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夢の中のお茶会
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ふと、クィル神官は気が付けば森の中に居た。
ウィルの家の裏の森に似た、少し薄暗い見慣れた森の中。
クィルは半ばスキップするような足取りで進んで行く。
この場所は、子供の姿の方が良い。
そう思いながら森の奥へ奥へと進む程、すらりと長い手足は縮んでいき身体つきも随分と華奢になる。
一度足を止め、掌を見つめる。
すっかり小さく細い、頼りのない掌になった。
普通ならば嫌悪するところであるが、今、この場所では都合が良い。
身体が戻って、初心にも戻れる。
多分ね。
「お久しぶりです。」
1歩。
足を踏み出すだけで、どこからともなくテーブルと椅子がぽんと現れた。
しかしクィルは驚く様子も見せずに至って当たり前に椅子に座ると、誰も居ない空間に向かってにっこりと笑った。
「破壊の神様。」
「ああ、本当に久しいな………」
クィルは笑顔を崩さないまま、相手の名を呼んだ。
愛と破壊の神、その名前を。
その瞬間。
何も無かったはずの空間がじわりと揺らいだかと思えば、大人のクィルに良く似た男性が向かい側の席に腰を掛けた。
しかしその微笑みは、クィルよりも随分大人びて見える。
「今回も、私の姿ですか。」
「ああ。随分と馴染みが良い。」
「貴方様の愛し子ですから。しかし、笑い方ひとつでこうも印象が変わるものなんですね。」
ぺたぺたと自分の顔を触りながら、クィルはそう言った。
目の前に居る存在はどう見ても自分なのに、口角の上げ方、目の伏せ方、その一つ違うだけでこうも印象が変わるものなのかと毎回感心してしまう。
今まではふーんと思いながらスルーしていたものの、今はちょっと勉強してみようかなと思ってしまう。
「アーサーは、元気か?」
ふと、破壊の神はそう呟いた。
アーサーは創造の神も愛してはいたが、それ以上に破壊の神を愛していた。
それが嬉しくてついつい手を焼いてしまい、結果として、嫉妬した創造の神が加護を奪うことになってしまった。
「元気ですよ。お会いになられないので?」
創造の神も破壊の神も、特定の存在相手であればこうして夢を渡れる。
アーサーもその特定の存在に含まれる筈なのだから、夢を渡れる筈だ。
破壊の神も、そして創造の神も。
「………会う資格が、無いだろう。」
ぽつりと、破壊の神はそう言って迷子の子供のような表情を浮かべる。
でもそれ、私の貌なんですよね。
クィルはそう思いながら、美味しいお菓子とお茶を想像する。
あの日のショコラータと思えば、テーブルの上にオランジュ・ショコラータと紅茶がぽんと現れた。
しょんぼりとしている破壊の神を放って、クィルはショコラータに手を伸ばした。
夢の中だから、現実に何の影響もない。
食べ放題の飲み放題だ。
「神たる貴方様に資格が無いのであらば、誰もアーサーに会う資格が無いことになりますよ。」
「それはそうだ。だが、平等ではなかったが故にアーサーは………」
平等であるべきだった。
せめて姉の方に行くようにと言うべきだった。
その所為で、アーサーの加護は奪われた。
その所為で、姉に後悔の念を抱かせてしまった。
「考え過ぎでは?それに、本人が楽しんでいるようなのでそこまで気に病まなくても良いでしょう。」
最近は飲み食い出来ることも発覚したので、ちょいちょい飲み会だってしている。
コミュニケーション能力がかなり高いので、最初から村に居たのかと思ってしまう程に馴染んでいる。
何より………
「破壊の神様と創造の神様には申し訳ないのですが、平等でなかったおかげでアーサーに会えたので。」
クィルはにっこりと、そう言って笑った。
思いもよらない言葉だったのか破壊の神は目を丸くし、そしてふっと微笑んだ。
「随分と、お気に入りなんだな。」
「ええ!大好きなんです。一目惚れというやつですね。」
「顔が分からないのに?」
「顔が分からないこそですよ。」
なんだかんだ、ヒトは見た目に左右される。
中身をしっかり知ってしまえばそうでもないのだが、どうしても第一印象というものは深く深く刻まれてしまう。
その点、アーサーには顔という雑念がなかったので、クィルは体格と性格だけを判断材料に出来た。
今顔がくっついて、それが好みの顔じゃなくても大丈夫だと言えるくらいには惚れてる。
「お前は本当に変な子だな。」
満面の笑みでつらつらと喋るクィルに、破壊の神は呆れたようにそう呟いた。
