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エネミースレイヤーズ

2-12「はいはい、降参するお!」

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 こちらに向かってくる騎士は1体。

【光の騎士 LV:21+5 弱点:闇】

 【+5】っていうのが君主のジョブにある指揮効果なのだろうか? それでもLV26ならそこまで強敵という訳では無い。むこうも様子見なら油断をする気は無いけれどもそれなりの力で戦おう。

 僕は素早く騎士に近づくと盾で【バッシュ】を食らわせ、体勢を崩した所に【ハードヒット】で攻撃をした。 わっ、モンスターと違って斬られても怯まない!? すぐに反撃してきた!! 慌てて盾で敵の剣を防ぐと再び【ハードヒット】で攻撃した。鎧の隙間に剣が刺さって、光の騎士は消えていった……

「まぁ、一方的にやられてしまいましたわ……盾も剣もスキルをお持ちのようね。どうやらLV30以上の強さがありそうですわ。……それでは次はどうでしょう?」

 続けて剣と盾を持つ騎士1体を先頭に槍を持った騎士が2体こちらに向かってくる。これは馬鹿正直に正面で戦っていると後方の騎士の槍でくじ刺しにされてしまうね。

「なんだか思惑通りに手札をオープンさせられている気がするお」

 僕は【クイック】【プロテクション】【身体強化C】を使うと、先頭の騎士に向かい盾で【バッシュ】を使い後方へ大きくよろめかせると、すぐにターゲットを左後方の槍の騎士に切り替えた。

「スライムに使う機会は無かったけど、練習の成果を試させてもらうお!!」

 敵は強化魔法とスキルを使ったスピードの速さに反応が出来ない、僕は容赦なく【ハードヒット】で攻撃……回転の勢いで続けて【ハイスラッシュ】を使った二連撃で槍の騎士を倒した。

「ふっ、決まったお」

 威力のある【ハードヒット】の勢いがあるうちに素早い【ハイスラッシュ】を使うと、スキル後のわずかな硬直を無視して次の攻撃に移れるコンボ攻撃になる事に気づいて練習をしたんだよ。

 体勢を立て直しこちらに向かって来る盾の騎士に再び【バッシュ】でよろめかせると、最初と同じ要領でもう一方の槍の騎士を倒す……そして残り1体となった騎士は、自己バフで強化された僕の敵では無かった。

「すごいですわ! あっという間に3体も倒せるなんて!! それにスキル以外に魔法も使いましたね……まるでセバスチャンみたいですわ。これは是非、限界を見たいですわね」

 続いて剣盾の騎士2体、弓を持った騎士が2体が相手のようだ……盾持ちが2体の後ろに距離を取った弓2体だと、さっきの槍のような戦い方は出来ないな。考えているうちに弓騎士がこちらに向かい矢を射る……まだ強化は切れていないので的を絞らせないように動きながら盾の騎士に近づく。

「連続バトルのイベントとか、僕にはハイレベルすぎるお……現実だと回復時間も無かったお」

 盾の騎士はもの凄い速度で盾を繰り出してくる……【バッシュ】だ、そりゃ相手も使ってくるよね。僕は一人しかいないからこれを貰って体勢を崩すのは命取り……なので回避だ!! まるでラグビー選手の様に相手の盾と僕の体を入れ替えるように回転すると、剣の柄頭で頭部側面を殴りつける。
 おっと危ない、もう1体の騎士がすかさず攻撃された騎士を庇うようにフォローに入ってくる。かなり早い……【ハイスラッシュ】か!? 躱すのは無理だと感じて盾で受け止める。

「ぐっ、自分が使うと心強いスキルも相手に使われると恐ろしいお」

 すると先程の攻撃から立ち直った騎士が、がら空きの右側面から攻撃をしてくる、こっちも【ハイスラッシュ】か!? 盾で敵の攻撃を受けたまま右からの攻撃を【パリィ】で弾くと相手の体勢が少し崩れる。
 その隙に真っ正面の騎士へ【バッシュ】を使い強く後方へ押し出し、【パリィ】体勢を崩していた騎士へ振り返り【ハードヒット】【ハイスラッシュ】の2連撃を当てる。さすがに盾で防がれたが、その盾はその攻撃で切り裂かれて使い物にならなくなった。

「!?」

 その途端足下に矢が刺さる……しかも1本では無い、次々に矢がこちらに飛んでくる……これは弓のスキルか? たしか『ダンジョンクリスタル』に連続で矢を射るスキルもあったな。ぐあっ、太ももに1本刺さった!! 幸い僕の防御力の方が高かったせいか、深く刺さらず矢は地面に落ちた。

「大丈夫ですの? 降参するなら早めに言ってくださる?」

「……お気遣いありがとうだお、気持ちだけ受け取っておくお」

 本気で心配しているような口ぶりに、むしろ負けてたまるかと言う気持ちになる。しかしその間に前衛の騎士2体は立ち直って弓攻撃が終わるタイミングでこちらに向かって来る。

「まいったお、敵ながら良い連携しているお」

 でも騎士の1体は既に盾無し……こちらを攻めない手は無いね……僕は念の為にバフをかけ直すと盾持ちの方へ駆け出した。盾持ちは僕の接近に合わせて【バッシュ】を使う。後ろの盾無しは僕が先程のように左右どちらかに回避すると思っているだろう……どちらでも対応出来るよう剣を構えている。

