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1 出会い
⑶
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(なんだ、今の感覚)
薫の思考にノイズがかかったように白く乱れる。その違和感は彼が離れると、靄が晴れるように消え、安堵の息を吐く。
「それじゃあ自己紹介しないといけませんね。僕はレイって言います。お兄さんは?」
「佐倉薫」
勢いに押されるように、そう答えた。それを聞いて嬉しそうに、ふふっ、と笑うと、薫の名前を繰り返す。
「かおる、かおる……。かおるくんですね! 覚えました!」
人差し指を立てて、ひらがなで宙に字を書く。
「ああ、そうだよ」
と言いながら、薫はあくびをかみ殺す。時計を見ると、もう深夜2時を回っていた。眠くなるはずだ。そういえば買ってきたエナジードリンクも冷蔵庫に入れたままだ。
「あれ、かおるくん眠いんですか? 寝たほうがいいですよ~。睡眠不足はいけませんから!」
そんなこといわれないでもわかっている、そういいながらたたんであった布団を広げて、寝る支度を終える。
「それじゃあ寝るぞ。お前はその辺に寝てろ」
薫は自分の布団の隣を指す。窓を開けても寒くない時期だ。そう言葉を継ぐと、レイは口をとがらせる。
「お前って、僕にはレイって名前があるんです!」
「ったく……。めんどうな奴だな。レイはそこらへんで寝てろ。枕はその辺の座布団でも使えばいい」
名前を呼ぶとレイは急に顔をほころばせて、はい! と返事をする。やれやれと心の中で呟いて、電気を消す。
――一瞬、エメラルド色をしたレイの瞳がルビーのように輝いた、そんな気がした。
(いや、ただの見間違いか)
それかよっぽど眠いのか、そう結論付けて布団に入る。
薫は目をつむる。木々が風を切る音だけが聞こえる。隣にいるはずのレイの気配を感じないほどの無が広がっている気がした。体が、奥底から熱くなっていく。末端に血が流れるのを感じる。他人を強く求めている。
最近、してないからな。そんなことを考えると、徐々にその一部が固くなる。途方もない欲望と眠気が絡み合って、暗い夢の中に落ち続ける。
******apocrypha1*******
薫が須藤俊哉の夢を見るのは、久しぶりだった。
薫の思考にノイズがかかったように白く乱れる。その違和感は彼が離れると、靄が晴れるように消え、安堵の息を吐く。
「それじゃあ自己紹介しないといけませんね。僕はレイって言います。お兄さんは?」
「佐倉薫」
勢いに押されるように、そう答えた。それを聞いて嬉しそうに、ふふっ、と笑うと、薫の名前を繰り返す。
「かおる、かおる……。かおるくんですね! 覚えました!」
人差し指を立てて、ひらがなで宙に字を書く。
「ああ、そうだよ」
と言いながら、薫はあくびをかみ殺す。時計を見ると、もう深夜2時を回っていた。眠くなるはずだ。そういえば買ってきたエナジードリンクも冷蔵庫に入れたままだ。
「あれ、かおるくん眠いんですか? 寝たほうがいいですよ~。睡眠不足はいけませんから!」
そんなこといわれないでもわかっている、そういいながらたたんであった布団を広げて、寝る支度を終える。
「それじゃあ寝るぞ。お前はその辺に寝てろ」
薫は自分の布団の隣を指す。窓を開けても寒くない時期だ。そう言葉を継ぐと、レイは口をとがらせる。
「お前って、僕にはレイって名前があるんです!」
「ったく……。めんどうな奴だな。レイはそこらへんで寝てろ。枕はその辺の座布団でも使えばいい」
名前を呼ぶとレイは急に顔をほころばせて、はい! と返事をする。やれやれと心の中で呟いて、電気を消す。
――一瞬、エメラルド色をしたレイの瞳がルビーのように輝いた、そんな気がした。
(いや、ただの見間違いか)
それかよっぽど眠いのか、そう結論付けて布団に入る。
薫は目をつむる。木々が風を切る音だけが聞こえる。隣にいるはずのレイの気配を感じないほどの無が広がっている気がした。体が、奥底から熱くなっていく。末端に血が流れるのを感じる。他人を強く求めている。
最近、してないからな。そんなことを考えると、徐々にその一部が固くなる。途方もない欲望と眠気が絡み合って、暗い夢の中に落ち続ける。
******apocrypha1*******
薫が須藤俊哉の夢を見るのは、久しぶりだった。
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