悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里

文字の大きさ
3 / 9

 まず、これまで大人しく用意されたレール歩んできたが、これからは別の生き方を考えていかなければならない。

 どうしよう……。

 サクラが現れることは避けられない未来なのだとしても、国外追放されてのたれ死ぬことだけは免れたい。

 やはり私は、皇太子から少しずつ、不自然じゃない程度に距離を取るのがいいのだろう。

 だって私が反逆罪にされた最大の要因は、サクラの嫉妬によるものだったのだから。



 そう決意したものの、なかなか皇太子と距離を置くのは、これまで親しくさせてもらっていただけに簡単なことではなかった。


「マリエッタ、今日は来てくれてありがとう」

「いえ、殿下。呼んでいただけて光栄です」

 今日は、殿下に呼ばれて皇宮に来ていたが、驚くことに、殿下に呼ばれたのは私だけのようだ。


「あの、他の方は……?」

「ああ。今日呼んだのは君だけだ。君と、もっとゆっくり話したいと思ってね」


 夢の中で見てきた未来では、自分が言うのも何だが少なくともサクラが来るまで、殿下は私に想いを寄せていた。

 もちろん夢の中で見た私も、そのときは満更でもない心境であったが、あれが全てこれから起こることだと考えると、浮わついた気持ちになんてなれない。


 殿下を距離を取るなんて、簡単なようで、簡単じゃない。

 これが単なる幼なじみや、身分が同等の者であれば、まだ何とかなるものの……。


「マリエッタ……?」

「あ、すみません」

「いいんだ。それより、どうした? 顔色が良くないようだが……」

「そんなことないですよ。私は元気です」

 自分でも泣きたくなるような返しだ。

 けれど私の言うことに対して訝しそうに眉を下げた殿下は、驚くことに次の瞬間、私の額に自らの額をくっつけてきたのだ。


「熱はないようだな……?」

 ガタッ。


 何も知らなかったら、殿下にときめいていただろう。

 けれど、夢で片づけられない一度目の人生の記憶を持つ私は、思わず殿下から距離を取るように席を立っていた。


「マリエッタ? どうした?」


 殿下が戸惑ったような、そして少し傷ついたように私を見る。


「す、すみません。ビックリしてしまって……」


 いやに動悸が速い。

 このままでは、殿下に怪しまれてしまう。

 むしろ、殿下に嫌われて距離を取る方がいいのかもしれない。

 けれど、相手は殿下だ。

 下手をすれば、私と殿下だけの問題に留まらないかもしれない。


「そうか。驚かせてしまってすまない」


 殿下は、私の言い分になぜか少しホッとしたような笑みを浮かべると、申し訳なさそうに眉を下げた。

 このまま、ここにいると、余計にボロが出てしまうだろう。


「わ、私、やはり体調が優れないので、本当に申し訳ないないのですが、今日はこれにて失礼してもよろしいでしょうか?」


 私は最後、何とか殿下に挨拶をすると、内心逃げるようにその場をあとにしたのだった。
感想 12

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になった婚約者から婚約破棄を提案された

夢呼
恋愛
記憶喪失になったキャロラインは、婚約者の為を思い、婚約破棄を申し出る。 それは婚約者のアーノルドに嫌われてる上に、彼には他に好きな人がいると知ったから。 ただでさえ記憶を失ってしまったというのに、お荷物にはなりたくない。彼女のそんな健気な思いを知ったアーノルドの反応は。 設定ゆるゆる全3話のショートです。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

私を悪女に仕立て上げるために間男を用意したようだ。その正体が誰だか知らずに。

サトウミ
恋愛
どうやら婚約者は、私を悪女に仕立てて婚約破棄するつもりのようだ。 女の私の方が優秀なのが気に食わないらしい。 私が紅蓮の勇者と不貞行為をしている、ということにしたいのだろう。 だけど愚かな婚約者は、紅蓮の勇者の正体を知らないようだ。

悪役令嬢、辞めます。——全ての才能を捨てた私が最強だった件

ニャーゴ
恋愛
「婚約破棄だ、リリアナ!」 王太子エドワードがそう宣言すると、貴族たちは歓声を上げた。 公爵令嬢リリアナ・フォン・クラウスは、乙女ゲームの悪役令嬢として転生したことを理解していた。 だが、彼女は「悪役令嬢らしく生きる」ことに飽きていた。 「そうですか。では、私は悪役令嬢を辞めます」 そして、リリアナは一切の才能を捨てることを決意する。 魔法、剣術、政治力——全てを手放し、田舎へ引きこもる……はずだった。 だが、何故か才能を捨てたはずの彼女が、最強の存在として覚醒してしまう。 「どうして私、こんなに強いの?」 無自覚のままチート能力を発揮するリリアナのもとに、かつて彼女を陥れた者たちがひれ伏しにくる。 元婚約者エドワードは涙ながらに許しを請い、ヒロインのはずの少女は黒幕だったことが判明し、処刑。 だが、そんなことよりリリアナは思う。 「平穏に暮らしたいんだけどなぁ……」 果たして、彼女の望む静かな生活は訪れるのか? それとも、新たな陰謀と戦乱が待ち受けているのか——!?

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

婚約者はうちのメイドに夢中らしい

神々廻
恋愛
ある日突然、私にイケメンでお金持ちで、家柄も良い方から婚約の申込みが来た。 「久しぶり!!!会いたかった、ずっと探してたんだっ」 彼は初恋の元貴族の家のメイドが目的だった。 「ということで、僕は君を愛さない。がしかし、僕の愛する彼女は貴族ではなく、正妻にすることが出来ない。だから、君を正妻にして彼女を愛人という形で愛し合いたい。わかってくれ、それに君にとっても悪い話ではないだろう?」 いや、悪いが!?

婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした

珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。 そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。 ※全4話。

婚約破棄されたので、元婚約者の兄(無愛想な公爵様)と結婚します

ニャーゴ
恋愛
伯爵令嬢のエレナは、社交界で完璧な令嬢と評されるも、婚約者である王太子が突然**「君とは結婚できない。真実の愛を見つけた」**と婚約破棄を告げる。 王太子の隣には、彼の新しい恋人として庶民出身の美少女が。 「うわ、テンプレ展開すぎない?」とエレナは内心で呆れるが、王家の意向には逆らえず破談を受け入れるしかない。 しかしその直後、王太子の兄である公爵アルベルトが「俺と結婚しろ」と突如求婚。 無愛想で冷徹と噂されるアルベルトだったが、実はエレナにずっと想いを寄せていた。 婚約破棄されたことで彼女を手に入れるチャンスが巡ってきたとばかりに、強引に結婚へ持ち込もうとする。 「なんでこんな展開になるの!?』と戸惑うエレナだが、意外にもアルベルトは不器用ながらも優しく、次第に惹かれていく—— だが、その矢先、王太子が突然「やっぱり君が良かった」と復縁を申し出てきて……!?