4 / 7
1 出会い
⑷
しおりを挟む
薫は俊哉のことをシュンと呼んでいた。背が高く、ピアノをやっていたからか白く細いきれいな指をしていた。腕の内側には青い血管が走って、しなやかな体つきだった。黒い縁をした眼鏡をかけて、整った顔つきをしていた。
高校に入ったとき、たまたま同じゲームをしていたことから話が弾み、高校2年のころには休日となると、お互いの家に行き会うような仲になった。
その日は俊哉の部屋で昼過ぎからゲームをして、3時ごろ、休憩がてらスナック菓子を齧っていた。
「そういや、シュン。彼女いないのか?」
「彼女?」
意外そうに俊哉が言葉を反芻した。同じクラスの女友達から随分と俊哉のことを聞かれるところを見ると、相当評判がいいように思っていた。だが、誰かと付き合ったなんていう話を聞いた覚えがない。
「いや、お前結構告白とかされてるんじゃねえの? シュンの連絡先聞かれたのだって1回や2回じゃねえし」
「あぁ……」
なんとも言えない苦笑いとともにスマホを眺めて、軽くうなずいた。
「まあそうだね。初めて会うような女の子からも、何度か」
「それじゃあ、オッケーしたのか?」
俊哉はかぶりを振る。
「いや、全部お断りしたよ」
「断ったのか。どうして?」
薫が尋ねると、少し不機嫌になったように、目を細める。俊哉は深く息を吸って、1つ吐き出した。
「好きな人がいるから、かな」
意外だった。そんな話を聞いたことはなかった。随分長い付き合いになるような気がしたが、知らないことは多かった。
「そうか。そんなこと知らなかった。んで、誰だよ?」
薫は俊哉の隣に移動して、肩を組む。体が密着して、俊哉がひんやりと感じる。
「誰、だって?」
不服そうにそうつぶやく。見たこともないような目で、俊哉は薫を睨む。
「あっ、聞かれたくなかったか?」
あきれるとも、あきらめるともつかない嘆息。
「……わかったよ。教えてあげる」
俊哉はオレンジジュールを口に含んで、薫の両肩をつかんだ。
「……はっ?」
2人の距離がゼロになった。唇が重なって、俊哉は自分の舌で薫の口を開けて、口の中身を注ぎこみながら、押し倒す。初めて感じる柔らかさ。細い腕から、信じられないくらいの力で床に敷き伏せられている。
薫がそれを飲み込むと、俊哉が薫の口内に侵入する。唾液を吸い取るように舌で中を犯して、反対に俊哉の体液が流し込まれる。
抵抗しようと必死にうごめいた腕は、観念したように俊哉になすがままになっている
どれくらいの時間、2人は重なったのか。ようやく解放されたときには、お互いが荒い呼吸になっていた。
「これで……わかった?」
そういった俊哉の目はあまりに悲しげで、泣き出しそうにも見えた。薫の心臓は痛いくらいに激しく脈を打っている。
「俺……だったのか……?」
「本当に気づいてなかったんだね」
俊哉は床に寝ている薫を抱きしめるように、覆いかぶさる。
「ずっと、こうしたかったんだ。僕じゃ、だめか?」
答えに詰まる。思ってもみなかった。頭の中がかき混ぜられたように、何も考えられない。
ただ、はっきりとわかっていることがあった。もう、俊哉の顔が、匂いが、指が、記憶から消されることがない。そして、言いようもない多幸感が芯から広がっている
高校に入ったとき、たまたま同じゲームをしていたことから話が弾み、高校2年のころには休日となると、お互いの家に行き会うような仲になった。
その日は俊哉の部屋で昼過ぎからゲームをして、3時ごろ、休憩がてらスナック菓子を齧っていた。
「そういや、シュン。彼女いないのか?」
「彼女?」
意外そうに俊哉が言葉を反芻した。同じクラスの女友達から随分と俊哉のことを聞かれるところを見ると、相当評判がいいように思っていた。だが、誰かと付き合ったなんていう話を聞いた覚えがない。
「いや、お前結構告白とかされてるんじゃねえの? シュンの連絡先聞かれたのだって1回や2回じゃねえし」
「あぁ……」
なんとも言えない苦笑いとともにスマホを眺めて、軽くうなずいた。
「まあそうだね。初めて会うような女の子からも、何度か」
「それじゃあ、オッケーしたのか?」
俊哉はかぶりを振る。
「いや、全部お断りしたよ」
「断ったのか。どうして?」
薫が尋ねると、少し不機嫌になったように、目を細める。俊哉は深く息を吸って、1つ吐き出した。
「好きな人がいるから、かな」
意外だった。そんな話を聞いたことはなかった。随分長い付き合いになるような気がしたが、知らないことは多かった。
「そうか。そんなこと知らなかった。んで、誰だよ?」
薫は俊哉の隣に移動して、肩を組む。体が密着して、俊哉がひんやりと感じる。
「誰、だって?」
不服そうにそうつぶやく。見たこともないような目で、俊哉は薫を睨む。
「あっ、聞かれたくなかったか?」
あきれるとも、あきらめるともつかない嘆息。
「……わかったよ。教えてあげる」
俊哉はオレンジジュールを口に含んで、薫の両肩をつかんだ。
「……はっ?」
2人の距離がゼロになった。唇が重なって、俊哉は自分の舌で薫の口を開けて、口の中身を注ぎこみながら、押し倒す。初めて感じる柔らかさ。細い腕から、信じられないくらいの力で床に敷き伏せられている。
薫がそれを飲み込むと、俊哉が薫の口内に侵入する。唾液を吸い取るように舌で中を犯して、反対に俊哉の体液が流し込まれる。
抵抗しようと必死にうごめいた腕は、観念したように俊哉になすがままになっている
どれくらいの時間、2人は重なったのか。ようやく解放されたときには、お互いが荒い呼吸になっていた。
「これで……わかった?」
そういった俊哉の目はあまりに悲しげで、泣き出しそうにも見えた。薫の心臓は痛いくらいに激しく脈を打っている。
「俺……だったのか……?」
「本当に気づいてなかったんだね」
俊哉は床に寝ている薫を抱きしめるように、覆いかぶさる。
「ずっと、こうしたかったんだ。僕じゃ、だめか?」
答えに詰まる。思ってもみなかった。頭の中がかき混ぜられたように、何も考えられない。
ただ、はっきりとわかっていることがあった。もう、俊哉の顔が、匂いが、指が、記憶から消されることがない。そして、言いようもない多幸感が芯から広がっている
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる