蛇に変えられた悪役令嬢は敵国の王子に溺愛されています

香取鞠里

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 王子は本当に蛇の姿のリーナに食物や小さな小屋を与え、献身的にお世話をしてくれた。

 このまま一生蛇のままでもいいかもしれない、そう思った。

 そのくらい、敵国の王子とはいえ、王子のそばは居心地がよかった。

 そんなある日、王子の弟がずかずかと王子の部屋に入ってきた。

 王子は一緒ではないようだ。


「へえ、こいつが兄貴の溺愛する蛇か。この蛇も可哀想に。王子に蛇に変えられてるって知らずにこんなところに閉じ込められてさ」


 王子の弟は悪い顔で笑うと、私の小屋に手をかけて入り口を開けて部屋を出ていった。


 うそだ、私をこんな蛇の姿に変えたのが王子だなんて。

 信じられなかった。


 私は小屋を抜け出すと、部屋の隅で泣いた。蛇の姿でも泣くことができたから。


 やがて夜になり、王子が戻ってくる。

「リーナ!?」


 王子は必死に私のことを探してくれているようだった。

 リーナは出ていくこともできずに、部屋の隅に居座っていた。

 どうしても王子を疑いの目で見てしまうあまり、信じたいのに、最初から蛇をリーナだと見抜いていたことからもどうしても信じきれなかった。

 そのとき、王子は刀を宙に振り上げた。

 瞬間、リーナはみるみるうちに黄金色に包まれて、久しぶりに見る自分自身の姿に戻った。


「……え?」

「リーナ!」

 突然部屋の隅で人間の姿で座る私を見て、王子が駆け寄ってきて私を抱きしめる。


「よかった、きみがいなくなってしまったんじゃないかと気が気でなかったよ」

「クラウド、どうして? 私を蛇にしていたのはあなたなの?」


 王子は整った顔を歪ませると、つらそうに口を開いた。


「そうだよ」

 そんな……!


「どうしてもきみが欲しかったんだ。けど、きみは敵国の令嬢。とても普通には手に入れられない」

 絶句した。

 けど、どうして敵国の王子が私のことを欲しいだなんて……。


「きみは覚えてないかもしれないけれど、幼い頃、国境付近で花を詰んで遊んでいただろう。いつも見てたんだ。その度に国境付近は危ないからと私はよく叱られたよ」


 王子はどこか諦めたように笑っている。


「帰りたいなら、リーナの国まで送り届けるよ」

「いいえ、私はここに残るわ!」

「え?」

「だって私、帰ってもみんな私のことを悪役令嬢っていって嫌ってるしそれに……」


 私は王子に寄り添って、蛇の姿で王子と過ごした日々を思い返す。

 蛇にされたのはびっくりしたし嫌だったけど、王子と一緒にいたいと思ったのは紛れもなく本心だ。


「蛇にされたのは嫌だったけど、私は王子といたいよ。蛇にしてまで私をここに連れてきたなら責任もってずっと愛してね」

「リーナ、ありがとう」


 私と王子の唇が重なる。

 蛇に変えられた悪役令嬢は、敵国の王子に溺愛されるのだった。


 おしまい
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