「アイキャンフラ~イだお!!」

 僕は第3の選択肢を選んだ……大きくジャンプして【バッシュ】で盾を大きく突き出している騎士の頭を踏んで盾無しに飛んで迫る……きっと盾持ちは『俺を踏み台にしたぁ!?』と焦っているに違いない……予想外の接近に盾無しは対応出来ず、僕はその肩口に剣を深く突き立てると、盾無しはそのまま消えていった。

「関係ないって顔をしているのは命取りだお!!」

 僕の予想外の行動を見て慌てて……フルフェイスなので表情は分からないけれど……矢を番える弓騎士に、スローイングダガーを【ハイスロー】で投擲する、ダガーが2体の弓騎士……それぞれ顔と喉……に命中すると、それが止めとなり消えていった。僕は再び剣と盾を装備すると残った剣盾騎士を倒した。

「剣と盾が一瞬でダガーに切り替わりましたわね、わたくしの知らない能力までお持ちなんて凄いですわ。おまけに急所を一撃……投擲の技術まで超一流じゃありません事? セバスチャン並みに多彩で器用ですわ」

「まいったお、完全に相手の思惑通りに進んでいるお……このままだと僕が丸裸にされてしまうんだお」

 困ったけれどセレブなお嬢様に全裸を強要されるとか……ちょっと興奮するかも? はっ、いけないいけない、僕は紳士なキモオタだから方向性を間違えないよう気をつけないと!!

「貴方ほどの相手に手加減は失礼にあたりますわね、それでは最後は全力でお相手いたしましょう」

「いえ、そのまま手加減し続けてくれて結構だお」

 残りの騎士は槍持ち2体、弓持ち2体、そして……縦ロール。その左手が輝いたと思ったら大きな盾が出現していた。盾の中央上部に剣の柄が出ていて、それを右手で引き抜くと美しい剣の刀身が現れた……うーん、悔しいけれど格好いい。

 それにしても光輝くエフェクトは【アイテムボックス】のような収納系スキル、魔法では無さそう……あの装備自体がスキルか?

「それでは行きますわ」

 むむ、何かスキルを使った!? 自分の使用経験からそれを感じると、縦ロールはもの凄い早さで僕に斬りかかってきた!! とっさに盾で受け止めたけれど、わっ、少し盾に剣が食い込んでいる……こちらの防御力より相手の攻撃力が上回っているよ!!

「くっ、僕は受けより攻め側のはずなのに押されてるお!!」

「よく受け止めましたね、褒めて差し上げますわ」

 これは【身体強化】系のスキルだ……多分僕の使う物より効果が高い!? でも、だとするとSP消費は相当な量のはず、最初にユニークスキルで大量のSPを使用したはずなのに……あ、そうか、戦闘中よりもジッとしている方がSP回復速度が高い。僕の戦いを観戦している間に縦ロールのSPはバッチリ回復してしまったのか。

「あら? お気づきになりまして? 最初にゆっくりセバスチャン達の戦いを見学していた事で有利になってしまったのは、わたくしの方でしたのよ」

「そんな時間、誤差の範囲でいずれ同じ状況になっていたお。むしろ戦いの途中に急に強化された方がキツかったお……ハンデに感謝だお」

 縦ロールの剣と僕の盾で押しくらまんじゅうしながら話しているうちに、両サイドから槍騎士が向かって来る……この会話も作戦のうちって事ですか!! そのまま剣に向かって盾で【バッシュ】を使うが、それを察してすぐに後退する……戦いの経験も豊富なようだ。

「ふふふ、なかなか仰いますね……でも、これからは先程のようには行きませんわよ」

 そして槍騎士2体による攻撃が始まる……槍のスキルなのか激しい乱れ突きを何とか盾で受け止める。2体が交互に手数の多い乱れ突きを放ってくるため防戦一方になる。盾で受け止める度にじりじり後退をしていくと槍騎士側も息を合わせて後退、その途端に今度は後方にいたはずの弓騎士2体が左右に分かれて矢の乱れ打ちをしてきた……盾で上方を防御するも何本か受けきれずに僕に当たった。

 こうして味方のSPを管理しつつ攻撃の手を休めない戦術なのか……HPがじりじり減ってくる。嫌らしい事に乱れ打ちの中に何本かやばそうな輝くオーラを纏った矢が飛んでくるので、ダメージを無視して突撃するのは危険そうだ。

「これは新手のいじめだお……僕はダンジョンでもいじめられるんだお」

「人聞きの悪い事を仰らないで頂きたいですわ!」

 防御を上に集中していると、隙ありとばかりに縦ロールが特攻してくる!! 縦ロールが近づいても矢の雨が止まらず、矢は僕にだけ当たるように飛んでくる……これも指揮能力なの!? 矢のダメージより縦ロールの剣の方が大きいので、急所に当たる攻撃以外の矢は我慢して剣を受ける。ううっ、痛いよ~!

「もう一度言いますけれど、降参するなら早めに仰って下さいね」

「はいはい、降参するお!」

「あら嫌ですわ、冗談がお上手ですこと」

「いったい、どうしろって言うんだお!!」

 これはまずい、ジョブがキモオタのままだと反撃すら出来そうに無い……少しSPが心許ないけれど……僕は盾で【バッシュ】を使うそぶりを見せる。スキル発動の予兆を察知した縦ロールはそれに引っかかり後退すると、先程と同じように槍騎士が向かって来る……今だ!!

 僕はユニークスキル【ライトニングワールド】を使うと……



   世   界   が   停   止   し   た




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