1 / 3
1.目が覚めたら異世界でした
しおりを挟む
気づいた時には遅かった。
この日は朝から降り続く雨で視界が悪く、さらには冬至が近いことから夕方五時とはいえ、すっかり辺りは暗くなっていた。
すっかり見通しの悪くなった道路を横切ろうとしたとき、目が眩みそうになるほどのライトが俺の視界を包み込む。
「────うわっ」
気づいた時には、俺──藤堂 逞は、鈍い衝撃音とともに未だかつて感じたことのない痛みに襲われた。
事故に遭ったんだ。
ぼんやりと横断歩道を渡っていた俺は、対向車線から車が来ていることに気づかなかったんだ。
こうなってから後悔したって遅い。
遠退く意識に抗えないまま、俺は静かに目を閉じた。
*
目が覚めると、俺はベッドの上に寝ていた。
ここは、どこだ……?
キョロキョロ見回すと、見慣れない大きいベッド。
ベッドの周りにあるカーテンの向こう側ち見える壁側には鎧とかが置いてあって、まるでお城の中の世界のようだった。
ってか、何で俺、無傷なんだ……?
確かに俺は事故に遭ったはずだというのに、どこにもケガらしきものもなければ、どこも痛くもない。
不思議に思いながらぼんやりとしていると、
「目が覚めたのですね」
どこからともなく、甲高い声が響いた。
誰だ?
怠い体を起こして顔を上げると、腰まであるウェーブの金髪の女の人。
めちゃめちゃ美人だ。
青色の大きな瞳を囲うまつげは長く、鼻は小さく、ぽってりとした唇は可愛らしい。
細身の体とは対照的にふくよかな胸元に思わず視線を奪われそうになる。
歳は俺と同じ、二十五といったところだろうか。
「あなた、気を失っていたのですよ」
「……え? ああ、俺、事故に遭ってそれで……」
この人が、助けてくれたのか?
「助けてくれて、ありがとうございます」
「いえ。見ない格好ですが、どこのお国の方ですか?」
言われて見ると、目の前の女性は水色の丈の長いドレスのようなものを身にまとっている。
一方で俺は、制服の学ランだ。
もしかして彼女は、見た目からも外国の人なのかもしれない。
とはいえ、日本旅行に来たにしては変な質問だなぁと思うけど。
「俺は日本人です」
「ニホン……? それはどこのお国でしょうか?」
どういうわけか言葉は通じているのに、話は通じない。
俺も目の前の女性も首をかしげるばかりだ。
っていうか、俺、事故ったからって国外追放されてしまったのか?
「……すみません、ここはどこか教えてください」
「ここは、アルタイル王国です」
──は? そんなの、聞いたことがない。
どうやら俺は、事故に遭った衝撃で本当にどこかわからない土地へ転移してしまったようだ。
この日は朝から降り続く雨で視界が悪く、さらには冬至が近いことから夕方五時とはいえ、すっかり辺りは暗くなっていた。
すっかり見通しの悪くなった道路を横切ろうとしたとき、目が眩みそうになるほどのライトが俺の視界を包み込む。
「────うわっ」
気づいた時には、俺──藤堂 逞は、鈍い衝撃音とともに未だかつて感じたことのない痛みに襲われた。
事故に遭ったんだ。
ぼんやりと横断歩道を渡っていた俺は、対向車線から車が来ていることに気づかなかったんだ。
こうなってから後悔したって遅い。
遠退く意識に抗えないまま、俺は静かに目を閉じた。
*
目が覚めると、俺はベッドの上に寝ていた。
ここは、どこだ……?
キョロキョロ見回すと、見慣れない大きいベッド。
ベッドの周りにあるカーテンの向こう側ち見える壁側には鎧とかが置いてあって、まるでお城の中の世界のようだった。
ってか、何で俺、無傷なんだ……?
確かに俺は事故に遭ったはずだというのに、どこにもケガらしきものもなければ、どこも痛くもない。
不思議に思いながらぼんやりとしていると、
「目が覚めたのですね」
どこからともなく、甲高い声が響いた。
誰だ?
怠い体を起こして顔を上げると、腰まであるウェーブの金髪の女の人。
めちゃめちゃ美人だ。
青色の大きな瞳を囲うまつげは長く、鼻は小さく、ぽってりとした唇は可愛らしい。
細身の体とは対照的にふくよかな胸元に思わず視線を奪われそうになる。
歳は俺と同じ、二十五といったところだろうか。
「あなた、気を失っていたのですよ」
「……え? ああ、俺、事故に遭ってそれで……」
この人が、助けてくれたのか?
「助けてくれて、ありがとうございます」
「いえ。見ない格好ですが、どこのお国の方ですか?」
言われて見ると、目の前の女性は水色の丈の長いドレスのようなものを身にまとっている。
一方で俺は、制服の学ランだ。
もしかして彼女は、見た目からも外国の人なのかもしれない。
とはいえ、日本旅行に来たにしては変な質問だなぁと思うけど。
「俺は日本人です」
「ニホン……? それはどこのお国でしょうか?」
どういうわけか言葉は通じているのに、話は通じない。
俺も目の前の女性も首をかしげるばかりだ。
っていうか、俺、事故ったからって国外追放されてしまったのか?
「……すみません、ここはどこか教えてください」
「ここは、アルタイル王国です」
──は? そんなの、聞いたことがない。
どうやら俺は、事故に遭った衝撃で本当にどこかわからない土地へ転移してしまったようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる