出来の悪い令嬢が婚約破棄を申し出たら、なぜか溺愛されました。

香取鞠里

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 レオンは怒っているのか、毎日のように私の屋敷に訪ねて来ているらしい。

 私は胸を痛めながら毎度侍女にお願いしてレオンに帰ってもらっていた。

 不思議だ。私から解放されて自由になったのに、どうして私に構うのだろう。私から婚約破棄を申し出たからだろうか。

 学業もダメで、ダンスも下手、何もかもができ損ないの私なんかに婚約破棄されて、レオンの顔に泥を塗ったと思われているのかもしれない。

 これまで私がレオンから離れた方がいいとばかり考えていたために気付けなかった。
 
 レオンのことを思えば、婚約破棄を告げられるように動く方がよかったのかもしれないが、今更どうしようもない。

 私は窓の外に見える、小さくなるレオンの背中を見ながら小さく息を吐き出した。


 レオンに婚約破棄の申し出をしてから十日が過ぎた頃のことだ。

 私は侍女から一通の手紙を渡された。

「リリィ様、お手紙です」

「ありがとう。誰からかしら?」

「レオン様からです」

「……え?」

 手紙……?

 レオンの名前を耳にして一瞬躊躇う。
 私が侍女の方に手紙を突き返そうとした時、侍女は小さく首を振った。


「こんなことを私が言うのもおかしな話ですが、手紙、読んでみてはいかがでしょうか?」

 驚いた瞳で侍女を見つめると、侍女は凛とした表情で続けた。


「レオン様に対してのリリィ様のお気持ちもあると思うのですが、あれだけ毎日レオン様はリリィ様に会いに来ているのです。そこに何かレオン様がリリィ様に会いに来られる理由が書かれているのではないでしょうか?」


 言われてみればそうだ。
 きっとレオンは何かしら理由があって私に会いにきているのだとしたら、私がこの手紙を読んでレオンが伝えたいことを確認して、何かしら要望があるのならそれに応えれば解決するのだろう。

 今まで婚約破棄を申し出たことでレオンに何を言われるのかと逃げていたが、自分がやっていることは完全な言い逃げでしかなかったことに気づいた私は、侍女から渡された手紙を思いきって開封した。

「……え?」


 手紙に書かれた文字を追って、思わず目を疑った。

 こんなの信じろという方が難しいだろう。

 というのも、そこに私に今回の婚約破棄を考え直してほしいという内容と、自分のどこが至らなかったのか教えてほしいという内容とが綴られていたからだ。

“一度会ってほしい。直接話したい”

 そして、末尾はそういった文言で締め括られている。

 どうしてレオンは、婚約破棄を考え直せだなんていうのだろう。そして、会って何を話したいと言うのだろう。

 けれど、それ以上のことは何も書かれていないため、ここに書いてあることが全てなのか、他に真意があるのかわからない。

 何だかんだで、レオンは私の幼馴染みだった。
 だからこそ、婚約破棄という形で、あんな形で終わってしまったことにレオンは引っ掛かりを覚えているのかもしれない。

 さすがに婚約破棄の件に関して、いきなり婚約破棄を告げた私にだって非があるだろう。

 そう考え至った私は、レオンと一度会ってみることに決めたのだった。
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