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漂流編

探索 01

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 一体どの位の時間が経ったのか……何時間も経ったような気がするが、普通に考えれば1時間も経っていないよな?
 気がつけば身体に掛かっていた重さは無くなり、コックピット内の軋む音も消えていた。

『ダーリン、ネジコが一生懸命、機体制御を頑張っていたのにデカ乳女と乳繰り合ってるとか酷すぎるニョ』

「(って事はもう危険域は脱したと言う事か、よくやったネジコ)」

『あぁん、苦情をガンスルーされたのにお褒めの言葉一つで喜んじゃうネジコはチョロインだニョ』

 視界の端でクネクネしているネジコ……どうやら何とかなったらしい。機体の姿勢が仰向けから直立するような姿勢に変わるようで、それに合わせて俺達の姿勢もそれに習うように変わった。

「わっわっ」

 俺に身体を預けていたフレーナが急に身体を下に引っ張られそうになり、抱きつく腕の力を強めてきた……おい、また蟹挟みやめれ。
 そのタイミングでカメラが復帰してオールスクリーンに外の様子が映し出される。周りを見渡してもプルートは見えない……だいぶ離されてしまったようだ。

「もう大丈夫なようだ。下は森で街らしき物は無しか……さっき知的生命体がいるって言っていたが、どのレベルの技術力なんだろうな?」

「うん……どうなんだろうね」

 何だかフレーナの様子がおかしい……無事だったんだからもっと喜ぶかと思ったのに。

「だって、ボク助からないと思って……その……エイジにキスしちゃったし」

 抱きつく腕と足の力が強くなる。触れないようにしていた話題をダイレクトに出してきたな……まぁ、有耶無耶にするのも良くないか。

「まぁ、それは……俺も似たような考えだった。あれだよ、死を意識すると人間は種を残そうとする生存本能が高まるって言うからな。お互い本当に覚悟を決めていた訳だから咎められるような事では無いはずだ、うん」

 うむ、我ながら逃げに走っているような言い方な気もするが、強ちあながち間違っていないはずだ、うん。

「……ボクはね、え~と、生存本能だけでやったんじゃ無いんだ」

「なんだよそのまるで的な言い回しは」

 からかい口調で答えたのだが、俺の胸に顔を埋めている彼女の……緑色のボブカットの隙間から覗く……耳が赤くなっている事がわかった。おいおいまさか本気か? え? フレーナが?

「だって、ゲームではボクは小学生みたいだったし、マスコットキャラみたいに扱われて恋愛対象に見られていない事は分かっていたから、その時は半分諦めていたよ。
 でもこっちに来て本来の自分に戻れて……自分でもスタイル良くなったと思うし、エイジもボクの身体をチラチラ見てるし、意識してくれているなってわかったら希望を持っちゃったんだよ」

 ぐっ、やっぱり見てるのバレてたか。いやいや、健全な男子だよ俺は? 近くにナイスなバストやヒップがあれば見ない男子がいるだろうか? いや無い!!
 おっと、それどころじゃない、これ殆ど告白されているよな? 正直フレーナのボディは見てしまうが恋愛対象としてはアイリばかりに目を向けていた事もあり考えた事も無かった。

「あー、そのな、俺は今までフレーナの事を恋愛対象と見た事は無かった……いや、魅力が無いとかは絶対に無いぞ」

「うん、わかってる。アイリがエイジの事を好きな事もわかってる。でも、二人ともちゃんと告白して恋人になっていないよね? 見ていてわかるもん。もしもボクの事がナシじゃなければその輪の中に入れて欲しいんだ。こっちの世界は一夫一妻って決まりは無いからアイリとも相談するし、だから……」

「ちょ、ちょっと待て、それは男側オレに都合が良すぎるからな。お前は俺が複数の女と仲良くなって構わないって言うのか?」

「もちろんボクにだって独占欲はあるよ? でも、アイリを応援しているような素振りを見せながら後からボクもってのも後ろめたさはあるし……もしエイジとアイリがいいならって考えるようになったんだ。ちゃんと、平等に好きになってくれたら嬉しいな」

『ダーリン、そろそろ地表に到達だニョ。もうシールドは邪魔だからDSに収納して欲しいニョ。着地は第一夫人のネジコがやるからハーレム3人目の事をしっかりと相談するニョ』

 なに第一って? 3人目って誰だよ、何この猫自分をカウントしてるの? おっと、ツッコミ所は満載だが盾を収納しよう。

「エイジ?」

 いつもは見せない不安そうな顔で俺を見上げるフレーナ。僅かに幼さが残る顔にボーイッシュなボブカットを揺らしながらの上目遣い……くっ、何だか意識してきた。好意を寄せられた途端に意識し出すなんて現金だな。

「いや、そろそろ着地だから盾を収納するようにってAIがな……」

「そっか……えーとね、アイリ達と合流するまでで良いから……それまでにボクの事を恋愛対象に見れなかったら諦めるから……おねがい」

 確かに今まではアイリに心は傾いていたけれど、二人の関係を確固たる物にしている訳では無かった。しかし、もしアイリとフレーナとの仲が良くなったとしてガットはそれをどう思うのだろうか?

「ちなみにガットは他のチームに……まだガールフレンド止まりだけど……仲のいい子何人かいるよ」

「なん……だと」

 ここに来ていちばん驚愕の事実だぞ!! え? あいつそんな素振り見せてなかったじゃん。人の恋愛の話とか食いついてくるのに自分の話はなんにもしなかっただろうが!!

