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冒険者編

入学 01

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 一悶着はあったものの、無事に戦いは終わり街は落ち着きを取り戻す事が出来た。街の門は再び開かれて外出禁止の厳戒態勢も解かれた。

 一部建物が壊れた場所があったようだがすぐに修理される事だろう……壊したのは俺だが。

 ……そして俺は未だに正座させられている。

「エイジ、助けに来てくれると信じていたよ……って、何しているんだ?」

 ボコボコに顔を腫らしたひょろ長い男ボラーを引きずりながらマルタがやって来た。バフが掛かっていたとは言えバトルスーツに生身で勝利するとは、マルタの実力もかなり上がってきているらしい。
 豆知識だがEXTイクストが上手い奴はバトルスーツも強いんだぜ。

「ボクと離れている間に無許可のハーレム人員を増やした事の反省をしている所だよ」

「ハーレム……そ、そうか、頑張ってくれよ」

 狼狽えながらもひょろ長い男を引きずって去って行くマルタ……何を頑張れば良いんだよ。



 とりあえず俺の事は置いておいて、戦後処理の話をしようか? するんだよ!

 ……なんとか正座は終了してよしと許可を貰った。

 ファングとボラーはそのまま奴隷の首輪で拘束。3馬鹿にそそのかされて裏切った奴らも同様の処遇になった。

 ひとつ問題があるとしたら……3馬鹿のひとりであるドワーフのハリスがいなかった事だ。

 ドローンで近辺を探索させているが未だに見つかっていない……とは言え、やつが一人で何かをした所で……あるいはレベルの低いファクトリーで大きな事が出来るとは思えない。
 ヤツのためにドローンを探索に使わせるのも何だか勿体ない……とりあえずハリスの事は捨て置く事にした。

 そしてエリと同じように手錠で拘束されていたメンツ、主にメンズなのだが……何やら心に深い傷を負っているようだった。ネジコが睡眠時にヒーリングプログラムを使って心の傷を少しずつ癒やすとの事。
 何があったかは聞かないでおく……怖いから。

 さて、もうひとつの問題がある部族で起きていた。一人の男を囲むようにムカチャパ族が並んでいる。その中心にいる男は……ボブだ。
 ボブは腕を縛られて地面に正座させられている……あいつと同じ扱いなのは屈辱だな。

「他の部族を売った許しがたき男……最低の屑だ」

「自分に靡かなかった女を奴隷にして好きにしようとしていた……男として最低だ」

「さらには邪悪な志の奴らと手を組んで街を襲うとは……見下げ果てた奴」

 発覚した悪事を次々と持ち出されてフルボッコだ。

「おかしな話し方、なんだその!! 消したお前達が恥だ、部族の誇りの証し!!」

 どうやらタトゥを消した事や喋り方を指摘して批難を逸らそうとしているようだ。小ずるい事に頭が回るのは相変わらずのようだな。

「お前の汚い策略のお陰で我らの村は滅亡した……だが、我々は新たな誇りと生きる道を見つけた」

「お前のような志の小さい男では到底考えも付かない事だ」

「ボブラグン、せいぜい森の中でコソコソと猪のように生きていけば良い……我々は大地の中心を目指す」

 本来ならボブが指摘した事柄はムカチャパ族にとっては大事な事だったのだろう。だが、それを物ともしない部族の反応にボブは明らかに狼狽えている。

 ムカチャパ族からの冷たい眼差し……今までは傍若無人ではあったが、同じ森に住む部族として接していたのだが、いまそれは見る影も無い。

つがいになりたかっただけだ、俺はお前と、すまなかった、マリチャパ!!」

 ムカチャパ族の人垣の中にマリチャパを見つけて許しを請うボブ……なんで無理矢理奴隷にまでしたマリチャパに許して貰えると思っているのだ? やはりボブの思考回路は読めん。

「ん、誰だお前? 知らないぞ?」

「マリチャパァァァァッッ!!」

 当然ながら一刀両断された。

「誰だか知らないが、マリチャパ達はもう森を出る事になって掟は無くなった」

 ボブに冷たい目線を向けながらマリチャパがこちらの方に歩いてくる。自然とむかチャパ族の人垣も割れていった……ボブも諦めずマリチャパに縋るような視線を向けている。

「街では……中央の大都市では男女が一緒になる事をつがい等とは呼ばない……結婚という儀式を経て夫婦となるのだ」

 マリチャパが俺の目の前にやって来ると、内緒話の仕草のように片手を口元に当て、もう片方の手でちょいちょいと手招きしてくるので、俺は耳をマリチャパに寄せる。

「結婚して夫婦となった男女はその証しにこういう事をするのだ!!」

 突然マリチャパは俺の首に組み付き、強引に前を向かされると熱烈なキスをしてきた……マリチャパは勝手にこういう事をしないという先入観で油断していた。

「んがああああああああああっっっっ!!???」

「ああああああああっっっ!! また浮気だぁ!!!」

「ぬわっ!! おのれエイジ!! またしても妾をないがしろにして!!」

 絶望的な声で絶叫を上げるボブに続いて二人の女性も声を上げた……その後ムカチャパ族がパチパチパチと拍手してくる、やめれ!!

