾ける。
「聞きました?あのモリス市長が、とうとうパートナーを見付けたそうですわよ。」
「まぁ!ではもしかして今宵はその方と一緒なのかしら。」
ウキウキとマダム達が囀る。
この夜会の主役は、準貴族達だ。
本来であれば最初に会場入りする立場だが、この夜会だけは立場の低い者が最後となる。
噂のモリス市長は、そろそろか………。
俺はそんなことをぼんやりと考えながら入口を見て、そして目を見開いた。
カツンッとヒールの音が響く。
モリス市長にエスコートされ、堂々と入って来た彼のパートナーが履いたヒールの音だ。
対になるように誂えられ、そして互いの色を入れた衣装。
背筋を真っ直ぐにして顔を上げて凛々しく歩くその姿は―――
「ジェームズ………?」
ぐしゃりと、心臓が潰れた心地になった。
息が上手く出来ない。
認めたくない現実が、目の前にあった。
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