失礼な。
「貴方の愛し子なのですから、他者とは違って当たり前でしょう?」
ウィルの家の裏の森に似た、少し薄暗い見慣れた森の中。
クィルは半ばスキップするような足取りで進んで行く。
この場所は、子供の姿の方が良い。
そう思いながら森の奥へ奥へと進む程、すらりと長い手足は縮んでいき身体つきも随分と華奢になる。
一度足を止め、掌を見つめる。
すっかり小さく細い、頼りのない掌になった。
普通ならば嫌悪するところであるが、今、この場所では都合が良い。
身体が戻って、初心にも戻れる。
多分ね。
「お久しぶりです。」
1歩。
足を踏み出すだけで、どこからともなくテーブルと椅子がぽんと現れた。
しかしクィルは驚く様子も見せずに至って当たり前に椅子に座ると、誰も居ない空間に向かってにっこりと笑った。
「破壊の神様。」
「ああ、本当に久しいな………」
クィルは笑顔を崩さないまま、相手の名を呼んだ。
愛と破壊の神、その名前を。
その瞬間。
何も無かったはずの空間がじわりと揺らいだかと思えば、大人のクィルに良く似た男性が向かい側の席に腰を掛けた。
しかしその微笑みは、クィルよりも随分大人びて見える。
「今回も、私の姿ですか。」
「ああ。随分と馴染みが良い。」
「貴方様の愛し子ですから。しかし、笑い方ひとつでこうも印象が変わるものなんですね。」
ぺたぺたと自分の顔を触りながら、クィルはそう言った。
目の前に居る存在はどう見ても自分なのに、口角の上げ方、目の伏せ方、その一つ違うだけでこうも印象が変わるものなのかと毎回感心してしまう。
今まではふーんと思いながらスルーしていたものの、今はちょっと勉強してみようかなと思ってしまう。
「アーサーは、元気か?」
ふと、破壊の神はそう呟いた。
アーサーは創造の神も愛してはいたが、それ以上に破壊の神を愛していた。
それが嬉しくてついつい手を焼いてしまい、結果として、嫉妬した創造の神が加護を奪うことになってしまった。
「元気ですよ。お会いになられないので?」
創造の神も破壊の神も、特定の存在相手であればこうして夢を渡れる。
アーサーもその特定の存在に含まれる筈なのだから、夢を渡れる筈だ。
破壊の神も、そして創造の神も。
「………会う資格が、無いだろう。」
ぽつりと、破壊の神はそう言って迷子の子供のような表情を浮かべる。
でもそれ、私の貌なんですよね。
クィルはそう思いながら、美味しいお菓子とお茶を想像する。
あの日のショコラータと思えば、テーブルの上にオランジュ・ショコラータと紅茶がぽんと現れた。
しょんぼりとしている破壊の神を放って、クィルはショコラータに手を伸ばした。
夢の中だから、現実に何の影響もない。
食べ放題の飲み放題だ。
「神たる貴方様に資格が無いのであらば、誰もアーサーに会う資格が無いことになりますよ。」
「それはそうだ。だが、平等ではなかったが故にアーサーは………」
平等であるべきだった。
せめて姉の方に行くようにと言うべきだった。
その所為で、アーサーの加護は奪われた。
その所為で、姉に後悔の念を抱かせてしまった。
「考え過ぎでは?それに、本人が楽しんでいるようなのでそこまで気に病まなくても良いでしょう。」
最近は飲み食い出来ることも発覚したので、ちょいちょい飲み会だってしている。
コミュニケーション能力がかなり高いので、最初から村に居たのかと思ってしまう程に馴染んでいる。
何より………
「破壊の神様と創造の神様には申し訳ないのですが、平等でなかったおかげでアーサーに会えたので。」
クィルはにっこりと、そう言って笑った。
思いもよらない言葉だったのか破壊の神は目を丸くし、そしてふっと微笑んだ。
「随分と、お気に入りなんだな。」
「ええ!大好きなんです。一目惚れというやつですね。」
「顔が分からないのに?」
「顔が分からないこそですよ。」
なんだかんだ、ヒトは見た目に左右される。
中身をしっかり知ってしまえばそうでもないのだが、どうしても第一印象というものは深く深く刻まれてしまう。
その点、アーサーには顔という雑念がなかったので、クィルは体格と性格だけを判断材料に出来た。
今顔がくっついて、それが好みの顔じゃなくても大丈夫だと言えるくらいには惚れてる。
「お前は本当に変な子だな。」
満面の笑みでつらつらと喋るクィルに、破壊の神は呆れたようにそう呟いた。
失礼な。
「貴方の愛し子なのですから、他者とは違って当たり前でしょう?」
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