「ガットって自分で気付いていないだろうけど、わりと天然に女の子を惚れさせるから……学生の時もよく何人か違う子から誘われてデートしてたってアイリが言っていたよ」

 なんだそのリア充!? 俺が……望んでいたとは言え……灰色の学校生活を送っているその裏で女の子達とキャッキャウフフしていたってのか!? そんなんだから剣道も万年初戦敗退なんだよ!! あのファッションスポーツマンめ!!

「ガットが恋愛に本気になるまで側で待ち続けられた女の子が勝利者だと思う……でもこの世界だと全員もありかもしれないね~」

「なんだか真剣に悩んでいたのが馬鹿らしくなってきたぞ。わかった、俺もフレーナの事を女の子として見るよう努力する……アイリと合流するまでに結論を出そう」

「本当? エイジ大好き!! ボクの事好きになって貰えるよう頑張るね♡」

 ギュッと抱きつく力を強めるフレーナ。俺は計らずとも天然ジゴロ親友の事を切っ掛けにハーレムロードの一歩を踏み出す決意をしてしまった……早まったか?

 いや、そもそもこの世界に来た奴らは過去の倫理観から脱却出来る事が条件だったはずだ。それを言い訳にする訳では無いが、この未来が見えない状況で俺の周りが肉体的にも精神的にも最高のパフォーマンスが出せるのなら真剣に考えるべきだろう。

 既に足の無いメガフォートは森の開けた場所を見つけて着地している。専用の姿勢制御アプリを組んで無理矢理着地させたのは良いが、これをこのまま動かすのは難しそうだな。

『外に出ても問題ないニョ、大丈夫だニョ』

 俺はコックピットのハッチを開くと狭い出入り口に上り、フレーナに手を貸しながらそのまま外に出た。

 久々に草の生えた地面を踏んだ気がする……今は昼だろうか? 人工の物では無い自然な緑の香り、木々を揺らしながらそよいでくる風、まるで過去に戻ったような気分だ。

「はぁ~久しぶりの重力を感じた気がするよ~」

 フレーナは両手を広げながらクルンと回った。俺は周囲をセンスを用いて索敵を行うが特に敵対生物の反応は無い。

「とにかくだ、人間関係的な目標は決まった。次はサバイバル的な目標は仲間との合流だ」

「うん、でもどう動くの? 戦艦が無いから支援無しだよ? マップ表示されないよ」

「とりあえずいくつか開発中の物をキャンセルして捜索、索敵用ドローンを作る。ここは惑星外ほどでは無いがかなりのイクシア濃度だ。効率の良い小型の変換器を開発して順次ドローンを作っていく」

「ファクトリー持ちがいると心強いよ。でも素材は足りるの?」

「このEXT イクストを素材にすればかなりのドローンが作成出来るだろう」

「いいの? エイジの大好きなEXT イクストだよ?」

 フレーナは驚きつつも足の無いEXT イクストの装甲をペしペし叩く。

「優先順序の問題だ。このイクシアが過剰な惑星でこいつをそのまま動かすのは難しい。先に生存に必要な物を作っていくぞ」

 俺はメガフォートをDS内に収納するとネジコに命じてドローン用イクシアコンバータの開発、探索用インセクター型ドローンに、索敵用クリオネ型ドローン、その他諸々作成を平行で行う事を決めた。

「(ネジコ、プルートの位置はわかるか?)」

『もちろん優秀な第一夫人のネジコはちゃんとわかっているニョ。プルートは流れ星になったニョ』

「(なんだと!? どういう事だ!? まさか、無事に降下出来なかったのか!?)」

 俺はアイリやガットが無事では無かったという事実に胸を強く捕まれたように痛みを覚えた。

『機体制御が無理と判断されて、ある程度高度を落とした時点で乗組員の脱出ポッドを次々に降下、その後に大気圏で燃え尽きるよう機体を細かく分離させたんだニョ』

「(紛らわし言い方するな! プルートが消失したのならサポートが途切れたのも仕方がないな。脱出ポッドの位置は把握しているか?)」

『ああん、詩的な表現はダーリンのお気に召さなかったようだニョ。正確な現在地はわからないけどポッドの位置自体はそれぞれ比較的近くに落ちたはずだから、軌道計算して大体の位置はわかるニョ。あ、ビーコンの反応は全然ないニョ、たぶん過剰イクシアのせいだニョ』

 何でもイクシアに頼りきっていたツケか殆どのシステムがまともに動かないようだ。DSのエンゲージ用共通ストレージは使えない……距離が離れすぎているからなのかイクシア制御が上手くいかないかなのかはわからない。

 とにかく落下予測位置に向かって進むしか無さそうだな。

「フレーナ、とりあえずドローンは明日には出来ると思う。明日の朝、探索で得たデータを元に皆のいる予測地点に向かおうと思う」

「うん、わかった」



 俺達はこの場で夜を明かす事を決め、広場にDSから取り出した軍用コテージを設置したのだった。



______________________________________

第二のヒロインは予想されていたかもしれませんがフレーナでした。
ちゃんとタグも入れていたのですからハーレム批判は受け付けません。
そして、いくらツッコミ所満載でも科学的意見も受け付けません、あくまで魔法とも科学とも境目がわからないような妄想科学です。
さっきから予防線張りまくりですが豆腐よりもろいメンタルを守るための努力です。努力の汗は美しいのです。

あ、誤字脱字は受け付けてます。よろしくお願いします。


面白かったらぜひ【お気に入りに追加】や【感想】をよろしくお願いします。
それを励みにより一層、頑張ります。
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