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「これにサインしろ」
「え……っと。これは?」
見ると、私はどうやらマークに婚約破棄を申し込まれているようだ。
「お前との婚約を破棄したいんだ」
「本当ですか!?」
今のは聞き間違いだろうか?
「ああ。一度で聞けよな」
どうやら、本当のようだ。
見る限り、公爵家の正式な婚約破棄の書面のようだ。
やっと……!
やっと、マークから開放される!!
結婚することなく、婚約破棄を今、ここでできるのならば、本望だ!!
嬉しい! 嬉しすぎる!!
歓喜で叫びそうになる気持ちをグッと堪えて、私は迷いなく書面にサインをした。
公爵家からの婚約破棄の申し出なら、少なくとも私たちに責任はない。
違約金なども払うことなくこの婚約を破棄するには、これ以上のチャンスはない!!
マークの気が変わらないうちにサインしてしまいたい。
けれど、私はあくまで婚約を破棄される側だ。あまりにも喜んでいては不自然に見えるだろうから、私はその気持ちはグッと奥に押し留めてサインを終える。
すると、どういうわけか、頭上からチッとマークが舌打ちする音が聞こえた。
「……は? 何でサインすんだよ」
同時に、苛立ったような低い声が降ってくる。
「マーク様がサインしろとおっしゃられたので……」
私は少し警戒気味にマークを見上げる。
嬉しい気持ちは表に出さないようにしていたが、隠しきれない喜びが滲んでしまっていただろうか。
「そうじゃない! お前は俺との婚約を破棄したいのか!? 俺と結婚できなくなってもいいのかって聞いてんだよ!!」
「う……っ」
その時、頭に血の上ったマークが私の胸ぐらをつかみ、無理矢理に立たせる。
「クレア様……っ!?」
すると、私の侍女のマリーが悲鳴のような声を上げる。
いつも、マークからの暴行や誹謗中傷はマリーのいないところで隠れて行われていたのだから、マークが威圧的なことを知っていても、ここまで私にすると思っていなかったのだろう。
「お前にとって、俺との婚約は、そんな簡単に破棄できるものだったのか!?」
「……はい。マーク様も私との婚約は破棄されたかったのですよね? どうしてそれほどまでにお怒りになるのですか?」
「ふざけるな! 俺は、お前を手に入れたくて、俺がどれほど努力したか……っ。お前を手に入れたくて、婚約することで侯爵家との関係が良くなるように持ちかけていたのに……っ」
「え……?」
マークの言葉に、思わず戸惑った。
そんなに私のことを手に入れたいと思っていると感じるような待遇をされたことがなかったからだ。
「それなのに、やっと婚約者になって一緒に住むことになっても、全くこちらになびきもしない。そりゃあ腹も立つだろ。押してダメなら引いてみろ的な感じになるだろ。それなのにお前は……」
こちらを見るマークの瞳はまるで狂気じみていて、内心引いた。
「え……っと。これは?」
見ると、私はどうやらマークに婚約破棄を申し込まれているようだ。
「お前との婚約を破棄したいんだ」
「本当ですか!?」
今のは聞き間違いだろうか?
「ああ。一度で聞けよな」
どうやら、本当のようだ。
見る限り、公爵家の正式な婚約破棄の書面のようだ。
やっと……!
やっと、マークから開放される!!
結婚することなく、婚約破棄を今、ここでできるのならば、本望だ!!
嬉しい! 嬉しすぎる!!
歓喜で叫びそうになる気持ちをグッと堪えて、私は迷いなく書面にサインをした。
公爵家からの婚約破棄の申し出なら、少なくとも私たちに責任はない。
違約金なども払うことなくこの婚約を破棄するには、これ以上のチャンスはない!!
マークの気が変わらないうちにサインしてしまいたい。
けれど、私はあくまで婚約を破棄される側だ。あまりにも喜んでいては不自然に見えるだろうから、私はその気持ちはグッと奥に押し留めてサインを終える。
すると、どういうわけか、頭上からチッとマークが舌打ちする音が聞こえた。
「……は? 何でサインすんだよ」
同時に、苛立ったような低い声が降ってくる。
「マーク様がサインしろとおっしゃられたので……」
私は少し警戒気味にマークを見上げる。
嬉しい気持ちは表に出さないようにしていたが、隠しきれない喜びが滲んでしまっていただろうか。
「そうじゃない! お前は俺との婚約を破棄したいのか!? 俺と結婚できなくなってもいいのかって聞いてんだよ!!」
「う……っ」
その時、頭に血の上ったマークが私の胸ぐらをつかみ、無理矢理に立たせる。
「クレア様……っ!?」
すると、私の侍女のマリーが悲鳴のような声を上げる。
いつも、マークからの暴行や誹謗中傷はマリーのいないところで隠れて行われていたのだから、マークが威圧的なことを知っていても、ここまで私にすると思っていなかったのだろう。
「お前にとって、俺との婚約は、そんな簡単に破棄できるものだったのか!?」
「……はい。マーク様も私との婚約は破棄されたかったのですよね? どうしてそれほどまでにお怒りになるのですか?」
「ふざけるな! 俺は、お前を手に入れたくて、俺がどれほど努力したか……っ。お前を手に入れたくて、婚約することで侯爵家との関係が良くなるように持ちかけていたのに……っ」
「え……?」
マークの言葉に、思わず戸惑った。
そんなに私のことを手に入れたいと思っていると感じるような待遇をされたことがなかったからだ。
「それなのに、やっと婚約者になって一緒に住むことになっても、全くこちらになびきもしない。そりゃあ腹も立つだろ。押してダメなら引いてみろ的な感じになるだろ。それなのにお前は……」
こちらを見るマークの瞳はまるで狂気じみていて、内心引いた。
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