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ウィナーズ

3-5「な、なんじゃこりゃーーーっ!!」

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 一通り実践を交えた戦闘のレクチャーも終わって、1Fのリビングに戻ると皆でおやつタイムとなった。ちなみに茜は私服に戻っている……残念……あ、いや、この服も可愛いけれどね、年頃の男子としては色っぽいほうが良いかなぁなんて。
 最近はこうして賑やかな時間が多くて毎日が楽しい……等と、ゼロカロリーコーラを飲みながら物思いにふけってしまった。

「そういえば巧美、エナジーコアってどうしたの? もう使ってみたの?」

「そうだ、それだよ。どうしようかと思って保留していたんだ」

 昨日のうちに【エナジーコア】を試してみた所、ある程度の望みが叶うという凄い代物だった……だったんだけれど全てが叶うわけではなく高望みしすぎると何も敵わないで終わってしまうと言うシビアな物だった。

「下手な要求をすると何も無しになるからよく考えないといけないんだ。でも過去ログを見ることは出来るから参考にはなるよ」

「それはアレだよね? 『エナジーは神によって生み出された したがって神の力を超える願いは叶えられん!!』って事だよね?」

「いや、神様がこれを作ったのかはわからないけれど……茜はどうしてそんなに嬉しそうなの?」

 茜の言う事はともかく確かに大きすぎる要求は通らないようだ。多少の違いはあれど過去ログから選ばれた願いの内容は大体こんな感じだ。

【不老不死になりたい】× 駄目っぽい。

【○○を生き返らせて欲しい】× これも駄目っぽい。

【○○を殺して欲しい】× 多分、使った本人に作用する内容じゃないと駄目なのかも?

【若返りたい】○ 何歳若返ったかは不明。

【最強の武器 (防具)が欲しい】× 駄目らしい。最強のスキルも駄目だった。

【強い武器 (防具)が欲しい】○ どのくらい強いかは不明。ちなみに強いスキルもアリなようだ。

【エクスカリバーが欲しい】× 存在していないからなのか、願いが大きすぎたからなのかは不明。

【過去に戻りたい】× タイムマシーンが欲しいってのも駄目だったみたい。

【世界最強になりたい】× とにかく最強というワードが駄目っぽい。

【強くなりたい】○ どのくらい強くなったかは不明。

【可能な限りレベルを上げて欲しい】○ 願いの大きさをコアに委ねる方が賢いのかも?

「一応参考になる内容もあったのでどれが良いか相談したかったんだ」

 他にも【イケメンになりたい】【背を伸ばして欲しい】【薄毛を治したい】【ひとつ上の男になりたい】【タイトルのドラゴンを動かす】【未来を見る】【パワーをUPする】【ギャルのパンティーがほしい】など、苦労してダンジョンを攻略したのにそれをお願いしたの? なんて物もあったけれど割愛したよ。

「みんなと強さに差がつくのはあまり良くない気がするから、僕が……自分が強くなる系は無しかなと思う」

「確かにそうだね、RPG系のゲームでも途中参戦なのにレベル1のキャラとかは真っ先に補欠行きだもん? PTの強さが違いすぎるのは困るよね」

「みゅーはずっとデスティニーにいけるパスポートが欲しい」

 やっぱり茜も僕と同意見のようだ……美百合はデスティニーで怖い目に遭ったのに良い度胸だよね。

「強い武器、防具はアリだと思うけれど多分レベル制限で装備出来ない罠があると思うよ」

「あ、それはあるかも? 危なかった~」

『ふん、我は既に完璧な強さを備えているから必要ないな』

 装備レベルの制限を忘れていた、やっぱり茜は頼りになるなぁ……それにしてもゆきむらの自信は一体どこからくるのだろう? 愛らしさは完璧だと思うよ。

 色々相談した結果【僕が使える最も強い装備】を願うことにした。これならレベル制限も大丈夫だろうし高望みしすぎてもいないと思う。穴は無いよね? きっと。

「それじゃあ使ってみるよ」

「うん、どきどきだね」

「みゅーはわくわくだよ」

『早くやるが良い、我は早く帰っててれびじょんが見たいのだ』

 僕はダンジョンを消滅させた後にいつの間に【アイテムボックス】に入っていた光り輝く謎の物体? 【エナジーコア】を手に取るとそれを使用した。

【エネジーコアを使用しますか? YESの後でエナジーコアを使用して願望を具現化します。願望を声に出して下さい。注意:願望の内容によっては具現化出来ずコアが消費されます YES or NO】

