上 下
61 / 86
冒険者編

星を統べる者 3

しおりを挟む
 空を舞台にEXTイクストとドラゴンの戦いは続いている。尋常では無い速度でドラゴンを屠る人型機動兵器EXTだが敵の数は未だに衰えず、むしろその数を増している。

「一体何をしているのだ!! 馬鹿正直にぶつかってどうする、天空の業火で薙ぎ払ってしまえ!!」

 竜将軍ドラゴンジェネラルは自らが駆る火焔竜ファイヤードラゴンで前に出ると、彼に率いられた同種の赤い身体のドラゴン達が綺麗に空に並ぶ。
 そしてその喉が大きく膨らんで行くと、その牙の並ぶ口から炎がチラチラと顔を出す。

「将軍、まだ味方が戦っていますが……」

「構わん……あれは消耗品だ」

 どうやら竜将軍ドラゴンジェネラルは味方ごと敵を炎で薙ぎ払うつもりのようだ。そしてドラゴンの喉が限界まで膨らむと将軍の手が前に下ろされる。

「放て天空の業火、敵を薙ぎ払え!!」

 何千ものドラゴンの口から紅の炎が放たれて空を紅く染め上げる。進路上にいるドラゴン達が炎に飲み込まれて灰となっていった。

「そんな、俺達が……」「うそだあ!!」「か、かあさん!!」「ドラゴネストバンザーイ!!」「畜生!!!」

 末端の兵士達の呪詛も紅い炎に飲み込まれていった。そしてその炎がドラゴンごとEXTイクストを飲み込もうとした時……その炎は突然吹き荒れた突風にかき消されてしまった。

「ば、ばかな……この数のドラゴンのブレスをかき消しただと!? 魔法銀ミスリルでさえ溶かすこの業火を!?」

『やれやれ、味方ごと焼き払おうとは何とも野蛮な国じゃのうドラゴネストとやらは。優雅な妾たちの国を見習うべきじゃな』

『仰るとおりです姫様』

 その声とともにスレンダーなボディのEXTイクストが前に出てきた。そのEXTイクストのコクピットにのっている美しいエルフの少女は満足そうに笑っている。

『おお、あぶなかったぞ、さすがリリアだ。マリチャパは感謝するぞ』

『ふっふっふっ、もっと褒め称えるが良いぞ。もっともあのままでもマリチャパ達が落ちる事も無かったと思うがの』

 エルフのリリアの率いるEXTイクスト達は両手を広げると、その頭上に突然空よりも青い光が現れた。

『精霊よ、妾に力を貸して欲しいのじゃ……あの赤いのをちょいっと冷やしてやっとくれ』

 その声に応えるように青い光から一斉に吹雪が吹き荒れた。その氷の嵐は広範囲に広がりながら火焔竜ファイヤードラゴン達を襲った。

「なんだと、またもやブレスがかき消されるだと!? そんな事があってなるものか!!」

 竜将軍ドラゴンジェネラルはその言葉とともに吹雪の嵐に飲み込まれ、気付いた時……いや意識があるかは不明だが……には氷の塊となり海に落下していった。

『さすが妾たちの精霊じゃの、たかだかドラゴン如き敵では無いわ』

『仰るとおりでございます姫様』

 EXTイクストという兵器でありながら精霊の力を行使するエルフ達……その力は生身の時と比べものにならないほどの力だった。



「さすがリリアだな……これだけの広範囲攻撃を化学兵器に頼らずに行使出来るのが凄いぜ」

 国を滅ぼされそれでも諦めずに自ら再び国を手に入れたエルフの女傑。

 もちろん俺も協力はしたが、それは彼女の生まれ持った資質、そしてそれに胡座をかかずに鍛えた能力、民を引きつけて已まないカリスマ。
 彼女が再び王女へのし上がったのはなるべくしてなったのだ。

「そういえば中央学院セントラルアカデミー入学式での発言は痛快だったな」



 エイジは再び手この場が戦場であるにも拘わらず……リリアとの出会いに思いを馳せた。 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄された令嬢は、実は隣国のお姫様でした。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:43,348pt お気に入り:3,329

詩集「支離滅裂」

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:995pt お気に入り:1

今宵、鼠の姫は皇子に鳴かされる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,114pt お気に入り:10

月が導く異世界道中

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:58,369pt お気に入り:53,905

明らかに不倫していますよね?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,910pt お気に入り:120

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:2,329

処理中です...