 ……その後、俺は再び正座コースになった事は言うまでも無いだろう。理不尽すぎる。



 こうして裏切り者達ベトレイヤーズはネジコの更生プログラムを受ける事になり、充実した毎日を送る事になっているらしい。

 どんなプログラムかというと、昼間は軍隊式の訓練、夜は脳内コンピューターアドブレインを使った長時間訓練で、精神修行から刺身にタンポポを乗せるアルバイトまであらゆる苦行を強制実行させるもらしく現実で1日の出来事でも奴らにとって1ヶ月くらいの長さに感じるようだぞ……恐ろしや恐ろしや。

「SOFが出ーるぞ♪」

「「「「「SOFが出ーるぞ♪」」」」」

「こいつはドえらいMMO♪」

「「「「「こいつはドえらいMMO♪」」」」」

 軍隊訓練歌ミリタリーケイデンスと共に更生中の奴らが走っている……聞いた事の無い歌詞だな、それになんでゲームに寄せてるんだ?
 訓練プログラムから何まで全部ネジコが考えているんだがやりたい放題だなあいつは……
 ちなみに先頭を走っている教官役は面構えが鬼軍曹っぽいムカチャパ族の男だ……おっ、行進の列が乱れたのか、鬼軍曹の叫び声と共に連帯責任の腕立て伏せが始まったぞ。
 奴隷の首輪の効果で逆らう事が出来ない奴らは必死に訓練を続けている。

 まぁ、精々頑張って更生してくれ……全員、中央学院セントラルアカデミーの為の貴重な戦力だからな。



「ほー、これがえくすてぃたーんという戦操兵ウォーレムか」

「だから、戦操兵ウォーレムじゃなくって、これ自体の呼び方がEXTイクストなの」

 練習用のデイウォーカーを作成して、中央学院セントラルアカデミーのメンバーに練習させるつもりだ。

 コックピットに乗り込んだリリアにフレーナが操作を教えているようだ。
 一応睡眠学習で基礎は学んでいるはずだけど、実際に身体を動かして操作するのは違うからな。

「凄いぞ、早くマリチャパも乗りたい」

「オラも!!」

「あちしも~」

 やはり新しい物にはみんな興味があるようだ。

 中央学院セントラルアカデミーに入学する者の殆どが、そこで初めて戦操兵ウォーレムに触れるらしい……入学前に操縦を習得しておけば色々有利になるだろう。
 基礎的な操作はEXTイクスト戦操兵ウォーレムもそう変わらないからな。

 とにかく裏切り者達ベトレイヤーズどもの洗脳……おっと、更生が終わり次第中央セントラルに向かおう……時間的にも何とか依頼の期限に間に合うはずだ。

 ……俺達は中央学院セントラルアカデミー入学のための準備を着々と進めていくのだった。


□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


「よし、準備は整った。中央セントラルに向かうぞ」

「うん、ボク初めてだから楽しみ」

「アンドの街より都会だけど、コテージの方が住み心地良いとマリチャパは思う」

「いよいよじゃ……妾の大望が……長かったのぅ」

「おめでとうございます姫様」

「オラも頑張るぞ」

「あちしも~」

「俺達の戦いはこれからだ」

「生まれ変わった俺達の活躍をご期待下さい」

 まて、最後の二人は誰だ!? っと、こいつらは更生したファングとボラーだ。数日前までは目が死んでいたのに今はキラキラしている。

「人が変わりすぎだよね?」

「あぁ、何というか……綺麗なファングとボラーって感じだな」

 そんな事を離していると二人が目の前にやって来る。

「過去の事は反省した……改めてよろしく頼む」

「罪は消えないかも知れないけど、一生懸命償うよ」

 キラキラした二人は言っちゃ悪いが気持ち悪い。だが、贅沢は言っていられない、これでも貴重な戦力だ。

「と、とりあえず中央セントラルに向かうぞ……みんなバスに乗り込んでくれ」



 ……準備を終えた俺達を乗せたバスは再び中央セントラルへ走り出した。



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