 頭の中に聞こえるメッセージ、僕はイエスを選択して……

「僕が使える最も強い装備を下さい」

 ……と敬語で答えた。いや、何となく敬語になっちゃうよね? すると僕の目の前の【エナジーコア】の輝きが増した。

【ERROR……使用者のジョブを複数確認、ランダムで使用者の願望を具現化します】

 え? エラー? ランダム? 一体どういう事? 僕の疑問に答えてくれることも無く光が増して何も見えなくなった。


 やがて光が収まると僕の手には服が出現していた……これは一体? 広げてみるとチェックのシャツにジーパンとリュック? だった。

「これは……ただの服?」

「何だかこれって……ううん、まだ想像だからわからないよね? 巧美、鑑定してみよう?」

「うん、そうだよね?」

 なんだか僕が想像していた感じと違う……茜は何やら心当たりがありそうだけれど、とりあえず出てきた服を【鑑定】する事にした。

【UR:アルティメットキモオタフォーム】

【ジョブがキモオタのみ装備可能】
【使用者のレベルに応じてすべての能力が上がる】
【デバフ、状態異常に高い耐性を得る】
【使用者をリーダーと認める者にも僅かだが恩恵がある】
【このフォームの上から防具を装備可能】
【シャツはジーパンの中に入れないと効果が出ない】
【シャツは装備の度に色が変わる】
【リュックは防具を着用する時に邪魔にならないように消える】
【リュックのキーホルダーは今一番推している作品関連の物になる】
【リュックの中に入れた物は乱暴に扱っても破損せずにグッズの状態を保つ】
【リュックの両サイドにはポスターを差し込める専用のポケットを完備、サイズに合わせて固定され決して潰れない】

「な、なんじゃこりゃーーーっ!!」

「ふわっ!? おにぃ、脅かさないでよ!!」

 ジョブを指定しなかったのは僕が悪かったけれど、よりにもよってキモオタをチョイスするなんて酷すぎる!! しかも能力の説明で真ん中から後半部分とかほぼ要らないよね!? これは悪意を感じます!! やり直しを要求するよ!!

 装備の鑑定結果を茜に説明するとツボに入ったのかお腹を抱えて苦しみだした。笑うなんて酷い!!

「っっっで、でも巧美、装備としてはっっぅ……か、かなり強いと思うよ。通常防具のしたに付けられてっっっ、仲間にも効果があってっっ、装備し続けても強くなるなんてチートだよ……プークスクス」

「茜、笑いすぎ!!」

「ご、ごめん……で、でもププーッ」

 しばらく待っても茜の笑いは収まる事は無かった……そんなに可笑しいの? 酷すぎる!! もう怒ったぞ!!
 僕はキモオタにジョブチェンジすると【アルティメットキモオタフォーム】を【クイックイクイップメント】で装備、すぐさま荒ぶる鷹のポーズを取った。

「っっっっっ!!!??」

 それを見た茜は更に激しく苦しみだした。僕の前に手を突き出してストップの仕草をしているのだけれど声をうまく出せないようだ。

「や、やめて、お願い!!」

「一体何を止めるんだお? 僕はただ新しい装備のお披露目をしただけなんだお」

「ひぃひぃ……悪かったから、もう本当に止めて」

 茜が目を背けると僕は【クイック】を使って高速移動で茜の正面に回り込む。そして今度は命のポーズを取った……再び茜のツボに入ったようで苦しみは終わらない。
 美百合……にはキモオタになると姿が変わる事を話している……は何が面白いのかわからずにぽかーんとしていた。


「とにかく、その装備ならアイシャ殿とのダンジョン探索で戦力アップになると思えば悪くないと思うでござる」

 しばらくして……茜は精神的苦痛に耐性のある腐女子にジョブチェンジしていた。苦痛と感じるくらい苦しかったのかな? 可愛くオシャレな服のギャップが凄いよ。

「確かにそうだお。実際にダンジョン探索している時間はキモオタの方が長いお」

 最初は酷いって思ったけれど実利を取るならばこれで良かったのかもしれない。この【アルティメットキモオタフォーム】を装備してから能力を見るとだったのがに上がっていた。
 今後もレベルの上昇と共に能力が上がるのならば最終的にキモオタが最強になってしまうのかもしれない……うーん、良かったのやら悪かったのやら?
 美百合は僕のジーパンからはみ出る脇腹をぷにぷにしている……そういえば、エクスプローラーズになる前はよくこうされていたっけ?

「本来エナジーコアを手に入れたのはあくまで”孤高の戦士ナタク”なので、巧美殿のその服はあくまでファッションという事にしておくのが良いでござるな」

「ううっ、これじゃあ本当にキモオタみたいだお」

 まぁ、キモオタなのだけれどね。

「みゅーはどんな格好でもおにぃの事が好きだよ」

「ありがとうだお」

 でも美百合は美百合で何でジョブをブラコンにしているの?



 果たしてせっかくエクスプローラーズになったのに、真の意味で僕がキモオタを脱却出来る日は来るのだろうか?



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第15回ファンタジー小説大賞にエントリーしました。
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火、木、土(ストックにゆとりがあれば日)の週3~4回更新となります。

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